505 / 709
決戦開始
266ー2 心理対抗戦(7)ー2
しおりを挟む
「まあ、美しいだけではなく、上級貴族部を卒業し、魔法部に編入できる才女なのね。しかも、王立高学院特別部隊の副隊長だなんて、素晴らしいわ。
エリザーテさん、今夜はトーブルさんと一緒に、日頃の疲れを癒してね。私は貴女を歓迎するわ」
王妃様はエリザーテに優しく話し掛けられ、王族であるトーブルさんに相応しい女性だと認めて、歓迎すると仰った。
王妃様の今のお言葉で、自称婚約者のことを、国王や王妃様が認めていないことが公になった感じね。
……さすが王妃様だわ。このお言葉は効いたわね。
「嫌だわ、パーティー会場にマント着用で来るなんて、貴族の常識も知らないのかしら」
ちょっと大きな声で、私たちを常識知らずとバカにする発言が、ターゲットの居る方向から聞こえました。
「覇王軍の冬の正装はマント着用だが、覇王や勇者を貶めるとはいい根性だ。
確かに、本日のパーティーを、舞踏会だと思っている者には目障りだろう。
覇王である私が許す。皆、正装であるマントを脱いで寛げ。
今宵は国のために懸命に働く者を、慰労するためのパーティーだ」
覇王様の体は薄っすらと七色に輝き、覇王だと名乗られた瞬間、40人以上が腰を抜かしたように床に尻もちをつきました。
覇王様の【覇気】を経験したことがない者は、何が起こったのか分からず唖然とし、二度以上の経験者は驚愕の表情で体を震わせています。
本当なら倒れ伏すところですが、覇王様は【覇気】を弱く放つと仰っていたので、美しいドレスで無様に平伏すことにならなくて良かったですわね。
【反国王派】の皆さんご愁傷様。覇王様に反意ありと示してしまったわね。
王宮警備隊や【国王派】の、懐疑的な視線を集めていましてよ。
……さあ、戦い開始の合図である【覇気】は放たれたわ!
◇◇ 勇者ラリエス ◇◇
今夜は勇者として仕事をする。【反国王派】の切り崩しだ。
下座にあたる方へ歩いていると、私の部下でもある諜報部のデータルが近付いてきて、数人の名前を耳打ちする。
「データル、同伴してくれ。そうすれば、今後君の所には離反者が情報を持ってくるだろう。
私や覇王様と直接会うのは難しい。誰かが窓口になる必要がある」
「了解です。窓口担当として表に立たせていただきます」
既に下話がしてあるという一団の元に到着すると、勇者であり覇王様の側近である私を、警戒している者とそうでない者の態度は一目で分かった。
「勇者ラリエス様、紹介させてください。ここに集う仲間は、皆優秀な者ばかりです」
データルは笑顔で7人の事務官に視線を向けながら言う。
私は頭をフル回転し、見知った者が居ないか記憶を探る。
すると、魔法攻撃講座で懸命に魔力量を上げていた者と、今夜の名簿に目を通したカイヤさんが、真摯に危機管理指導講座を受講し、高得点を取った者がいると教えてくれたことを思い出した。
「皆さんこんばんは。貴方は確か、魔法攻撃講座に参加されていましたよね」
「は、はい勇者様」
「とても真摯に練習されている姿に、私も覇王様も感心していたのですよ」
「えっ、私なんかを?」
このヘイズ領の文官は、自分から志願して講座に参加していた。
ヘイズ領の先行きと己の将来を不安に思い、参加していたのだろう。
「貴方は、ワートン領の事務官の方では?」
「えっ、私をご存じなのですか?」
下っ端に近い文官の自分なんかを、何故知っているんだろうと、探るような視線を私に向ける。
どうやら用心深い性格らしい。
「うちの指導部の女性は容赦ない……いえ、とても厳しいのだが、そんな彼女たちが、ワートン領の赤毛の文官はとても優秀だったと感心していたので、もしかして貴方ではと思ったのです」
「ああ、確かに容赦なしでした。思い出すと背筋が寒くなります」
自分が褒められていたのだと分かったワートン領のマークスは、嬉しそうに肩をすぼめてみせた。
エリザーテさん、今夜はトーブルさんと一緒に、日頃の疲れを癒してね。私は貴女を歓迎するわ」
王妃様はエリザーテに優しく話し掛けられ、王族であるトーブルさんに相応しい女性だと認めて、歓迎すると仰った。
王妃様の今のお言葉で、自称婚約者のことを、国王や王妃様が認めていないことが公になった感じね。
……さすが王妃様だわ。このお言葉は効いたわね。
「嫌だわ、パーティー会場にマント着用で来るなんて、貴族の常識も知らないのかしら」
ちょっと大きな声で、私たちを常識知らずとバカにする発言が、ターゲットの居る方向から聞こえました。
「覇王軍の冬の正装はマント着用だが、覇王や勇者を貶めるとはいい根性だ。
確かに、本日のパーティーを、舞踏会だと思っている者には目障りだろう。
覇王である私が許す。皆、正装であるマントを脱いで寛げ。
今宵は国のために懸命に働く者を、慰労するためのパーティーだ」
覇王様の体は薄っすらと七色に輝き、覇王だと名乗られた瞬間、40人以上が腰を抜かしたように床に尻もちをつきました。
覇王様の【覇気】を経験したことがない者は、何が起こったのか分からず唖然とし、二度以上の経験者は驚愕の表情で体を震わせています。
本当なら倒れ伏すところですが、覇王様は【覇気】を弱く放つと仰っていたので、美しいドレスで無様に平伏すことにならなくて良かったですわね。
【反国王派】の皆さんご愁傷様。覇王様に反意ありと示してしまったわね。
王宮警備隊や【国王派】の、懐疑的な視線を集めていましてよ。
……さあ、戦い開始の合図である【覇気】は放たれたわ!
◇◇ 勇者ラリエス ◇◇
今夜は勇者として仕事をする。【反国王派】の切り崩しだ。
下座にあたる方へ歩いていると、私の部下でもある諜報部のデータルが近付いてきて、数人の名前を耳打ちする。
「データル、同伴してくれ。そうすれば、今後君の所には離反者が情報を持ってくるだろう。
私や覇王様と直接会うのは難しい。誰かが窓口になる必要がある」
「了解です。窓口担当として表に立たせていただきます」
既に下話がしてあるという一団の元に到着すると、勇者であり覇王様の側近である私を、警戒している者とそうでない者の態度は一目で分かった。
「勇者ラリエス様、紹介させてください。ここに集う仲間は、皆優秀な者ばかりです」
データルは笑顔で7人の事務官に視線を向けながら言う。
私は頭をフル回転し、見知った者が居ないか記憶を探る。
すると、魔法攻撃講座で懸命に魔力量を上げていた者と、今夜の名簿に目を通したカイヤさんが、真摯に危機管理指導講座を受講し、高得点を取った者がいると教えてくれたことを思い出した。
「皆さんこんばんは。貴方は確か、魔法攻撃講座に参加されていましたよね」
「は、はい勇者様」
「とても真摯に練習されている姿に、私も覇王様も感心していたのですよ」
「えっ、私なんかを?」
このヘイズ領の文官は、自分から志願して講座に参加していた。
ヘイズ領の先行きと己の将来を不安に思い、参加していたのだろう。
「貴方は、ワートン領の事務官の方では?」
「えっ、私をご存じなのですか?」
下っ端に近い文官の自分なんかを、何故知っているんだろうと、探るような視線を私に向ける。
どうやら用心深い性格らしい。
「うちの指導部の女性は容赦ない……いえ、とても厳しいのだが、そんな彼女たちが、ワートン領の赤毛の文官はとても優秀だったと感心していたので、もしかして貴方ではと思ったのです」
「ああ、確かに容赦なしでした。思い出すと背筋が寒くなります」
自分が褒められていたのだと分かったワートン領のマークスは、嬉しそうに肩をすぼめてみせた。
3
お気に入りに追加
311
あなたにおすすめの小説
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
【完結】天候を操れる程度の能力を持った俺は、国を富ませる事が最優先!~何もかもゼロスタートでも挫けずめげず富ませます!!~
udonlevel2
ファンタジー
幼い頃から心臓の悪かった中村キョウスケは、親から「無駄金使い」とののしられながら病院生活を送っていた。
それでも勉強は好きで本を読んだりニュースを見たりするのも好きな勤勉家でもあった。
唯一の弟とはそれなりに仲が良く、色々な遊びを教えてくれた。
だが、二十歳までしか生きられないだろうと言われていたキョウスケだったが、医療の進歩で三十歳まで生きることができ、家での自宅治療に切り替わったその日――階段から降りようとして両親に突き飛ばされ命を落とす。
――死んだ日は、土砂降りの様な雨だった。
しかし、次に目が覚めた時は褐色の肌に銀の髪をした5歳くらいの少年で。
自分が転生したことを悟り、砂漠の国シュノベザール王国の第一王子だと言う事を知る。
飢えに苦しむ国民、天候に恵まれないシュノベザール王国は常に飢えていた。だが幸いな事に第一王子として生まれたシュライは【天候を操る程度の能力】を持っていた。
その力は凄まじく、シュライは自国を豊かにするために、時に鬼となる事も持さない覚悟で成人と認められる15歳になると、頼れる弟と宰相と共に内政を始める事となる――。
※小説家になろう・カクヨムにも掲載中です。
無断朗読・無断使用・無断転載禁止。
姉から奪うことしかできない妹は、ザマァされました
饕餮
ファンタジー
わたくしは、オフィリア。ジョンパルト伯爵家の長女です。
わたくしには双子の妹がいるのですが、使用人を含めた全員が妹を溺愛するあまり、我儘に育ちました。
しかもわたくしと色違いのものを両親から与えられているにもかかわらず、なぜかわたくしのものを欲しがるのです。
末っ子故に甘やかされ、泣いて喚いて駄々をこね、暴れるという貴族女性としてはあるまじき行為をずっとしてきたからなのか、手に入らないものはないと考えているようです。
そんなあざといどころかあさましい性根を持つ妹ですから、いつの間にか両親も兄も、使用人たちですらも絆されてしまい、たとえ嘘であったとしても妹の言葉を鵜呑みにするようになってしまいました。
それから数年が経ち、学園に入学できる年齢になりました。が、そこで兄と妹は――
n番煎じのよくある妹が姉からものを奪うことしかしない系の話です。
全15話。
※カクヨムでも公開しています
異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい
増月ヒラナ
ファンタジー
不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。
目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた
3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ
いくらなんでもこれはおかしいだろ!
『王家の面汚し』と呼ばれ帝国へ売られた王女ですが、普通に歓迎されました……
Ryo-k
ファンタジー
王宮で開かれた側妃主催のパーティーで婚約破棄を告げられたのは、アシュリー・クローネ第一王女。
優秀と言われているラビニア・クローネ第二王女と常に比較され続け、彼女は貴族たちからは『王家の面汚し』と呼ばれ疎まれていた。
そんな彼女は、帝国との交易の条件として、帝国に送られることになる。
しかしこの時は誰も予想していなかった。
この出来事が、王国の滅亡へのカウントダウンの始まりであることを……
アシュリーが帝国で、秘められていた才能を開花するのを……
※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
捨てられた転生幼女は無自重無双する
紅 蓮也
ファンタジー
スクラルド王国の筆頭公爵家の次女として生を受けた三歳になるアイリス・フォン・アリステラは、次期当主である年の離れた兄以外の家族と兄がつけたアイリスの専属メイドとアイリスに拾われ恩義のある専属騎士以外の使用人から疎まれていた。
アイリスを疎ましく思っている者たちや一部の者以外は知らないがアイリスは転生者でもあった。
ある日、寝ているとアイリスの部屋に誰かが入ってきて、アイリスは連れ去られた。
アイリスは、肌寒さを感じ目を覚ますと近くにその場から去ろうとしている人の声が聞こえた。
去ろうとしている人物は父と母だった。
ここで声を出し、起きていることがバレると最悪、殺されてしまう可能性があるので、寝たふりをして二人が去るのを待っていたが、そのまま本当に寝てしまい二人が去った後に近づいて来た者に気づくことが出来ず、また何処かに連れていかれた。
朝になり起こしに来た専属メイドが、アイリスがいない事を当主に報告し、疎ましく思っていたくせに当主と夫人は騒ぎたて、当主はアイリスを探そうともせずに、その場でアイリスが誘拐された責任として、専属メイドと専属騎士にクビを言い渡した。
クビを言い渡された専属メイドと専属騎士は、何も言わず食堂を出て行き身支度をして、公爵家から出ていった。
しばらく歩いていると、次期当主であるカイルが後を追ってきて、カイルの腕にはいなくなったはずのアイリスが抱かれていた。
アイリスの無事に安心した二人は、カイルの話を聞き、三人は王城に向かった。
王城で、カイルから話を聞いた国王から広大なアイリス公爵家の領地の端にあり、昔の公爵家本邸があった場所の管理と魔の森の開拓をカイルは、国王から命られる。
アイリスは、公爵家の目がなくなったので、無自重でチートし続け管理と開拓を命じられた兄カイルに協力し、辺境の村々の発展や魔の森の開拓をしていった。
※諸事情によりしばらく連載休止致します。
※小説家になろう様、カクヨム様でも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる