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笑顔と涙

317ー2 勇者伝説(2)ー2

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 ◇◇ 勇者ラリエス ◇◇

「お前たちは、王立高学院特別部隊から何を学んだ!
 まさか、王様直属機関として立ち上げられた【王宮対策室】の役人を騙る者か?
 いや、決められた炊き出し内容も知らないところをみると、【反国王派】だな!」

私は男の正面に立ち、眼光鋭く睨み付けて【反国王派】という言葉を出し叱咤する。
 今、王宮では【反国王派】だと疑われると、王宮警備隊と一般軍に厳しく取り調べられる。
  
【王宮対策室】の本部テントを覗くと、2人の役人が食べていたのは大きく分厚い肉だった。

 ……まさかとは思うが、目の前の肉は、救済用に支給された肉じゃないよな?

 ……最低でも1日1回は肉入りのスープを作るよう決められていたはずだが・・・アコル様の懸念が当たってしまった。

「お、お前は覇王軍メンバーか?」

途端に顔色が悪くなったガラの悪い青シャツの男は、バツが悪そうに私から視線を逸らした。

 ……この2人が偽物だろうと本物だろうと、【王宮対策室】の任務放棄は確定だ。

「ゆ、勇者様・・・」

派手シャツの男は、どうやら私を勇者だと知っていたようで、テーブルの上の肉が盛られた大皿を隠そうと皿に手を掛けた。

「なんだ、既に肉は用意されているじゃないか。スープではなく焼いたんだな」

私は肉の盛られた皿を見て、鎌を掛けてみる。

「は、はいそうです。あ、熱いので少し冷ましていました」
「そうなんです。子供には大きすぎるので、これから切り分けるところです」

派手シャツ男の話に合わせて、青シャツの男も言い訳する。

「おーい、肉が焼き上がったぞー。みんなおいでー!」

避難所の中で小さくなっていた子供たちに、私は大声で呼び掛ける。

 慌てて大皿の上に盛ってあった肉を切り始めた2人の男に、貴族らしい作り笑いを向け、先程の女性を手招きし、冒険者ギルドから人を呼んできて欲しいと頼んだ。

 わらわらと子供たちが出てきて、「わーい肉だ」と言いながら大喜びする。
 いったいいつから肉を食べていなかったのだろうか・・・

 ……ふつふつと怒りが込み上げてくる。

「ところで、君たちの所属は?」

肉を食べ始めた子供たちに微笑みながら、助かったって顔をしている2人の男に問う。

「えっ、俺、いえ私たちは体調を崩した同僚に頼まれて・・・」

 視線を合わせようとしない青シャツの男は、所属部署を言いたくないようだ。

 ……ん? まさか王宮の役人でもないのか?

「頼まれて? ということは、今日は【王宮対策室】の者は来ていないのか?」

「はい。いえ、もう直ぐ来るはずです」

 にやけた愛想笑いが気持ち悪い派手シャツ男は、チラチラ後方を気にしながら少し後ろに下がっていく。
 後ろには、食材の入った木箱が置いてあり、何かを気にしているようだ。

 私は何も気付いていない振りをしながら、2人の男から視線を逸らし、避難所の入り口に向かって移動を始める。

「後ろの役人たちは、何をしていますか?」

私の前に来て礼をとってくれた年配のご婦人に、挨拶を返している雰囲気のまま、私は小声で男たちの様子を訊いた。

 ご婦人は軽く頷くと「食材の移動をしています」と小声で教えてくれた。
 私は男たちに背を向けたまま「すみませんが、このまま男たちの動きを見ていてください」と頼んだ。


 5分後、「男たちは食材を荷馬車に積んでいます」と、年配の女性からの伝言を言付かったという若い女性が、緊張した表情で伝えに来てくれた。

「ありがとう。皆には辛い思いをさせてしまったようだ」

私はそう言うと、クルリと振り返り男たちの姿を探す。
 如何にも逃げようとしいる男たちを視線で捉え、一気に駆け出す。
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