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笑顔と涙

309ー1 マリード領のグレードラゴンー1

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 サナへ領のグレードラゴン2頭を、俺とルフナ王子は一撃必殺で討伐した。
 マジックバッグと魔力増幅具の素材として、グレードラゴンは既に回収済みだ。
 今は、南へ向かった残りの1頭を追ってマリード領に向かっている。

『アコル様、王都の詳しい状況をログドル王子から聞いてきました。
 王都に襲来した3頭のグレードラゴンの内1頭は、赤のダイキリさんが討伐し、トーマス王子や魔法部の学生がもう1頭を討伐しました。

 残りの1頭は、ログドル王子と覇王探求部会メンバーが、モンブラン商会本店の屋上で魔術具を起動し、王都から追い払ったそうです。
 王都から逃げた1頭は、雷撃の魔術具で翼に穴をあけ、ドラゴンが嫌う音の攻撃で逃げ出しました。遠くまで飛ぶことは無理だろうと言ってました』

 サナへ領のグレードラゴン討伐後、俺はランドルの守護妖精でもあるユテを、ログドル王子の元へ送っていた。

「それは良かった。ありがとうなユテ。被害状況はどうだ?」

『私が作戦本部のログドル王子に会った時は、まだ被害状況の報告が上級地区から届いていなかったの。
 でも、大きな被害は出てなかったみたい。下級地区にはほとんど被害はなかったって』

ユテはちょっと困った表情で答え、高学院にも被害はなかったと付け加えた。


「もっと大きな被害が出ていると思いましたが、魔法部の学生も頑張ったみたいで安心しました。
 魔術具が有効だと確認できたことは、大きな一歩になりますね覇王様」

「ああそうだなルフナ王子。覇王探求部会や学生が懸命に努力した結果が出た。
 なんとかギリギリ間に合ったって感じだけどな。
 これからは、俺や勇者が居なくても、グレードラゴンに対抗できる。

 俺とラリエスは、元凶となるブラックドラゴン討伐に集中するから、王都はログドル王子とルフナ王子、リーマス王子に任せる。
 魔術具の起動と複製はログドル王子、グレードラゴンや魔獣の討伐はルフナ王子に指揮して欲しい。リーマス王子には医療チームを率いてもらう」

これから王都は、3人に任せる意向であることをルフナ王子に伝える。

 特にルフナ王子には、冒険者や魔獣討伐専門部隊と常に連携できるよう、新しい指揮系統を作ってもらう。
 高学院図書室に設置する作戦本部の、総責任者はこれまで通り一般軍大臣であるハシム殿に、攻撃を主とする責任者をルフナ王子に任せたい。

「了解しました覇王様。王都はトーマス兄上を含めた王子4人で、必ず守ってみせます!」

俺の望む責任を背負うことのできる王族に成長してくれたルフナ王子が、誇らしそうに胸を張って約束してくれる。

 ちゃんとトーマス王子をたてていることに感心する。
 俺はトーマス王子には殊更厳しいけど、兄弟が支え合えば苦難も乗り越えられるのかもしれない。



 サナへ領を過ぎ、南のマリード領に入って20分、グレードラゴンの姿を捉えた。
 洗脳されているグレードラゴンは、飛行速度も遅く俊敏さもないから、思っていたよりも早く追いついた。
 だが、現状は最悪だった。

「なんてことだ、アイツが攻撃しているのは、マサルーノ先輩の実家だ」

 はっきり見えてきたのは、グレードラゴンがマサルーノ先輩の実家を翼の攻撃で滅茶苦茶に破壊している様子だった。
 俺は昨年の夏、ドバイン運送の支店開設準備をするためマリード領に向かい、マサルーノ先輩の実家に泊めてもらったことがある。

 ……なんで領都じゃなく、地方の伯爵の家を襲うんだよ!
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