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決戦開始
253ー2 覇王、激流を生む(1)ー2
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「謹んでお受けいたします。王様、私から一つ提案させて頂いてもよろしいでしょうか?」
「構わない。遠慮せずに言ってみろ」
先程まで怒りの表情だったマギ公爵が、何故だか嬉しそうに口元を緩めて発言する。
「妹のミルフィーユを、外務大臣にしてはどうでしょうか?」
「王妃を?」
「はい、フィナンシェ様が生き生きと高学院の学院長の仕事をされているので、自分も王妃以外の仕事がしたいと言っています」
私はこれまで、王妃や側室、子供たちまでほったらかしにしてきた。
王族とはそういうものだと思っていたが、それは間違いだったと改心したのは最近だ。
これからはもっと手を差し伸べ、歩み寄ろうと思っていた。
だが、どうやら私の手など必要なかったようだ。
……私はつくづく人を見る目がない。
……手を差し伸べられているのは、私の方ではないか。
◇◇ マキアート副学院長 ◇◇
魔法部部長教授から副学院長に就任してから今日まで、古代魔術具の研究を中心に、充実した日々を過ごしてきた。
だが、初代覇王様が遺してくださった古代魔術具は、まだ半分しか起動できていない。そもそも、何に使う物なのかが不明なのだ。
起動させるために必要な魔石は、王様や大臣たちの協力で当面何とかなりそうだが、一番大きな魔術具には、魔石を設置する箇所さえ見当たらない。
今のメンバーでは、これ以上研究が進みそうにないと苦慮していたが、覇王様が【覇王探求部会】を立ち上げられたことで希望が生まれた。
早速覇王様は、国王と連名で【覇王探求部会】設立と、研究・調査に伴う人材募集の公布を行われた。
その結果、目の前の執務机の上には、自分こそはと部会員に応募してきた者の履歴書が山積みになっている。
……これは嬉しい悲鳴と呼ぶべき事態なのだろうが、頭痛の予感がする。
「恐らくこの履歴書の7割は、爵位を継げない貴族家の子息からだろう。
名誉や褒賞や爵位に欲を出し、あわよくばと考えた無能など面接の必要さえない」
私は履歴書の山を見て、怒りと共に特大の溜め息を吐く。
「どうやら書類選考の後に、筆記試験や技能試験を行う必要があるな」
「副学院長、それでは不平不満の対応に手を取られますよ。
何故私が書類選考で落ちたのかと、納得できない貴族の子息が押し寄せてくるでしょう。
全員に試験を行った方が、後々の面倒が減りますよ」
私の呟きを拾ったシルクーネさんが、非常に現実的な未来を突きつけてくる。
今年の卒業生であり、覇王軍メンバーでもあるシルクーネさんは、覇王軍の仕事の傍ら、私の秘書もしてくれている。
ずっと私の研究室で学んでいた優秀な教え子は、覇王様同様に現実主義だ。
伯爵令嬢でもあるこの教え子は、貴族の思考を良く知っているし、無能には容赦ない。
「あ~っ、アコル様のお茶が飲みたいわ」
履歴書のチェックを始めたシルクーネさんが、不可能だと分かっているものの心からの願望を口にした。
「全くだ。アコル様のお茶は美味しいし、ストレスも緩和されていたからな」
私もつい、ないものねだりをしてしまう。
「副学院長、人手が全く足りません。試験を実施するにも、その知らせを送るにも、事務処理をしてくれる学生が必要です。早く引き抜いてください。
ぼやぼやしていると、他のチームに取られてしまいますよ。弟のラノーブに商学部の優秀な学生を2人推薦させ、上級貴族部からも2人、カイヤさんに至急推薦させましょう」
私もシルクーネさんも、魔法は得意だが事務仕事には自信がない。
優秀な学生で【覇王軍】や【王立高学院特別部隊】を目指していない学生も、【覇王探求部会】には積極的に挑戦したいと思っているようだから、確かに急いだ方がいいだろう。
「失礼します。フロランタン商会の商会長から面会希望です」と、正門の警備員が知らせに来た。
「構わない。遠慮せずに言ってみろ」
先程まで怒りの表情だったマギ公爵が、何故だか嬉しそうに口元を緩めて発言する。
「妹のミルフィーユを、外務大臣にしてはどうでしょうか?」
「王妃を?」
「はい、フィナンシェ様が生き生きと高学院の学院長の仕事をされているので、自分も王妃以外の仕事がしたいと言っています」
私はこれまで、王妃や側室、子供たちまでほったらかしにしてきた。
王族とはそういうものだと思っていたが、それは間違いだったと改心したのは最近だ。
これからはもっと手を差し伸べ、歩み寄ろうと思っていた。
だが、どうやら私の手など必要なかったようだ。
……私はつくづく人を見る目がない。
……手を差し伸べられているのは、私の方ではないか。
◇◇ マキアート副学院長 ◇◇
魔法部部長教授から副学院長に就任してから今日まで、古代魔術具の研究を中心に、充実した日々を過ごしてきた。
だが、初代覇王様が遺してくださった古代魔術具は、まだ半分しか起動できていない。そもそも、何に使う物なのかが不明なのだ。
起動させるために必要な魔石は、王様や大臣たちの協力で当面何とかなりそうだが、一番大きな魔術具には、魔石を設置する箇所さえ見当たらない。
今のメンバーでは、これ以上研究が進みそうにないと苦慮していたが、覇王様が【覇王探求部会】を立ち上げられたことで希望が生まれた。
早速覇王様は、国王と連名で【覇王探求部会】設立と、研究・調査に伴う人材募集の公布を行われた。
その結果、目の前の執務机の上には、自分こそはと部会員に応募してきた者の履歴書が山積みになっている。
……これは嬉しい悲鳴と呼ぶべき事態なのだろうが、頭痛の予感がする。
「恐らくこの履歴書の7割は、爵位を継げない貴族家の子息からだろう。
名誉や褒賞や爵位に欲を出し、あわよくばと考えた無能など面接の必要さえない」
私は履歴書の山を見て、怒りと共に特大の溜め息を吐く。
「どうやら書類選考の後に、筆記試験や技能試験を行う必要があるな」
「副学院長、それでは不平不満の対応に手を取られますよ。
何故私が書類選考で落ちたのかと、納得できない貴族の子息が押し寄せてくるでしょう。
全員に試験を行った方が、後々の面倒が減りますよ」
私の呟きを拾ったシルクーネさんが、非常に現実的な未来を突きつけてくる。
今年の卒業生であり、覇王軍メンバーでもあるシルクーネさんは、覇王軍の仕事の傍ら、私の秘書もしてくれている。
ずっと私の研究室で学んでいた優秀な教え子は、覇王様同様に現実主義だ。
伯爵令嬢でもあるこの教え子は、貴族の思考を良く知っているし、無能には容赦ない。
「あ~っ、アコル様のお茶が飲みたいわ」
履歴書のチェックを始めたシルクーネさんが、不可能だと分かっているものの心からの願望を口にした。
「全くだ。アコル様のお茶は美味しいし、ストレスも緩和されていたからな」
私もつい、ないものねだりをしてしまう。
「副学院長、人手が全く足りません。試験を実施するにも、その知らせを送るにも、事務処理をしてくれる学生が必要です。早く引き抜いてください。
ぼやぼやしていると、他のチームに取られてしまいますよ。弟のラノーブに商学部の優秀な学生を2人推薦させ、上級貴族部からも2人、カイヤさんに至急推薦させましょう」
私もシルクーネさんも、魔法は得意だが事務仕事には自信がない。
優秀な学生で【覇王軍】や【王立高学院特別部隊】を目指していない学生も、【覇王探求部会】には積極的に挑戦したいと思っているようだから、確かに急いだ方がいいだろう。
「失礼します。フロランタン商会の商会長から面会希望です」と、正門の警備員が知らせに来た。
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