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笑顔と涙

314ー２ 新しいポーション作り（５）ー２

　もう１本のエリクサーは、亀の変異種の尻尾を使って作ったもので、欠損した皮膚を再生し、骨の復元もできる、これぞ奇跡のポーションというものだった。
　そのエリクサーの名は【再生の息吹】といい、価格は金貨140枚だった。

　この俺でも、鑑定後に瓶を持つ手が思わず震えたよ。

　何故かって、それは使った薬草が、２度と手に入らない可能性があったからだ。
　採取した本人である俺は、もしかしたら薬草かも？ってくらいの軽い気持ちで、たった３株だけた・ま・た・ま・採取したモノだった。

　記憶は曖昧だが、その小指の爪ほどの小さな黄色い花を咲かせていた植物は、グレードラゴンの討伐後、龍山の中腹辺りに落ちたグレードラゴンを回収するため、ランドルから降り立った場所にあった……ような記憶が微かにある植物だった。

　
　今回【命の灯火】を作った後で、俺はふとマジックバッグの中に、採取したまま忘れていた植物が結構あったことを思い出した。
　折角たくさんのメンバー助手が居るんだから、全員で調べれば薬草図鑑に載っているモノを発見できるかもしれないと考えた。

　もちろん、昨日王立図書館から借りた本や図鑑も取り出して、３時間は全員で格闘した。
　その頑張りの成果として、俺が採取した植物の中の４つが、既に絶滅したと思われていた薬草であると判明したのだ。

　いや、他の名前も分からない植物だって、現時点では薬草と認定されていないだけで、凄い効能のある薬草かも知れないじゃんと俺は思ったりする。
　いつか使ってみようと密かに考えているが、今は控えておこう。

　薬草だと判明した黄色い花を咲かせていた植物は、【再生草】という名だった。
　傷口に当てると、直ぐに傷口が塞がると書かれていた。
　だが、どの部位を使うのかが記載されていなかったので、俺は根から花まで全部を魔術具に入れた。

　……まあ、結果オーライだよな。

　しかも【再生の息吹】は、ハイポーション、中級ポーション、下級ポーションまで品質を下げることができる優れものだった。
　商業ギルドの２人が万歳して大喜びしてたけど、薬草採取は誰がするんだろう？

　中級ポーションでも、中度のケガや火傷で損傷した皮膚を再生し、欠損した骨の６割を再生する効果があった。
　下級ポーションまで下げると、皮膚の再生速度は遅くなり、大ケガには対応できない。骨の再生もできないが、軽い骨折の治りは早くなる。



　エリクサーにならなかった２種類は、どちらにも強力な滋養強壮効果と魔力回復効果があった。
　この２種類も、下級ポーションまで品質を下げて使えることが分かった。

【甦る生気】は、主に亀の変異種の胴体を使い、滋養強壮効果が強かった。
　病中病後や、魔獣との戦いで疲れ果て、もう動けないと思った時に飲むといいだろう。

　下級ポーションまで下げると、現在市場に出回っている、高級と言われている回復ポーション程度の効果が期待できるようだ。
　商業ギルドのギルマスは、下級ポーションとは言わず、覇王印の回復ポーションとして売り出すぞと、勝手にはしゃいでいた。

　……いや、いつも思うんだけど、商業ギルドって、覇王の名前で儲け過ぎてるんじゃないか？

　
　【甦る魔力】は、亀の変異種の胴体と内臓を使い、効果はネーミングそのままで、失った魔力を回復できた。
　品質を下げた中級ポーションを、試しに妖精と契約していない医療コースの講師に飲ませてみたら、魔力量が80から100に増えた。

　……このポーションがあれば、聖魔法を使える医師を増やせそうだ。
　

　取りあえず量産するのは、素材のある【甦る生気】と【甦る魔力】と決まった。
　余裕ができたら【再生草】の探索と採取に挑みたいが、まだ先になるだろう。