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天の導き
321ー2 勇者と覇王(3)ー2
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◇◇ 勇者ラリエス ◇◇
勇者伝説活動もいよいよ最終日だ。
正直言って、覇王様から勇者伝説を作りに行くぞと言われた時は、いったい何のことか分からなかった。覇王様はいつも多くを語られない。
だが5日間活動してみて、目的が何であるのか理解できた。
覇王様は何かを行われる時、同時にいくつかのことを進めらる。
言い換えると、一つのことをしているようで、いつも多くの効果をあげられている。
今回の勇者伝説活動を私なりに解釈すると、最も重要な目的は、民に希望を与えることだと思われる。
次は、勇者は民の味方であり、国や役人が放置している悪行に目を向け、民を助けるために努力をしているのだと知らしめること。
なんで覇王伝説ではなく勇者伝説なのだろうかと疑問に思ったが、私の話を聞いたトーブル先輩は笑いながらこう言った。
「覇王様にこれ以上の伝説は必要ないし、王様さえ跪かせる覇王様が突然来たら、畏れ多くて救済してもらうことを断ってしまうと思わないか?
覇王様は、これまでの貴族の悪印象を、変えようとされているのではないかと私は思っている。
私も含め、覇王様が高学院に入学される前の貴族たちの多くは、貴族としての責務について正しく理解していなかった。
そんな無責任な貴族の印象は、魔獣の氾濫が始まると地に落ち、決して良いものではなかった。
だが、そんな貴族の代表ともいえる領主一族の、しかも公爵家嫡男のラリエス君が、民の目線で救済活動をしてくれる。
しかも君は自国の自慢でもあり、誇りでもある勇者さまだ。
高位貴族である勇者さまが、優しく声を掛け励ますことで貴族の印象は変わる」
覇王様はこの大陸を統べる偉大な存在だが、勇者様はコルランドル王国の勇者だからなと、トーブル先輩は付け加えた。
……無責任な貴族ばかりではないから、勇者を信じて、短気を起こさず暫く辛抱し頑張ってくれって、伝える目標もありそうだ。
最終日に訪れたのは、昨年の春にライバンの森から溢れた魔獣に、町を半壊され、農作物に火を放たれ、領主から殆ど救済されることがなかった町だ。
トーマス王子とレイム公爵が立ち寄った時、死者は埋葬されることもなく、徘徊する魔獣のため、水を飲むこともできず住民は死にかけていたらしい。
その後、被災地の救済と復興を任されたシーブルは、国から支給された復興予算を独立のために使い、被災地を救うことはなかった。
生活できなくなった住民の半数は、旧ワートン領へ移動したと聞いた。
……でも、何故国は、ちゃんと復興させているかどうか確認しなかったんだ?
それでもコルランドル王国の王都へと続く街道沿いにある町だから、半数の住民は残っており、救済を手助けしたのは商業ギルドだった。
でも、その商業ギルドも、ラレスト王国建国前に撤退している。
少し不安はあるけれど、私は上空から町の様子を窺う。
「この町は、兵士が門番として居るようですが、町の周辺を警戒している様子はありません。あっ、大変ですラリエス君、魔獣が荷馬車に向かって走り出しました!」
町の周辺を注視していたトーブル先輩が、指さしながら声を上げた。
街道を2台の荷馬車が町に向かって移動しているが、少し後方の林から、シルバーウルフが数頭飛び出し、荷馬車に向かって疾走していく。
「このままではヤバそうだ。エリス、助けに行くぞ」
『了解よラリエス』
普通のシルバーウルフなら、光のドラゴンが近付いたら逃げていく。
だが今日は、今後のことを考えて討伐しておく方がいいだろう。
「わーっ、シルバーウルフだ、逃げろー!」
荷馬車から、切羽詰まった叫び声が聞こえてくる。
私とトーブル先輩は荷馬車の近くでエリスから降り、ピタリと動きを止めたシルバーウルフに向かって駆け出す。
エリスに驚いた馬が暴れて、荷馬車も動きを止めてしまう。
勇者伝説活動もいよいよ最終日だ。
正直言って、覇王様から勇者伝説を作りに行くぞと言われた時は、いったい何のことか分からなかった。覇王様はいつも多くを語られない。
だが5日間活動してみて、目的が何であるのか理解できた。
覇王様は何かを行われる時、同時にいくつかのことを進めらる。
言い換えると、一つのことをしているようで、いつも多くの効果をあげられている。
今回の勇者伝説活動を私なりに解釈すると、最も重要な目的は、民に希望を与えることだと思われる。
次は、勇者は民の味方であり、国や役人が放置している悪行に目を向け、民を助けるために努力をしているのだと知らしめること。
なんで覇王伝説ではなく勇者伝説なのだろうかと疑問に思ったが、私の話を聞いたトーブル先輩は笑いながらこう言った。
「覇王様にこれ以上の伝説は必要ないし、王様さえ跪かせる覇王様が突然来たら、畏れ多くて救済してもらうことを断ってしまうと思わないか?
覇王様は、これまでの貴族の悪印象を、変えようとされているのではないかと私は思っている。
私も含め、覇王様が高学院に入学される前の貴族たちの多くは、貴族としての責務について正しく理解していなかった。
そんな無責任な貴族の印象は、魔獣の氾濫が始まると地に落ち、決して良いものではなかった。
だが、そんな貴族の代表ともいえる領主一族の、しかも公爵家嫡男のラリエス君が、民の目線で救済活動をしてくれる。
しかも君は自国の自慢でもあり、誇りでもある勇者さまだ。
高位貴族である勇者さまが、優しく声を掛け励ますことで貴族の印象は変わる」
覇王様はこの大陸を統べる偉大な存在だが、勇者様はコルランドル王国の勇者だからなと、トーブル先輩は付け加えた。
……無責任な貴族ばかりではないから、勇者を信じて、短気を起こさず暫く辛抱し頑張ってくれって、伝える目標もありそうだ。
最終日に訪れたのは、昨年の春にライバンの森から溢れた魔獣に、町を半壊され、農作物に火を放たれ、領主から殆ど救済されることがなかった町だ。
トーマス王子とレイム公爵が立ち寄った時、死者は埋葬されることもなく、徘徊する魔獣のため、水を飲むこともできず住民は死にかけていたらしい。
その後、被災地の救済と復興を任されたシーブルは、国から支給された復興予算を独立のために使い、被災地を救うことはなかった。
生活できなくなった住民の半数は、旧ワートン領へ移動したと聞いた。
……でも、何故国は、ちゃんと復興させているかどうか確認しなかったんだ?
それでもコルランドル王国の王都へと続く街道沿いにある町だから、半数の住民は残っており、救済を手助けしたのは商業ギルドだった。
でも、その商業ギルドも、ラレスト王国建国前に撤退している。
少し不安はあるけれど、私は上空から町の様子を窺う。
「この町は、兵士が門番として居るようですが、町の周辺を警戒している様子はありません。あっ、大変ですラリエス君、魔獣が荷馬車に向かって走り出しました!」
町の周辺を注視していたトーブル先輩が、指さしながら声を上げた。
街道を2台の荷馬車が町に向かって移動しているが、少し後方の林から、シルバーウルフが数頭飛び出し、荷馬車に向かって疾走していく。
「このままではヤバそうだ。エリス、助けに行くぞ」
『了解よラリエス』
普通のシルバーウルフなら、光のドラゴンが近付いたら逃げていく。
だが今日は、今後のことを考えて討伐しておく方がいいだろう。
「わーっ、シルバーウルフだ、逃げろー!」
荷馬車から、切羽詰まった叫び声が聞こえてくる。
私とトーブル先輩は荷馬車の近くでエリスから降り、ピタリと動きを止めたシルバーウルフに向かって駆け出す。
エリスに驚いた馬が暴れて、荷馬車も動きを止めてしまう。
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