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覇王、時々商人
237ー2 出動準備ー2
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急遽決まった出動に、食料の買い出しが間に合わない学生分も含めて、覇王軍メンバーが手分けして買い物に走る。
緊急時だから馬車を使い、分かり易いように全員が覇王軍の制服を着て出掛ける。
「俺は下級地区、エイトは中級地区でパン屋を回る。ラリエス組は八百屋、ボンテンク組は肉を頼む。
マサルーノ組は商業ギルドとモンブラン商会へ行って、燃料鉱石や薪、ポーションを。シルクーネ組は古着や雑貨を頼む。
今回は学生の数も35人と多い。それと最低でも千人分の被災者用の救済品が必要だ。
俺はワートン領の役人に何も期待していない。救済用の物資が購入してあるなんて思ってもいない」
買い出しに出掛けるメンバーの役割分担し、支払いは後日、商業ギルドを通して【王立高学院特別部隊】が支払うと伝えて、伝票だけ貰うように指示をだす。
最近すっかり買い出しにも慣れたメンバーは、元気に応えて町へと飛び出していった。
俺も下級地区へと警鐘を鳴らしながら、覇王専用馬車を走らせる。
現在王都で、警鐘を鳴らしながら走ることが許されているのは、【覇王軍】と【王立高学院特別部隊】が所有している馬車だけだから、王都民は緊急事態だと分かるので、直ぐに道を空けてくれる。
下級地区の商業ギルド王都支部の前に覇王専用馬車を停めると、多くの住民が何事だろうかと集まってくる。
商業ギルドの職員や緊急時に物資提供することになっている店の主たちは、駆け足で店から出てくる。
「覇王アコルだ。緊急事態なので皆よく聞いてくれ!
ワートン領の領都がドラゴンと魔獣の群に襲撃され、領主屋敷は崩壊、領都は壊滅状態だと知らせが入った。
ワートン公爵は救援も救済も必要ないと言っていたが、私は覇王だ。
領主が腐っていても、被災した民に罪はない。だから【王立高学院特別部隊】は民の救済に向かう!」
馬車から降りた俺は覇王だと名乗り、群衆に向かって大声で用件を伝える。
真剣に俺の話を聞こうとする王都民の姿に、感謝の気持ちで胸が熱くなる。
「私は勇者ラリエスだ! 今回は最低でも千人分の食材や救済品が必要だ!
物資調達協力店は、それぞれの担当者に出せる量を言って準備に掛かってくれ。支払いは商業ギルド経由で行う。
王都の住民には迷惑を掛けるが、どうか協力して欲しい。
古着でも何でもいい。可哀想な子供たちのために、家を失くした民のために救済品を頼む。これから1時間半の間、この場所で受け付ける」
覇王軍の隊服で貴公子ぶりが数段上がったラリエスが、大きな声で皆にお願いすると、若い女性たちから「キャーッ」という黄色い声がたくさんあがった。
「それから、先日はたくさんの寄付をありがとう。
感謝の気持ちでいっぱいだ。皆の暖かい気持ちのお陰で、ワートン領へも行くことができる」
俺は心からの感謝を笑顔で伝えて、ゆっくりと深く頭を下げた。
他の覇王軍メンバーも馬車から降りて、俺と一緒に「ありがとう」と言いながら頭を下げた。
「任せてください覇王様!」「キャー勇者様!」「あたしは古着を持ってきます」「俺は食器を持ってきます!」と、覇王軍を支援する声が広場中から聞こえた。
先日三日間だけ実施した【覇王軍】への寄付は、予想を超えて金貨460枚が集まった。
小さな子供から杖をついたご年配の方まで、11万人を超える支援者で、高学院前の大通りは人で溢れかえった。俺は最終日に2時間だけ顔を出している。
あの時は、商学部の学生の講義時間が、寄付金の集計になってしまったが、全員が大金を目にして大興奮だったと、カモン教授が笑いながら言っていた。
寄付金の受け付けをした【覇王軍】と【王立高学院特別部隊】のメンバーは、「ありがとう」とお礼を何度も言い過ぎて、半数が声を枯らしてしまった。
俺と同様に勇者ラリエスも、王都民から絶大な支持を得ていた。
特に若い女性のファンが多く、毎日何度も銅貨を握り締めて会いに……いや、寄付しに来てくれる女性もいたとか。さすが俺の側近だ。
他のメンバーにも多くのファンができたらしく、町に出る時は身バレするので、隊服では出掛けられないと言っていた。
ファン……と言えば、ちょっと薬草採取に数日出掛けていた間に、とんでもない事態になっており、怒りたいけど怒れず、恥ずかしくて穴を掘りそうになった。
【覇王様と勇者様】という寄付金付き姿絵ハガキが商業ギルドから売り出されており、バカ売れしているという。
……いや、確かにお金は欲しいけど、何だろう・・・釈然としない。
事前の相談も無かったし、許可を出した覚えもないが、人々が求めていれば作って売るのは当たり前だとギルマスとサブギルマスに言われた。
商機を逃さないのが商人の正しい姿勢? いや、儲けたのは商業ギルドだよね?
昨日ちょっとだけ自宅に寄ったが、その姿絵ハガキがリビングに飾ってあるのを見付けてしまった時の、超絶恥ずかしい俺の気持ちが分かるだろうか。
にこにこと嬉しそうに「自慢のお兄ちゃんだよ」って妹弟に言われ、キラキラ輝く無垢な瞳を向けられては、捨てることもできなかったよ。
ああ、【王立高学院特別部隊】へのマジックバッグ付き大口の寄付金(金貨130枚)は、7つの商会や商団から申し込みがあり、3人の貴族からも申し込みがあったので、金貨1300枚が集まった。
こちらは【覇王便り】で告知した通りに、寄付してくれた商会や貴族の名前を、ババーンと商業ギルドの掲示板で発表しておいた。
思っていた通りフロランタン商会は、商会名で一口、準男爵である商会長個人名で一口の、合計二口の寄付をしてくれていた。
先日のドバイン運送に対する嫌がらせや脅しは、やはりフロランタン商会の商会長の差し金だと、ワイコリーム公爵家の諜報部員が調べ上げてくれた。
まあ、寄付金で怒りを抑えることにするが、二度目はないよ。
さて、急いでパン屋に向かわねばと急ぎ足で大通りを南に向かっていると、殺気を孕んだ数人の気配と足音が、少し後方から徐々に近付いてくる。
緊急時だから馬車を使い、分かり易いように全員が覇王軍の制服を着て出掛ける。
「俺は下級地区、エイトは中級地区でパン屋を回る。ラリエス組は八百屋、ボンテンク組は肉を頼む。
マサルーノ組は商業ギルドとモンブラン商会へ行って、燃料鉱石や薪、ポーションを。シルクーネ組は古着や雑貨を頼む。
今回は学生の数も35人と多い。それと最低でも千人分の被災者用の救済品が必要だ。
俺はワートン領の役人に何も期待していない。救済用の物資が購入してあるなんて思ってもいない」
買い出しに出掛けるメンバーの役割分担し、支払いは後日、商業ギルドを通して【王立高学院特別部隊】が支払うと伝えて、伝票だけ貰うように指示をだす。
最近すっかり買い出しにも慣れたメンバーは、元気に応えて町へと飛び出していった。
俺も下級地区へと警鐘を鳴らしながら、覇王専用馬車を走らせる。
現在王都で、警鐘を鳴らしながら走ることが許されているのは、【覇王軍】と【王立高学院特別部隊】が所有している馬車だけだから、王都民は緊急事態だと分かるので、直ぐに道を空けてくれる。
下級地区の商業ギルド王都支部の前に覇王専用馬車を停めると、多くの住民が何事だろうかと集まってくる。
商業ギルドの職員や緊急時に物資提供することになっている店の主たちは、駆け足で店から出てくる。
「覇王アコルだ。緊急事態なので皆よく聞いてくれ!
ワートン領の領都がドラゴンと魔獣の群に襲撃され、領主屋敷は崩壊、領都は壊滅状態だと知らせが入った。
ワートン公爵は救援も救済も必要ないと言っていたが、私は覇王だ。
領主が腐っていても、被災した民に罪はない。だから【王立高学院特別部隊】は民の救済に向かう!」
馬車から降りた俺は覇王だと名乗り、群衆に向かって大声で用件を伝える。
真剣に俺の話を聞こうとする王都民の姿に、感謝の気持ちで胸が熱くなる。
「私は勇者ラリエスだ! 今回は最低でも千人分の食材や救済品が必要だ!
物資調達協力店は、それぞれの担当者に出せる量を言って準備に掛かってくれ。支払いは商業ギルド経由で行う。
王都の住民には迷惑を掛けるが、どうか協力して欲しい。
古着でも何でもいい。可哀想な子供たちのために、家を失くした民のために救済品を頼む。これから1時間半の間、この場所で受け付ける」
覇王軍の隊服で貴公子ぶりが数段上がったラリエスが、大きな声で皆にお願いすると、若い女性たちから「キャーッ」という黄色い声がたくさんあがった。
「それから、先日はたくさんの寄付をありがとう。
感謝の気持ちでいっぱいだ。皆の暖かい気持ちのお陰で、ワートン領へも行くことができる」
俺は心からの感謝を笑顔で伝えて、ゆっくりと深く頭を下げた。
他の覇王軍メンバーも馬車から降りて、俺と一緒に「ありがとう」と言いながら頭を下げた。
「任せてください覇王様!」「キャー勇者様!」「あたしは古着を持ってきます」「俺は食器を持ってきます!」と、覇王軍を支援する声が広場中から聞こえた。
先日三日間だけ実施した【覇王軍】への寄付は、予想を超えて金貨460枚が集まった。
小さな子供から杖をついたご年配の方まで、11万人を超える支援者で、高学院前の大通りは人で溢れかえった。俺は最終日に2時間だけ顔を出している。
あの時は、商学部の学生の講義時間が、寄付金の集計になってしまったが、全員が大金を目にして大興奮だったと、カモン教授が笑いながら言っていた。
寄付金の受け付けをした【覇王軍】と【王立高学院特別部隊】のメンバーは、「ありがとう」とお礼を何度も言い過ぎて、半数が声を枯らしてしまった。
俺と同様に勇者ラリエスも、王都民から絶大な支持を得ていた。
特に若い女性のファンが多く、毎日何度も銅貨を握り締めて会いに……いや、寄付しに来てくれる女性もいたとか。さすが俺の側近だ。
他のメンバーにも多くのファンができたらしく、町に出る時は身バレするので、隊服では出掛けられないと言っていた。
ファン……と言えば、ちょっと薬草採取に数日出掛けていた間に、とんでもない事態になっており、怒りたいけど怒れず、恥ずかしくて穴を掘りそうになった。
【覇王様と勇者様】という寄付金付き姿絵ハガキが商業ギルドから売り出されており、バカ売れしているという。
……いや、確かにお金は欲しいけど、何だろう・・・釈然としない。
事前の相談も無かったし、許可を出した覚えもないが、人々が求めていれば作って売るのは当たり前だとギルマスとサブギルマスに言われた。
商機を逃さないのが商人の正しい姿勢? いや、儲けたのは商業ギルドだよね?
昨日ちょっとだけ自宅に寄ったが、その姿絵ハガキがリビングに飾ってあるのを見付けてしまった時の、超絶恥ずかしい俺の気持ちが分かるだろうか。
にこにこと嬉しそうに「自慢のお兄ちゃんだよ」って妹弟に言われ、キラキラ輝く無垢な瞳を向けられては、捨てることもできなかったよ。
ああ、【王立高学院特別部隊】へのマジックバッグ付き大口の寄付金(金貨130枚)は、7つの商会や商団から申し込みがあり、3人の貴族からも申し込みがあったので、金貨1300枚が集まった。
こちらは【覇王便り】で告知した通りに、寄付してくれた商会や貴族の名前を、ババーンと商業ギルドの掲示板で発表しておいた。
思っていた通りフロランタン商会は、商会名で一口、準男爵である商会長個人名で一口の、合計二口の寄付をしてくれていた。
先日のドバイン運送に対する嫌がらせや脅しは、やはりフロランタン商会の商会長の差し金だと、ワイコリーム公爵家の諜報部員が調べ上げてくれた。
まあ、寄付金で怒りを抑えることにするが、二度目はないよ。
さて、急いでパン屋に向かわねばと急ぎ足で大通りを南に向かっていると、殺気を孕んだ数人の気配と足音が、少し後方から徐々に近付いてくる。
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