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絶望と希望
294ー2 同時襲撃の恐怖(10)ー2
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覇王軍の隊服を着ている俺を凝視し、本物の覇王で間違いないと分かると皆は歓声をあげた。
「覇王様だ!」
「覇王様がドラゴンを倒されたぞ!」
「助かったー」
死の恐怖に怯えていた住民の顔は、歓声と共に安堵の表情へと変わっていく。
「立ち止まらずに進め! 走らなくても南地区は安全だ。
西地区の住民は、弱者を助け、共に協力し合える強さと優しさを持っていると、覇王である私は信じているぞ!」
俺は西地区の住民に向かって拳を振り上げ、協力し合って逃げるよう発破をかけた。
我先にと逃げていた住民たちは、俺の話を聞いて冷静になれたようで、「分かりました覇王様」と頷いてくれる。
「坊主、おじさんが抱っこしてやろう」
母親に手を引かれ泣いている子供を見つけた男性が、赤子を背負っていた母親に笑顔で助け船を出す。
「おばあさん、俺が背負うよ。遠慮しないで」
人の流れに押し潰されないよう、端の方を移動していた老婆に若者が声を掛け背中を向ける。
あちらこちらで助け合いの輪が広がる様子を見て、俺は笑顔で「ありがとう頑張れ!」と大きな声で感謝を伝えた。
避難する人々とは逆方向に進みながら、倒れたりケガをしている者を見付けると、後方の冒険者に任せて進む。
西地区に入って僅か5分、どこからともなく焼け焦げた臭いと煙が漂ってきた。
路地から大通りに抜けた途端、火の粉が空から降ってきた。
見上げると、アパートの三階部分から炎が吹き出している。
その後方に目をやると、ブラックドラゴンの攻撃を直接受けたようで、同じ高さの建物が2棟激しく燃えていた。
「よし、この通りから向こうには延焼させないぞ!」
ここまで一緒に付いてきた冒険者4人は水適性を持っていたので、水魔法で火を消すよう指示を出す。
本来ならBランク冒険者以上でないと買えない魔力増幅具を、特別に貸し与えた。
まだ高学院の仲間は到着していないようなので、俺は直径10メートルの巨大なウォーターボールを作り出し、激しく燃えている後ろの2棟の真上で破裂させる。
1度では当然鎮火には至らず、同じことを4回繰り返したところで火の手は見えなくなったが、建物はほぼ全焼していた。
「ランドル、学院の仲間は到着しているか?」
『うんアコル。今は初級学校の近くの火事を消してる。
それから、中級地区に近い大きな建物と、モンブラン商会傘下の印刷工場の火を消してる』
……中級地区に近い西地区の大きな建物といえば、フロランタン商会の織物工場? 印刷工場は、商学部2年のイーサンの家だ。
「他に燃えている場所は?」
『大きな建物じゃないけど、2階建ての建物がたくさん並んでる西の外壁に近い場所が一番燃えてる。
王都の外に出る西門が近いけど、門が閉まってるから外に逃げられないみたい』
西門に近い場所は古い建物が多く家賃が安いから、あまりお金に余裕のない者たちの住居になっている。
初級学校にも通えない子供たちが多いから、恐らく自宅で身を隠していたはずだ。
人口密度も高いから、地下室に避難できる人数も限られているだろう。
……まずい、第二級警戒体制発令中は、魔獣の侵入を阻止するため門を開けることは禁止されている。
冒険者たちに残り火の始末を頼み、俺は西門に急いで移動する。
狭い路地が多く、煙で視界がはっきりしないことでパニック状態に陥った人々には、俺の叫び声は届かない。
……落ち着け、皆を冷静にさせる手段を考えるんだ。
『アコル、西門に向かったログドル王子の契約妖精ミランから救助要請だわ。多くの人が城壁の所で逃げ場が無くなったって』
右肩に姿を現したエクレアが、意外な人物の名前と救援要請を伝えた。
「覇王様だ!」
「覇王様がドラゴンを倒されたぞ!」
「助かったー」
死の恐怖に怯えていた住民の顔は、歓声と共に安堵の表情へと変わっていく。
「立ち止まらずに進め! 走らなくても南地区は安全だ。
西地区の住民は、弱者を助け、共に協力し合える強さと優しさを持っていると、覇王である私は信じているぞ!」
俺は西地区の住民に向かって拳を振り上げ、協力し合って逃げるよう発破をかけた。
我先にと逃げていた住民たちは、俺の話を聞いて冷静になれたようで、「分かりました覇王様」と頷いてくれる。
「坊主、おじさんが抱っこしてやろう」
母親に手を引かれ泣いている子供を見つけた男性が、赤子を背負っていた母親に笑顔で助け船を出す。
「おばあさん、俺が背負うよ。遠慮しないで」
人の流れに押し潰されないよう、端の方を移動していた老婆に若者が声を掛け背中を向ける。
あちらこちらで助け合いの輪が広がる様子を見て、俺は笑顔で「ありがとう頑張れ!」と大きな声で感謝を伝えた。
避難する人々とは逆方向に進みながら、倒れたりケガをしている者を見付けると、後方の冒険者に任せて進む。
西地区に入って僅か5分、どこからともなく焼け焦げた臭いと煙が漂ってきた。
路地から大通りに抜けた途端、火の粉が空から降ってきた。
見上げると、アパートの三階部分から炎が吹き出している。
その後方に目をやると、ブラックドラゴンの攻撃を直接受けたようで、同じ高さの建物が2棟激しく燃えていた。
「よし、この通りから向こうには延焼させないぞ!」
ここまで一緒に付いてきた冒険者4人は水適性を持っていたので、水魔法で火を消すよう指示を出す。
本来ならBランク冒険者以上でないと買えない魔力増幅具を、特別に貸し与えた。
まだ高学院の仲間は到着していないようなので、俺は直径10メートルの巨大なウォーターボールを作り出し、激しく燃えている後ろの2棟の真上で破裂させる。
1度では当然鎮火には至らず、同じことを4回繰り返したところで火の手は見えなくなったが、建物はほぼ全焼していた。
「ランドル、学院の仲間は到着しているか?」
『うんアコル。今は初級学校の近くの火事を消してる。
それから、中級地区に近い大きな建物と、モンブラン商会傘下の印刷工場の火を消してる』
……中級地区に近い西地区の大きな建物といえば、フロランタン商会の織物工場? 印刷工場は、商学部2年のイーサンの家だ。
「他に燃えている場所は?」
『大きな建物じゃないけど、2階建ての建物がたくさん並んでる西の外壁に近い場所が一番燃えてる。
王都の外に出る西門が近いけど、門が閉まってるから外に逃げられないみたい』
西門に近い場所は古い建物が多く家賃が安いから、あまりお金に余裕のない者たちの住居になっている。
初級学校にも通えない子供たちが多いから、恐らく自宅で身を隠していたはずだ。
人口密度も高いから、地下室に避難できる人数も限られているだろう。
……まずい、第二級警戒体制発令中は、魔獣の侵入を阻止するため門を開けることは禁止されている。
冒険者たちに残り火の始末を頼み、俺は西門に急いで移動する。
狭い路地が多く、煙で視界がはっきりしないことでパニック状態に陥った人々には、俺の叫び声は届かない。
……落ち着け、皆を冷静にさせる手段を考えるんだ。
『アコル、西門に向かったログドル王子の契約妖精ミランから救助要請だわ。多くの人が城壁の所で逃げ場が無くなったって』
右肩に姿を現したエクレアが、意外な人物の名前と救援要請を伝えた。
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