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決戦開始
264ー1 心理対抗戦(5)ー1
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◇◇ 王妃ミルフィーユ ◇◇
高学院に向かわせた王宮警備隊副隊長から、信じられない報告がありました。
得体のしれない頭が空っぽの娘は、王宮警備隊の副隊長に向かって、犯人はリーマス王子だと言い切ったと言うのです。
しかも、彼の妖精が聞いたという馬車内での罵詈雑言は、それだけで反逆罪に問うことができるようなものでした。
折角の信用できる情報ですから、王様と宰相マリード侯爵にも報告してもらいましょう。大事な情報は共有しておかないといけないわ。
……それにしても、頭が空っぽなだけでなく、自分が将来王妃になれると思っているなんて。
昼前、今夜のパーティーに出席する貴族の名簿が届きました。
そういえば、王弟シーブル夫人が名簿を見たいと言っていたわね。
「リリアーヌ、名簿をヘイズ領主代行夫人にお渡ししてきて。
それから、トーブルを害したあの娘が、主犯だという言質をとってきてくれる?」
「承知いたしました王妃様。夫人もあれですが、あの娘はもっとあれですから、必ずぼろを出すことでしょう。お任せください」
侍女長のリリアーヌ(34歳)は、得意分野の仕事を振られ嬉しそうに名簿を受け取ります。
リリアーヌは、ワイコリーム公爵が適任だと推薦してくださった、ワイコリーム公爵家調査部の優秀な諜報部員でした。
しかも覇王講座の妖精学講座で学び、妖精と契約している稀有な人材です。
いくつもの顔を持ち、潜入捜査もお手の物。
王立高学院魔法部の後輩で、B級一般魔術師の資格を持っていて、剣術は男顔負けの強さ。王妃の護衛も兼ねられる強者で、何よりも覇王様の信奉者です。
「それで、どうだったかしらリリアーヌ?」
ヘイズ領主代行夫人の所から戻って来たリリアーヌに、結果が楽しみなあまり、前置き無しで質問します。ちょっと声も弾んでいたかもしれません。
リリアーヌは自信満々という感じで微笑んで、部屋に入った所からの一部始終を、声真似を使って演じてくれます。
……これが本当に巧過ぎて、舞台を用意したいくらいなのよ。
「ですが、確かに昨日そのようなデマが、王都中に広まったという事実はございました。
ですので王妃様は、王族を狙う何者かが暗躍している可能性を考慮され、本日は学院の警備に王宮警備隊を配置されました。
と、私が夫人に申し上げていると、あの娘は我慢できなかったようで、まるで自分が見ていたかのように詳しく、トーブル様が襲われた時のことを話し始め、馬脚を露しました」
今度は頭が空っぽの娘の真似をして、まるでこの場にあの娘が居るのかと勘違いする出来栄えで演じていきます。
「そ、そんなはずないわ! トーブル様は本当に襲われたのよ!
私の知り合いが、トーブル様が斬られるところを見たと言っていたのよ。
知り合いの話では、犯人はリーマス王子に任務完了と言っていたって、だからリーマス王子が犯人なのよ!
おかあさま、騙されてなりません。トーブル様は、トーブル様は本当に斬られたのです。ですから、私が看病するのです。
そうすればきっと、お元気になられます。婚約者である私が優しく看病すれば、きっと一緒にヘイズ領に帰っていただけます!・・・だそうです王妃様」
リリアーヌは演じ終えて、役者のように大仰に礼をとります。
凄いわ。これなら国立劇場の女優になれるレベルよ。
「リリアーヌ、特別手当を出すわ。だから、今のを王様の執務室でもやってくれないかしら?」
「謹んでお断りいたします。コホン、王妃様、笑いこけている場合ではありません。
そろそろパーティーの準備をいたしませんと、覇王様とエイト様も来られるのでしょう?
完璧な準備でお迎えし、あの娘に引導を渡してやりましょう」
まあ、リリアーヌったら、学院長のフィナンシェさんよりも毒舌ね。
そうね、頼もしい侍女長と一緒に、今夜は素敵なパーティーにしなくてはいけないわ。
……覇王様が到着されるまで、噂ばら撒き要員にも頑張ってもらいましょう。
高学院に向かわせた王宮警備隊副隊長から、信じられない報告がありました。
得体のしれない頭が空っぽの娘は、王宮警備隊の副隊長に向かって、犯人はリーマス王子だと言い切ったと言うのです。
しかも、彼の妖精が聞いたという馬車内での罵詈雑言は、それだけで反逆罪に問うことができるようなものでした。
折角の信用できる情報ですから、王様と宰相マリード侯爵にも報告してもらいましょう。大事な情報は共有しておかないといけないわ。
……それにしても、頭が空っぽなだけでなく、自分が将来王妃になれると思っているなんて。
昼前、今夜のパーティーに出席する貴族の名簿が届きました。
そういえば、王弟シーブル夫人が名簿を見たいと言っていたわね。
「リリアーヌ、名簿をヘイズ領主代行夫人にお渡ししてきて。
それから、トーブルを害したあの娘が、主犯だという言質をとってきてくれる?」
「承知いたしました王妃様。夫人もあれですが、あの娘はもっとあれですから、必ずぼろを出すことでしょう。お任せください」
侍女長のリリアーヌ(34歳)は、得意分野の仕事を振られ嬉しそうに名簿を受け取ります。
リリアーヌは、ワイコリーム公爵が適任だと推薦してくださった、ワイコリーム公爵家調査部の優秀な諜報部員でした。
しかも覇王講座の妖精学講座で学び、妖精と契約している稀有な人材です。
いくつもの顔を持ち、潜入捜査もお手の物。
王立高学院魔法部の後輩で、B級一般魔術師の資格を持っていて、剣術は男顔負けの強さ。王妃の護衛も兼ねられる強者で、何よりも覇王様の信奉者です。
「それで、どうだったかしらリリアーヌ?」
ヘイズ領主代行夫人の所から戻って来たリリアーヌに、結果が楽しみなあまり、前置き無しで質問します。ちょっと声も弾んでいたかもしれません。
リリアーヌは自信満々という感じで微笑んで、部屋に入った所からの一部始終を、声真似を使って演じてくれます。
……これが本当に巧過ぎて、舞台を用意したいくらいなのよ。
「ですが、確かに昨日そのようなデマが、王都中に広まったという事実はございました。
ですので王妃様は、王族を狙う何者かが暗躍している可能性を考慮され、本日は学院の警備に王宮警備隊を配置されました。
と、私が夫人に申し上げていると、あの娘は我慢できなかったようで、まるで自分が見ていたかのように詳しく、トーブル様が襲われた時のことを話し始め、馬脚を露しました」
今度は頭が空っぽの娘の真似をして、まるでこの場にあの娘が居るのかと勘違いする出来栄えで演じていきます。
「そ、そんなはずないわ! トーブル様は本当に襲われたのよ!
私の知り合いが、トーブル様が斬られるところを見たと言っていたのよ。
知り合いの話では、犯人はリーマス王子に任務完了と言っていたって、だからリーマス王子が犯人なのよ!
おかあさま、騙されてなりません。トーブル様は、トーブル様は本当に斬られたのです。ですから、私が看病するのです。
そうすればきっと、お元気になられます。婚約者である私が優しく看病すれば、きっと一緒にヘイズ領に帰っていただけます!・・・だそうです王妃様」
リリアーヌは演じ終えて、役者のように大仰に礼をとります。
凄いわ。これなら国立劇場の女優になれるレベルよ。
「リリアーヌ、特別手当を出すわ。だから、今のを王様の執務室でもやってくれないかしら?」
「謹んでお断りいたします。コホン、王妃様、笑いこけている場合ではありません。
そろそろパーティーの準備をいたしませんと、覇王様とエイト様も来られるのでしょう?
完璧な準備でお迎えし、あの娘に引導を渡してやりましょう」
まあ、リリアーヌったら、学院長のフィナンシェさんよりも毒舌ね。
そうね、頼もしい侍女長と一緒に、今夜は素敵なパーティーにしなくてはいけないわ。
……覇王様が到着されるまで、噂ばら撒き要員にも頑張ってもらいましょう。
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