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絶望と希望
288ー2 同時襲撃の恐怖(4)ー2
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エリスが高速飛行できると知らなかった様子のブラックドラゴンは、完全に移動が出遅れ、エリスの放った炎の槍に、4枚ある翼のうち後方2枚の翼が貫かれていく。
「やった!」とマサルーノ先輩が歓喜の声を上げ、私もガッツポーズをとる。
よく見ると、胴体にも一箇所炎の槍が貫通していた。
……さあ落ちろ! 早く落下して止めを刺させろ!
よろよろと降下していくブラックドラゴンだったが、ほんの50メートル降下したところで予想外の行動をとった。
なんと、体勢を持ち直しこちらに頭を向け、信じられないことに口から高速で炎を吐きだしたのだ。
その炎は、先程放った3メートル級のファイヤーボールとは違い、今度は1メートルほどの大きさで、速度は倍の速さだった。
……危ないなぁ、真の実力は隠していたということか?
魔法障壁がなければ、エリスの翼をかすっていたと思う。
「へえ、翼2枚でも問題なく飛べるんだな。
しかも、胴体に空いたはずの穴は塞がってる。
まだ攻撃する余裕があるとは驚きだが、このまま引き下がる俺じゃない」
マサルーノ先輩はそう言うと不敵に笑い、空中で展開できる魔法陣に魔力を流し始める。
空中に拳大の尖った石の矢尻が突如出現し、マサルーノ先輩は「行け―!」と叫んだ。
すると、100以上はある矢尻が一斉にブラックドラゴン目掛けて飛んでいく。
動きの速いブラックドラゴンを仕留めるため、飛んでいく方向はバラバラだ。
正面目掛けて飛ぶもの、上に向かうもの、左右に向かうものもあれば、わずかだが下に向かう石の矢尻もあった。
グレードラゴンなら、こういう危機的場面では上に逃げようとする。
下に逃げると、上から再び敵に攻撃されるので、飛行する魔獣の9割は上か左右に逃げていく。
「まさか下とは!」
マサルーノ先輩は忌々しそうに言いながら、次の魔法陣をマジックバッグから取り出そうとする。
ブラックドラゴンのグギャーッと耳障りな鳴き声が響くけど、石の矢じりが命中したのは2発くらいだ。
しかも、こちらを振り向くことなく北へと逃げていく。
「マサルーノ先輩、追うのは止めましょう。翼を2枚使用不能にしただけでも充分です。
ヤツの飛行速度はかなり落ちたし、石の矢じりは尾に当たりました。ほら、体が右に傾いています」
私は追いかけようとするエリスを止め、マサルーノ先輩の魔法陣攻撃も止めた。
「優先すべきは消火活動と住民の救済です」
私だって止めを刺したい。だが、消火活動は一刻を争う。
後ろ髪を引かれはするが、ブラックドラゴンに対し有効な攻撃ができたことを良しとしよう。
「そうだな。次に遭った時は必ず止めを刺してやる」
「はい、マサルーノ先輩。次こそは」
マサルーノ先輩と顔を見合わせ頷くと、もう一度ブラックドラゴンが飛び去った北に視線を向け、その姿が見えなくなったのを確認し被災した町へと取って返す。
町の上空に戻ると、火の手は7箇所から上がっていて、大人の男性を中心に懸命に火を消そうとしていた。
私は雨を降らせる広域魔法陣を取り出すと、契約妖精のトワを呼び出し肩に載せ、魔力を補充しながら魔法陣を発動させた。
できればピンポイントで消火したいところだが、まだ魔獣の討伐が残っている。
ここで魔力を使い果たすと、他が危険に曝される。
エリスで移動しながら、消えますようにと願いを込め、町全体に大粒の雨を降らせていく。
突然の雨に驚いた住民たちは空を見上げ、金色のドラゴンに気付くと、「ありがとう」と叫びながら手を振ってくれた。
一安心したその時、王都がブラックドラゴンに襲撃されていると、衝撃の知らせをエクレアちゃんが持ってきた。
「やった!」とマサルーノ先輩が歓喜の声を上げ、私もガッツポーズをとる。
よく見ると、胴体にも一箇所炎の槍が貫通していた。
……さあ落ちろ! 早く落下して止めを刺させろ!
よろよろと降下していくブラックドラゴンだったが、ほんの50メートル降下したところで予想外の行動をとった。
なんと、体勢を持ち直しこちらに頭を向け、信じられないことに口から高速で炎を吐きだしたのだ。
その炎は、先程放った3メートル級のファイヤーボールとは違い、今度は1メートルほどの大きさで、速度は倍の速さだった。
……危ないなぁ、真の実力は隠していたということか?
魔法障壁がなければ、エリスの翼をかすっていたと思う。
「へえ、翼2枚でも問題なく飛べるんだな。
しかも、胴体に空いたはずの穴は塞がってる。
まだ攻撃する余裕があるとは驚きだが、このまま引き下がる俺じゃない」
マサルーノ先輩はそう言うと不敵に笑い、空中で展開できる魔法陣に魔力を流し始める。
空中に拳大の尖った石の矢尻が突如出現し、マサルーノ先輩は「行け―!」と叫んだ。
すると、100以上はある矢尻が一斉にブラックドラゴン目掛けて飛んでいく。
動きの速いブラックドラゴンを仕留めるため、飛んでいく方向はバラバラだ。
正面目掛けて飛ぶもの、上に向かうもの、左右に向かうものもあれば、わずかだが下に向かう石の矢尻もあった。
グレードラゴンなら、こういう危機的場面では上に逃げようとする。
下に逃げると、上から再び敵に攻撃されるので、飛行する魔獣の9割は上か左右に逃げていく。
「まさか下とは!」
マサルーノ先輩は忌々しそうに言いながら、次の魔法陣をマジックバッグから取り出そうとする。
ブラックドラゴンのグギャーッと耳障りな鳴き声が響くけど、石の矢じりが命中したのは2発くらいだ。
しかも、こちらを振り向くことなく北へと逃げていく。
「マサルーノ先輩、追うのは止めましょう。翼を2枚使用不能にしただけでも充分です。
ヤツの飛行速度はかなり落ちたし、石の矢じりは尾に当たりました。ほら、体が右に傾いています」
私は追いかけようとするエリスを止め、マサルーノ先輩の魔法陣攻撃も止めた。
「優先すべきは消火活動と住民の救済です」
私だって止めを刺したい。だが、消火活動は一刻を争う。
後ろ髪を引かれはするが、ブラックドラゴンに対し有効な攻撃ができたことを良しとしよう。
「そうだな。次に遭った時は必ず止めを刺してやる」
「はい、マサルーノ先輩。次こそは」
マサルーノ先輩と顔を見合わせ頷くと、もう一度ブラックドラゴンが飛び去った北に視線を向け、その姿が見えなくなったのを確認し被災した町へと取って返す。
町の上空に戻ると、火の手は7箇所から上がっていて、大人の男性を中心に懸命に火を消そうとしていた。
私は雨を降らせる広域魔法陣を取り出すと、契約妖精のトワを呼び出し肩に載せ、魔力を補充しながら魔法陣を発動させた。
できればピンポイントで消火したいところだが、まだ魔獣の討伐が残っている。
ここで魔力を使い果たすと、他が危険に曝される。
エリスで移動しながら、消えますようにと願いを込め、町全体に大粒の雨を降らせていく。
突然の雨に驚いた住民たちは空を見上げ、金色のドラゴンに気付くと、「ありがとう」と叫びながら手を振ってくれた。
一安心したその時、王都がブラックドラゴンに襲撃されていると、衝撃の知らせをエクレアちゃんが持ってきた。
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