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笑顔と涙

318ー2 勇者伝説(3)ー2

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 ◇◇ 勇者ラリエス ◇◇

 こんな可愛い子供を叩くなんて、しかも2度もだ。
 このことと食料を搾取されていた事実を王都民が知れば、怒りを抑えるのは無理だろう。
 誰の目にも怒りの炎が見えるし、怒りで拳をプルプルさせている者までいる。


「申し開きは、警備隊、一般軍、そして王立高学院特別部隊の前でしてもらおう。
 勇者ラリエスが命じる。
 警備隊はこの2人を捕縛し、【王宮対策室】の役人全員を冒険者ギルド前まで連れてこい!

 もしも来ない者がいたら、その者を【反国王派】と断定する。
 冒険者たちには、この件に関わった全ての極悪人が判明し処罰されるまで、見届け人を頼みたい。
 私はこれから、魔獣に襲われているヘイズ領の、助けに行かねばならない」

悪人確定の2人の男の前に立ち、私は勇者として命令しお願いする。

「承知しました勇者様」と、警備隊の隊員が返事をし2人を捕縛していく。

「任せてください勇者様」と、冒険者たちも声を上げてくれる。

 公開裁判の場所を冒険者ギルド前にしたから、怒れる王都民たちがたくさん集まるだろう。
 もしも極悪人を擁護したり、貴族だからと横柄な態度をとったりしたら、屈強な冒険者が黙っていないだろうし、王都民なんか石を投げつけるに違いない。

 恐らくトーマス王子あたりが責任者となり、王族の信頼を取り戻すべく厳しく取り調べ厳罰に処すだろう。
 そうでなければ、王様や国に対する不満が膨れ上がり、暗躍する【反国王派】であるラレスト王国の間者が喜ぶことになる。

 あと処理を尊敬するセイガさんに丸投げし頼んで、私は必要な買い物をするため避難所の皆に笑顔で手を振り、急いで冒険者ギルドへと向かう。



 午後3時、高学院に戻った私は、避難所の出来事を覇王軍本部で詳細に報告した。
 執行部部長でもあるトゥーリス先輩が、学院代表としてノエル様とミレーヌ様を連れ、直ぐに冒険者ギルドに向かってくれた。

 ……ノエル様とミレーヌ様が向かえば、全くの容赦なく断罪してくれるだろう。

 私は覇王軍メンバーやアコル様と一緒に、買い物した荷物を二つに分けマジックバッグに収納していく。
 今回は、二手に分かれて旧ヘイズ領と旧ワートン領に向かい作戦を開始する。
 

 私は勇者として、医療魔法である聖魔法が使えるトーブル先輩と一緒に旧ヘイズ領へと向かう。
 アコル様は、住民が身構えないよう平民であるヤーロン先輩と一緒に旧ワートン領へと向かわれる。

 今回の作戦は、上空から魔獣の動きや住民の被害状況を把握し、救済が必要だと思われた場所に光のドラゴンで降りて救済活動を行う。
 トーブル先輩は、ケガ人に薬を処方したり、聖魔法で治療したりする。
 私は勇者だと名乗り、得意な土魔法で地下室や避難用のかまくらを作る。


 アコル様とヤーロン先輩は、先にアホール山でブラックドラゴンの状況を確認する。
 それからアホール山の麓の冒険者ギルドに寄って、新しい指示を出したり支援物資を届けられる予定だ。

 アホール山の冒険者ギルドは、ラレスト王国の中に在る。だが現在、シーブルやワートン公爵と完全に対立している。
 民を救わず、冒険者ギルドに支援もしない領主や国王に従う必要などないからと、王都に移動しろという命令を無視している。

「ラリエス、行動は俊敏に救済は大胆にだ。
 勇者だと堂々と名乗り、誰からの指示でも依頼でもなく、自分の意思でコルランドル王国の民を助けにきたのだと宣言してくれ」

「承知しました」

私は右手を胸に当て、必ずや任務を果たすと約束する。

「トーブル先輩、ただ目の前の救うべき人々だけを見てください。
 自分のことは、たくさんの人々を救うため妖精に選ばれた戦士であり、勇者様の従者であると広めてください。
 2人の妖精も頼んだぞ」

「はい、できるだけ多くの人を助けます」とトーブル先輩が誓う。

『もちろんですわアコル様』と、トーブル先輩の契約妖精セルビアさんが美しく微笑む。

『はい、一生懸命頑張ってトーブルを守ります』と、新しく契約した女の子の妖精アメジストちゃんも、胸を張って約束している。

 私はトーブル先輩と握手し、共に頑張ろうと頷き合う。
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