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絶望と希望

298ー2 本当の脅威(1)ー2

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「【王宮対策室】の皆さん、俺は皆さんが、この三日間で救済活動について真摯に学び、しっかり実践してくれると期待しています。
 学生である覇王軍や王立高学院特別部隊が命を懸けているのですから、当然皆さんも同じ心構えで任務を遂行できると私に示してください」

 自分の名前・・・というか責任の所在が明らかにされると知った【王宮対策室】のメンバーは、俺から軽い覇気まで受けカタカタと小さく震える。

 寝る間もないほどの大変な仕事を任されたのに、それを名誉職だと喜ぶ貴族思考に、今更あれこれ言っても仕方ない。
 何事も経験が必要だし、最初から完璧を期待してはいけない。

「それと今回の王都での活動料金は、ドラゴン討伐と消火活動に対し金貨100枚。王立高学院特別部隊の出動料として金貨50枚を請求いたします。
 被害を最小限に食い止めたことを考えると、かなり格安ですわね」

支払いが5日以内に行われない場合は、王立高学院にも考えがあると更に脅しをかけるのは学院長だ。

 夕食の時の話では、金貨200枚は取るべきだと学院長も副学院長も言っていた。
 特に、医療チームが持ち出したポーションのことを考えると、今後ポーションを提供できなくなる可能性もあると心配していた。

「合計金貨150枚ですか・・・それは、王宮に戻って上司と相談しなければ返事ができません」

 金貨150枚を高いと思っている【王宮対策室】は、緊急時の必要経費の支払いも任されている。
 大きな予算を扱える部署だから、名誉ある役職だなんて勘違いするのだろう。 


「今回持ち出したポーション代金だけでも金貨100枚を超えるので、実際に使用したポーション代金は、別途請求する方がいいだろう。
 それを拒むなら、今後は王宮や貴族にはポーションを供給せず、全て個人で用意させるべきだ」

「そうですねマキアート副学院長。そもそも王立高学院特別部隊は、貴族や役人を救う必要などないのですから」

 どんどん金勘定に詳しくなっていく副学院長を頼もしく思いながら、俺も自分の考えを伝えておく。
 お前たちの態度次第で、全貴族や役人から恨まれることになるぞと、分かり易く説明したつもりだ。

 ……いや実際のところ、魔法陣を描いた特殊紙の代金、焼け焦げてしまった学生の制服代金、学生の治療に使ったポーション代金等を考えると、完全に赤字だ。

 ……国からお金を得て利益を出していると思われるのも我慢ならないから、経費明細は公表しよう。王立高学院は今も、自腹を切って活動しているのだと。


 
 翌朝、出発準備を終え演習場に向かっていると、ラリエスの契約妖精トワから、ブラックドラゴンが龍山の方に向かったと緊急連絡が入った。

「覇王様、今回は私をお供させてください」

見送りに来ていたルフナ王子が、トワの話を聞いて同行を願い出る。

「まさか、今度は龍山のグレードラゴンを操るつもりか?」

自分で発した言葉に衝撃を受けているのはトゥーリス先輩だ。

 そんなことになれば、今度はサナへ領やマギ領、レイム領だって危険に曝されるかもしれない。
 もちろん、王都が再び襲われることだって考えられる。

「そんな最悪な事態は想像もしたくないが、龍山のグレードラゴンの数は30を越えている。
 もしも10頭のグレードラゴンを同時に洗脳し襲撃してきたら、王都は間違いなく壊滅する」

俺は自分でそう言いながら、最悪の事態を想像する。

 ……覇王である俺は、どんな時でも最悪の事態を考えて行動しなければならない。

「ロルフ、国王と宰相にこのことを伝え、再び第一級警戒態勢を発令しろと指示を出せ。
 トゥーリス先輩、【覇王探求部会】を緊急招集し、ブラックドラゴンや変異種の音攻撃に対抗する古代魔術具の複製を急いでください」 
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