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覇王、時々商人

241ー2 再びニルギリ公国へ(3)ー2

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 そこからはもう一方的だった。
 土魔法が得意なマサルーノ先輩は、3人の男が外に出るなり緊急避難用のかまくらに閉じ込めてしまった。

 魔獣の攻撃から身を守るかまくらだ。頑丈で窓も出入口もない。
 役人が来るまで暗闇で大人しくしてもらうのがいいだろう。
 見学人だった者も道行く人たちも、何が起こったのか分からないって顔でかまくらを見ている。

「さあ、これでゆっくりマーガレット商会を見学できますね坊ちゃん」

マサルーノ先輩は魔法陣の書かれた紙をポケットに突っ込みながら、爽やかな笑顔で言った。

 成り行きを茫然と眺めていたマーガレット商会の商会員たちは、慌てて「いらっしゃいませ」と声を出し、俺たちを店内に迎えてくれる。

「助けていただきありがとうございます。また、ご迷惑をお掛けし申し訳ございませんでした。
 私はこの商会の部長でサーパスと申します。ぜひともお礼をしたいので、奥の部屋にご案内してもよろしいでしょうか?」

 そう言って深く頭を下げる壮年の男性は、事務長じゃなくて部長だった。
 他の商会員たちもカウンターや店の奥から出てきて、ありがとうございましたと頭を下げる。

 ……フンフン、さすが老舗の商会だな。簡単に魔法を発動させた俺たちを、貴族だと思ったようだ。

 この国の魔法教育は、コルランドル王国よりはましで、貴族だけではなく平民も受けられる。が、学費が高いので、領主や役場の推薦がなければ入学できない。
 軍に入隊すれば、基本的な初級魔法は教えてもらえる。

 マサルーノ先輩が使った土魔法は、この国のレベルからすると高い方だと思う。
 いとも簡単に、しかも無詠唱で発動する魔法陣なんて、高位貴族以外は使えない……いや、この国では有り得ない魔法だろう。

 
 女性商会員の案内で通された部屋は、派手さはないけど高級な調度品や絵画が上品に配置されていた。きっと貴族や大商会を接客する部屋だろう。
 直ぐにお茶が出されて、少しだけ待っていると、先程の部長さんと商会員とはどこか違う装いの女性が入室してきた。

「この度は、ご迷惑をおかけし申し訳ありませんでした。
 私は当商会の商会長代理を務めるミラリー・マルガレーテルと申します。

 もしも今後お客様に、先程の者たちがご迷惑を掛けることがあれば、どうかマーガレット商会にご一報くださいませ。
 二度と迷惑が掛からぬよう対処いたします」

 髪を結い上げ凛とした表情で話すこの女性が、やたらとダメな男に付きまとわれる不運なミラリーさんか・・・
 アレクシス領のエドガー殿が言っておられた通り、芯の強そうな女性だ。
 まあ、そうでなければ商会長代理は務まらないだろう。

「いえ、あの男たちのことは心配無用です。私たちはこの国の者ではありませんし、明日この国を去りますので、襲われることもないでしょう」

申し訳なさそうに頭を下げるミラリーさんに、マサルーノ先輩は優しく答えた。
 折角だからとお茶に口を付けたところで、男性商会員が緊張した面持ちで入室してきた。

「失礼いたします。ミラリー様、エドガー様とコルランドル王国からのお客様が到着されました」

その男性商会員は、俺たちの対面に座っていたミラリーさんの側まで来て、小声で用件を伝えた。
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