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絶望と希望
293ー1 同時襲撃の恐怖(9)ー1
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すっかり太陽は昇ったが、春先の上空はかなり肌寒い。
春霞の影響で、眼下に広がる景色はぼんやりと滲んでいる。
少し高い位置を飛びながら王都に向かって進んでいると、春霞とは明らかに違う灰色や黒い煙が立ち上っているのが見えてきた。
王宮担当の賢者妖精ロルフは、目覚めたブラックドラゴンは先ず王宮の建物を攻撃したと報告してきた。
今は無風に近いので、狼煙のように上がっている煙の数を見れば、火災の規模が推察できる。
煙は王都の中心に近い場所から上がっていて、その数はおよそ4つ。
王宮のような巨大建築物が燃えていれば、もっと幅の広い煙が上がっているはずだし、勢いも桁違いだろう。
今のところ燃えているのは、木造建築の倉庫や訓練施設のようだ。
奴等は知能が高い上に、洗脳や炎の攻撃までできる。
実際に凶暴な上位魔獣までも意のままに操り、人間の住む村や町を狙って破壊行動をしてきたのだから。
……まったくもって油断できない。
人間にとって最も厄介な敵であり、魔獣にとっても味方ではない。
今回の同時攻撃の狙いは、自らが炎の攻撃で人間を襲い、ブラックドラゴンこそが最強なのだと知らしめることなのかもしれない。
そうであるなら、気が済むまで王都を攻撃する可能性が高い。
問題は炎の攻撃だ。炎の脅威には煙も含まれる。
住宅が密集している王都で大規模火災が発生すれば、王都民たちは逃げ場を失う。
特に南の下級地区で火の手が上がれば、たちまち燃え広がってしまうだろう。
「エクレア、学院長に5分後に到着すると伝えてくれ」
『了解アコル』
飛行中も覇王軍や執行部メンバー、学院長やワイコリーム公爵の契約妖精から、いろいろな報告や指示確認などが次々に届く。
俺が居なくても仲間たちは何をすべきか考えて行動してくれるから、少し指示を出すだけでいい。
『アコル、エリスがラリエスとマサルーノを連れて、これから王都に向かうって』
王都が眼前に迫り、徐々に高度を下げていたランドルが、母竜エリスからの伝言を念話で伝えてきた。
どうやら巨大蛙の討伐は、無事に完了したようだ。
「了解ランドル。このままブラックドラゴンの背後に付けてくれ」
肉眼ではっきりとその憎き姿を捉えた俺は、ランドルに新たな指示を出す。
ぎりぎり間に合ったと思ったが、王都到着の寸前で、最悪の事態が起こってしまった。
肉眼で捉えたブラックドラゴンは、王宮から飛び立ち、高学院の上空近くを横切って、西地区に向かいながら炎をまき散らし始めた。
「くそ、遣りたい放題かよ!」と、つい悪態をついてしまう。
目の前でブラックドラゴンに好き勝手され、俺は奥歯を噛み締め憎き敵を睨み付ける。
早く火を消したいが、元凶であるブラックドラゴンを倒すのが先だ。
「ランドル、アイツより少し低く飛んで、斜め下から上に居るアイツに散弾攻撃を頼む」
『了解、任せて。上からだと王都が燃えちゃうもんね』
ランドルはやる気満々って感じで答えて、ブラックドラゴンの斜め下後方に向かって高速で移動を開始する。
グンッと風圧がかかって、急降下に体を持って行かれないよう手摺をギュッと強く握って踏ん張る。
得意気に放っている炎の威力は然程強くないのか、命中した建物はドカンと大きな音をたてるが大破するほどではない。
吐き出される炎のスピードはランドルの半分以下で、C級魔術師が放つファイヤーボール程度の大きさと温度しかない。
春霞の影響で、眼下に広がる景色はぼんやりと滲んでいる。
少し高い位置を飛びながら王都に向かって進んでいると、春霞とは明らかに違う灰色や黒い煙が立ち上っているのが見えてきた。
王宮担当の賢者妖精ロルフは、目覚めたブラックドラゴンは先ず王宮の建物を攻撃したと報告してきた。
今は無風に近いので、狼煙のように上がっている煙の数を見れば、火災の規模が推察できる。
煙は王都の中心に近い場所から上がっていて、その数はおよそ4つ。
王宮のような巨大建築物が燃えていれば、もっと幅の広い煙が上がっているはずだし、勢いも桁違いだろう。
今のところ燃えているのは、木造建築の倉庫や訓練施設のようだ。
奴等は知能が高い上に、洗脳や炎の攻撃までできる。
実際に凶暴な上位魔獣までも意のままに操り、人間の住む村や町を狙って破壊行動をしてきたのだから。
……まったくもって油断できない。
人間にとって最も厄介な敵であり、魔獣にとっても味方ではない。
今回の同時攻撃の狙いは、自らが炎の攻撃で人間を襲い、ブラックドラゴンこそが最強なのだと知らしめることなのかもしれない。
そうであるなら、気が済むまで王都を攻撃する可能性が高い。
問題は炎の攻撃だ。炎の脅威には煙も含まれる。
住宅が密集している王都で大規模火災が発生すれば、王都民たちは逃げ場を失う。
特に南の下級地区で火の手が上がれば、たちまち燃え広がってしまうだろう。
「エクレア、学院長に5分後に到着すると伝えてくれ」
『了解アコル』
飛行中も覇王軍や執行部メンバー、学院長やワイコリーム公爵の契約妖精から、いろいろな報告や指示確認などが次々に届く。
俺が居なくても仲間たちは何をすべきか考えて行動してくれるから、少し指示を出すだけでいい。
『アコル、エリスがラリエスとマサルーノを連れて、これから王都に向かうって』
王都が眼前に迫り、徐々に高度を下げていたランドルが、母竜エリスからの伝言を念話で伝えてきた。
どうやら巨大蛙の討伐は、無事に完了したようだ。
「了解ランドル。このままブラックドラゴンの背後に付けてくれ」
肉眼ではっきりとその憎き姿を捉えた俺は、ランドルに新たな指示を出す。
ぎりぎり間に合ったと思ったが、王都到着の寸前で、最悪の事態が起こってしまった。
肉眼で捉えたブラックドラゴンは、王宮から飛び立ち、高学院の上空近くを横切って、西地区に向かいながら炎をまき散らし始めた。
「くそ、遣りたい放題かよ!」と、つい悪態をついてしまう。
目の前でブラックドラゴンに好き勝手され、俺は奥歯を噛み締め憎き敵を睨み付ける。
早く火を消したいが、元凶であるブラックドラゴンを倒すのが先だ。
「ランドル、アイツより少し低く飛んで、斜め下から上に居るアイツに散弾攻撃を頼む」
『了解、任せて。上からだと王都が燃えちゃうもんね』
ランドルはやる気満々って感じで答えて、ブラックドラゴンの斜め下後方に向かって高速で移動を開始する。
グンッと風圧がかかって、急降下に体を持って行かれないよう手摺をギュッと強く握って踏ん張る。
得意気に放っている炎の威力は然程強くないのか、命中した建物はドカンと大きな音をたてるが大破するほどではない。
吐き出される炎のスピードはランドルの半分以下で、C級魔術師が放つファイヤーボール程度の大きさと温度しかない。
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