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天の導き
326ー1 激流(4)ー1
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◇◇ ボンテンク ◇◇
昨日のうちに、なんとか王都ラレストの魔獣は討伐し終えた。
住民たちは、お揃いの覇王軍の隊服を着た俺たちを見て、戸惑いも見せず歓喜の声を上げ、魔獣討伐に覇王軍が来てくれたと大歓迎してくれた。
設置した覇王軍本部テントには、瓦礫の撤去やケガ人の手当等の陳情もきたが、救済用の食料を提供してくれる者もいた。
問題だったのは、警備隊や軍が全く機能しておらず、被災者を救援する担当役人が居なかったことだろう。
……協力して活動しようにも、役場には窓口になる部署さえなかった。予想以上の酷い有り様に絶句したよ。
おまけに覇王軍に対し、王宮の瓦礫を撤去して生き埋めになっている貴族を救い出せと、命令する身の程知らずの下級貴族がわらわらと湧いて出た。
覇王軍は、如何なる場合でも貴族を救済することはないし、覇王様以外の命令を受けることもないと、ぴしゃりと言ってやった。
「学生風情が生意気な!」と口々に怒鳴り散らすので、「助けたいなら自分たちで助ければいい」と、瓦礫の欠片さえ持ち上げた痕跡のない貴族たちに、俺ではなく新人隊員たちが怒鳴り返していた。
昨年ワートン領で救済活動をした時、腐った貴族に食料を奪われそうになったり、俺の可愛い妹カイヤを魔法で攻撃でされたことは、忘れることなどできないし、いつでも捻り潰す準備はできている。
此処に来るまでの道中、俺は新人の後輩たちにワートン領の貴族の実態を詳しく話していたので、皆の態度は氷並みに冷たかった。
「食料を寄越さないと痛い目を見るぞ」と脅された瞬間、脅した者たちは土魔法が得意な学生の作った落とし穴に落とされた。
「3メートルはあるので、自力で脱出は難しいでしょう。暴れるようなら、先程食料用に捕獲した魔獣の内臓でも入れてやりましょう」
にこにこ笑いながら、穴に落ちた男2人に向かって脅すのは財務担当のラノーブ君だ。
「強盗犯を引き渡す役人も居ないし、仲間が手を貸してもいけないので、穴は簡易の蓋で・・・いや、かまくらで塞いでおけば、次々と放り込めます」
そう言いながら医療担当のトーブル君は、ちゃっちゃと穴を隠すようにかまくらを作り上げる。
今回覇王軍は、誰からの依頼でもなく覇王様直々のご命令で動いている。
だから、他国の貴族など完全無視だ。いや、邪魔する者は容赦なく排除だ。
俺たち覇王軍にとって、何処の国の国王よりも、覇王様の方が格上なのだ。それが世間一般の常識であると自負している。
明け方、お前たちの仲間が、ワートン宰相の家の者を不当に捕えたので、直ぐに罰しろとか釈放しろと怒鳴る輩が現れた。
常識を知らない者には何を言っても通じないと判断したラノーブ君が、話を聞きますと微笑みながら、落とし穴付きかまくらにご案内した。
国王シーブルと宰相ワートンの生死はまだ確認できていないが、もうこの国は終わったのだと気付かない愚かな貴族たちは、覇王軍が動かないので住民に瓦礫の撤去を命じ始めた。
だが、住民は誰も相手にしない。
むしろ侮蔑の視線を向け、脅されても無視している。
朝食後トーマス王子がやって来た。
あちらにも貴族の盗賊が出たらしく、情けないと溜息をついた。
「極秘に偽王を捕える予定だったが、作戦を変更し、身分を明かして瓦礫の撤去を住民に頼むことにした。歯向かう貴族は容赦なく捕える。
偽王と宰相の生死が確認できなければ、偽王派ではない役人や兵士は、誰に従えばいいのか判断できないだろう」
トーマス王子は覚悟を決めたらしく、攻撃してくる貴族は反逆者認定し、殺すことも厭わないと言い切った。
そして、覇王軍は一切関わらないでくれと断言した。
……なんだか王子らしく、いや皇太子らしくなってきたじゃないか。
先日Aランク冒険者になったトーマス王子は、晴れてA級一般魔法師の資格を取った。
ルフナ王子を含む他の王子は、誰も国王を目指さないと申し出ていたので、先日国王が正式に皇太子として認めた。
昨日のうちに、なんとか王都ラレストの魔獣は討伐し終えた。
住民たちは、お揃いの覇王軍の隊服を着た俺たちを見て、戸惑いも見せず歓喜の声を上げ、魔獣討伐に覇王軍が来てくれたと大歓迎してくれた。
設置した覇王軍本部テントには、瓦礫の撤去やケガ人の手当等の陳情もきたが、救済用の食料を提供してくれる者もいた。
問題だったのは、警備隊や軍が全く機能しておらず、被災者を救援する担当役人が居なかったことだろう。
……協力して活動しようにも、役場には窓口になる部署さえなかった。予想以上の酷い有り様に絶句したよ。
おまけに覇王軍に対し、王宮の瓦礫を撤去して生き埋めになっている貴族を救い出せと、命令する身の程知らずの下級貴族がわらわらと湧いて出た。
覇王軍は、如何なる場合でも貴族を救済することはないし、覇王様以外の命令を受けることもないと、ぴしゃりと言ってやった。
「学生風情が生意気な!」と口々に怒鳴り散らすので、「助けたいなら自分たちで助ければいい」と、瓦礫の欠片さえ持ち上げた痕跡のない貴族たちに、俺ではなく新人隊員たちが怒鳴り返していた。
昨年ワートン領で救済活動をした時、腐った貴族に食料を奪われそうになったり、俺の可愛い妹カイヤを魔法で攻撃でされたことは、忘れることなどできないし、いつでも捻り潰す準備はできている。
此処に来るまでの道中、俺は新人の後輩たちにワートン領の貴族の実態を詳しく話していたので、皆の態度は氷並みに冷たかった。
「食料を寄越さないと痛い目を見るぞ」と脅された瞬間、脅した者たちは土魔法が得意な学生の作った落とし穴に落とされた。
「3メートルはあるので、自力で脱出は難しいでしょう。暴れるようなら、先程食料用に捕獲した魔獣の内臓でも入れてやりましょう」
にこにこ笑いながら、穴に落ちた男2人に向かって脅すのは財務担当のラノーブ君だ。
「強盗犯を引き渡す役人も居ないし、仲間が手を貸してもいけないので、穴は簡易の蓋で・・・いや、かまくらで塞いでおけば、次々と放り込めます」
そう言いながら医療担当のトーブル君は、ちゃっちゃと穴を隠すようにかまくらを作り上げる。
今回覇王軍は、誰からの依頼でもなく覇王様直々のご命令で動いている。
だから、他国の貴族など完全無視だ。いや、邪魔する者は容赦なく排除だ。
俺たち覇王軍にとって、何処の国の国王よりも、覇王様の方が格上なのだ。それが世間一般の常識であると自負している。
明け方、お前たちの仲間が、ワートン宰相の家の者を不当に捕えたので、直ぐに罰しろとか釈放しろと怒鳴る輩が現れた。
常識を知らない者には何を言っても通じないと判断したラノーブ君が、話を聞きますと微笑みながら、落とし穴付きかまくらにご案内した。
国王シーブルと宰相ワートンの生死はまだ確認できていないが、もうこの国は終わったのだと気付かない愚かな貴族たちは、覇王軍が動かないので住民に瓦礫の撤去を命じ始めた。
だが、住民は誰も相手にしない。
むしろ侮蔑の視線を向け、脅されても無視している。
朝食後トーマス王子がやって来た。
あちらにも貴族の盗賊が出たらしく、情けないと溜息をついた。
「極秘に偽王を捕える予定だったが、作戦を変更し、身分を明かして瓦礫の撤去を住民に頼むことにした。歯向かう貴族は容赦なく捕える。
偽王と宰相の生死が確認できなければ、偽王派ではない役人や兵士は、誰に従えばいいのか判断できないだろう」
トーマス王子は覚悟を決めたらしく、攻撃してくる貴族は反逆者認定し、殺すことも厭わないと言い切った。
そして、覇王軍は一切関わらないでくれと断言した。
……なんだか王子らしく、いや皇太子らしくなってきたじゃないか。
先日Aランク冒険者になったトーマス王子は、晴れてA級一般魔法師の資格を取った。
ルフナ王子を含む他の王子は、誰も国王を目指さないと申し出ていたので、先日国王が正式に皇太子として認めた。
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