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策略と混乱

276ー2 独立国への道(9)ー2

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 国王派の動きとして、マギ公爵が指揮を執っている、ワートン領とヘイズ領の国王派の貴族を救済する作戦も始まった。
 表向きは、でっち上げた罪で爵位と財産を没収するのだが、敵を欺くためギリギリまで国王派の貴族に内情を知らせることはしない。

 コルランドル王国内は、現在どこの領地でも領主への納税時期で忙しい。
 王弟シーブルには、ヘイズ領やワートン領の者が匿名で不正を知らせてきたので、厳しく調査し不正があれば厳罰に処すと伝えてある。

 マギ公爵は、救済する貴族が納税する前に、その納税分まで財産とみなし没収する。
 よって、領主代行をしている王弟シーブルとサナへ侯爵に、納税されることはない。

 シーブル派は後日、手に入るはずの税が収められなかったと知り、悔しい思いをするだろう。
 だが、2月の初旬までは独立を知られないようにするため、マギ公爵が行う処分に異議を唱えないだろう。

 それどころか、邪魔だと思っていた国王派の貴族を処分する手間が省けたと、ほくそ笑んでいる可能性が高いだろう。 
 シーブルには、王都に居る自分の派閥の者が、気を利かせて密告したかのように思えただろう。

 肝心な息子トーブルはヘイズ領に帰らなかったが、ジュールがワートン公爵に手紙を送り、独立までには必ず動くと知らせて手を打っている。



 1月10日、ドバイン運送は旧デミル領に支店をオープンした。
 オープン記念特価として、他領では貸し出しされていない大型のマジックバッグが、中型のマジックバッグと同額で10日間レンタルできると、シーブル派の貴族に案内状を送った。

「覇王様、予想通り8貴族がデミル領を出発しました。
 マジックバッグの運び人は、全員ワイコリーム公爵家の諜報部員です。
 そろそろ王都に到着するころです。王都の本店にも、追加でマジックバッグのレンタルを申し込む貴族が来ました」

 エイトと一緒にアエラボ商会に立ち寄った俺は、ドバイン運送の特別室で、本店長と商業ギルドのギルマスから報告を受けていた。

 冬期休暇の間、セイロン山でカラ魔石に魔力を充填する傍ら、頑張って作った中型のマジックバッグを本店長に渡しておく。

「表向きには商業ギルドと冒険者ギルドの出資で立ち上がった運送店に、大量の荷物を持たせて他領に移動するなんて、不審に思われないかと不安にならないのでしょうか?」

「見える範囲の荷物は少量だから、誰からも不審がられないと思い込める貴族たちは、商業ギルドの連絡網を甘く見ています。
 まさか自分たちが監視されているなんて思わないからこその行動です」

エイトの疑問に答えたのは、商業ギルド本部のギルマスだ。
 
 これから商業ギルドは、独立したヘイズ領とワートン領に商団を送り込んでいく。その具体的な打ち合わせにギルマスは来ていた。
 新しい国の商業ギルドは、外から物資が入らなくなり、困ってから慌てて立ち上げることになるだろう。


 ワートン領とヘイズ領で働いている商業ギルドの正職員は、冬期休暇返上で働いていた。
 そのため、2月1日から全員が冬期休暇を取り王都に戻って来る。
 留守を守るのは、基本的な仕事を覚えた臨時職員で、現地採用の下級貴族だ。

 当然だが、貴重な商品は全てマジックバッグに収納し、倉庫に残してあるのは日用品の一部くらいである。
 シーブル派の独立に対抗する作戦は、着々と進められている。

 このまま2月末まで魔獣の氾濫が起こらなければ、シーブルが独立を宣言しても慌てる必要はない。

   
 1月末までは平穏に過ぎていき、【覇王探求部会】の協力者がフル稼働して複製を急いだ魔術具が遂に完成した。

 ポーション作りの魔術具と、カラ魔石に魔力を充填する魔術具だ。
 これで医療班は、ポーションの量産を開始できる。

 薬師部の教授と張り切ってポーションを作っていた2月2日、とんでもない知らせがリーマス王子から届けられた。

「大変です覇王様、王宮の薬草の大半が盗まれました!」
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