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天の導き
322ー1 勇者と覇王(4)ー1
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◇◇ 勇者ラリエス ◇◇
光のドラゴンに驚いた荷馬車の馬も、荷馬車を襲おうとしていたシルバーウルフの小群も、再び飛び立ったエリスに恐怖し、全く動けなくなった。
エリスはシルバーウルフの動きを封じるため、巣の可能性がある林に逃げ込まれないよう、林の上空を低空で旋回してくれる。
「今度はドラゴンまで襲ってきた! もうおしまいだー!」
先頭の荷馬車の御者は、泣きながらパニック状態で叫ぶと、御者台から幌の中に逃げ込んでいく。
光のドラゴンは、覇王・勇者と契約していると知らなかったようだ。
「安心しろ! あれは勇者様の光のドラゴンだ。人間を襲うことはない!」
御者や荷馬車に乗っている者たちを落ち着かせようと、トーブル先輩が走りながら大声で叫ぶ。
「私は勇者ラリエスだ! 必ず助けるからそのまま動くな!」
シルバーウルフの襲撃にすっかり理性を失っていた荷馬車の者たちに、私は大声で叫んで命令する。
エリスに怯える程度のシルバーウルフは、私たちの敵ではない。
先頭の一際大きなシルバーウルフに、トーブル先輩は得意のエアーカッターを放ち、一撃で首を刎ねる。
日頃は医療班を率いて活動しているが、トーブル先輩は攻撃魔法も得意だ。
残る7頭の頭上には、私の氷の矢が降り注ぐ。
無駄のない攻撃で仕留めたシルバーウルフは、魔獣専用のマジックバッグにさっさと収納していく。
思っていたより毛並みが良かったので、冬用の救済品として役立ちそうだ。シルバーウルフの肉はちょっと固いが、味は悪くない。
荷馬車の方を振り返ると、呆然とした表情で5人の男たちがこちらを見ていた。
こんな危険な街道を旅しているのに、どうやら護衛の冒険者はいないようだ。
「や、や、やったー! 助かったぞー!」
「勇者様が、勇者様が助けてくださったー!」
「奇跡だ、奇跡が起こったー!」
助かったと分かった男たちは、荷馬車から飛び降り抱き合って喜んでいる。
私たちは慣れっこになってるが、普通の人間はシルバーウルフに出会っただけで、人生が終わったと絶望することを改めて思い出した。
私はエリスを目的の町の外に待機させ、トーブル先輩と一緒に2台の荷馬車に乗せてもらって町に入っていく。
町の入場門に近付くと、多くの住民や門を護っていた兵士たちが、私たちを大歓迎してくれた。
門番の話では、町を通過していった大勢の旅人から、勇者様と従者様が旧ヘイズ領で救済活動をしてくださっていると聞いていたらしい。
冗談のように、この街にも来てくださったらいいなと、兵士も町の住民も話をしていたんだとか。
だから上空を飛ぶ金色に輝くドラゴンに気付いた住民が、勇者様のドラゴンが来たー!って叫んだもんだから、大勢の住民がエリスの動きを注視していたそうだ。
そんな中、荷馬車が魔獣に追われていると誰かが叫び大騒ぎになったという。
まあ確かに町の直ぐ近くだったから、シルバーウルフを討伐する一部始終を、住民たちが見ていても不思議ではない。
あまりの歓迎ぶりに、私もトーブル先輩もちょっと戸惑ってしまう。
「ようこそおいでくださいました。勇者様、従者様。
憎きシルバーウルフを討伐してくださり、本当にありがとうございます。
今月に入って、シルバーウルフがあの林に住み着き、死者も出て困り果てておりました」
町の中を案内しながら、お礼を言っているのは町長だ。
私たちの後ろを、「勇者様だぞー」と騒ぎながら子供たちが付いてくる。
その弾んだ声を聞けば、喜んでくれているのだと分かりホッとした。
処刑されたヘイズ侯爵からも、復興を任されたシーブルからも見捨てられた町だったが、どうやら覇王や勇者に悪意を抱いている者はいないようだ。
光のドラゴンに驚いた荷馬車の馬も、荷馬車を襲おうとしていたシルバーウルフの小群も、再び飛び立ったエリスに恐怖し、全く動けなくなった。
エリスはシルバーウルフの動きを封じるため、巣の可能性がある林に逃げ込まれないよう、林の上空を低空で旋回してくれる。
「今度はドラゴンまで襲ってきた! もうおしまいだー!」
先頭の荷馬車の御者は、泣きながらパニック状態で叫ぶと、御者台から幌の中に逃げ込んでいく。
光のドラゴンは、覇王・勇者と契約していると知らなかったようだ。
「安心しろ! あれは勇者様の光のドラゴンだ。人間を襲うことはない!」
御者や荷馬車に乗っている者たちを落ち着かせようと、トーブル先輩が走りながら大声で叫ぶ。
「私は勇者ラリエスだ! 必ず助けるからそのまま動くな!」
シルバーウルフの襲撃にすっかり理性を失っていた荷馬車の者たちに、私は大声で叫んで命令する。
エリスに怯える程度のシルバーウルフは、私たちの敵ではない。
先頭の一際大きなシルバーウルフに、トーブル先輩は得意のエアーカッターを放ち、一撃で首を刎ねる。
日頃は医療班を率いて活動しているが、トーブル先輩は攻撃魔法も得意だ。
残る7頭の頭上には、私の氷の矢が降り注ぐ。
無駄のない攻撃で仕留めたシルバーウルフは、魔獣専用のマジックバッグにさっさと収納していく。
思っていたより毛並みが良かったので、冬用の救済品として役立ちそうだ。シルバーウルフの肉はちょっと固いが、味は悪くない。
荷馬車の方を振り返ると、呆然とした表情で5人の男たちがこちらを見ていた。
こんな危険な街道を旅しているのに、どうやら護衛の冒険者はいないようだ。
「や、や、やったー! 助かったぞー!」
「勇者様が、勇者様が助けてくださったー!」
「奇跡だ、奇跡が起こったー!」
助かったと分かった男たちは、荷馬車から飛び降り抱き合って喜んでいる。
私たちは慣れっこになってるが、普通の人間はシルバーウルフに出会っただけで、人生が終わったと絶望することを改めて思い出した。
私はエリスを目的の町の外に待機させ、トーブル先輩と一緒に2台の荷馬車に乗せてもらって町に入っていく。
町の入場門に近付くと、多くの住民や門を護っていた兵士たちが、私たちを大歓迎してくれた。
門番の話では、町を通過していった大勢の旅人から、勇者様と従者様が旧ヘイズ領で救済活動をしてくださっていると聞いていたらしい。
冗談のように、この街にも来てくださったらいいなと、兵士も町の住民も話をしていたんだとか。
だから上空を飛ぶ金色に輝くドラゴンに気付いた住民が、勇者様のドラゴンが来たー!って叫んだもんだから、大勢の住民がエリスの動きを注視していたそうだ。
そんな中、荷馬車が魔獣に追われていると誰かが叫び大騒ぎになったという。
まあ確かに町の直ぐ近くだったから、シルバーウルフを討伐する一部始終を、住民たちが見ていても不思議ではない。
あまりの歓迎ぶりに、私もトーブル先輩もちょっと戸惑ってしまう。
「ようこそおいでくださいました。勇者様、従者様。
憎きシルバーウルフを討伐してくださり、本当にありがとうございます。
今月に入って、シルバーウルフがあの林に住み着き、死者も出て困り果てておりました」
町の中を案内しながら、お礼を言っているのは町長だ。
私たちの後ろを、「勇者様だぞー」と騒ぎながら子供たちが付いてくる。
その弾んだ声を聞けば、喜んでくれているのだと分かりホッとした。
処刑されたヘイズ侯爵からも、復興を任されたシーブルからも見捨てられた町だったが、どうやら覇王や勇者に悪意を抱いている者はいないようだ。
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