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覇王、時々商人
232ー2 入学式の一日ー2
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◇◇ マキアート副学長 ◇◇
覇王様の読み通り、王都民の怒りは王宮へと向けられた。
人々は「覇王様と勇者様をお守りしよう!」とか「国は【覇王軍】や【王立高学院特別部隊】を守れ!」とか、「我らの命は金貨800枚程度か!」と叫びながら行進している。
先日の歩み寄り会議で、本当に腐っているのが誰なのか、何故国がお金を出さないのか、その理由と元凶を私は知った。そして王都民同様に腹が立った。
国王や宰相、財務大臣や副大臣にとって、やはり魔獣の討伐は他人事だった。
優先すべきは何なのか、本当に必要なことは何なのかを、真剣に議論した形跡すらなかった。
彼らは、覇王様と学生が優秀なことに甘え、申し訳ないと思ってはいても、自分たちにもすべきことがあるのではと、声を上げる気概さえなかった。
驚いたことに、それが無責任なことだと気付いていなかった。
この国を命懸けで救おうとしている覇王軍メンバーに感謝もできず、本当のことを指摘されたら怒りの視線を向ける本性を甘く見るな! と仰った覇王様は、歩み寄りなど無駄だと分かっておられたのだ。
この者たちの意識を変えるのは簡単ではないぞと、学院長、トーマス王子、マリード侯爵の認識の甘さを指摘し、王の剣、王の盾になるための覚悟・・・即ち、宰相と財務大臣を排除するという覚悟が、全く足りていないと示されたのだ。
これこそが覇王、これこそが世界を統べる者の慧眼なのだ。
王の目を曇らせ、耳を塞がせ、何もできない王にしたのは宰相と財務大臣であると断言された。
耳が痛いのは私も同じだ。
自分が覇王様側の人間であったことを神に感謝しよう。
そして覇王様の信頼を裏切ることが無いよう、今一度気を引き締めよう。
「失礼します副学院長、お呼びでしょうか?」と、覇王軍総責任者であるボンテンク君が入室してきた。
「覇王様から、新しい【覇王便り】の原稿を預かっている。今日中に印刷して欲しいそうだ。
そうすれば、王都民の行進は半分になるだろうと言われていた」
すっかり覇王軍の責任者として凛々しくなった教え子を見て嬉しく思いながら、急いでモンブラン商会の担当者の所へ行くよう指示を出す。
【 覇 王 便 り 】
これから魔獣との戦いは厳しさを増し、グレードラゴンは間もなく王都を襲撃するだろう。
しかし問題は、多くのケガ人を助けるための薬草やポーションを用意する資金が無くなったことだ。
そこで【王立高学院特別部隊】は、商会や大商団、および貴族の皆さんに寄付をお願いしたい。
もしも金貨130枚以上の寄付をしてくれるなら、冒険者が貸与されているものと同じ大きさ同じ機能のマジックバッグを、返礼品としてプレゼントする。
寄付金は全て、民のための薬草代金と、隊員たちの治療費に充てられる。
寄付金は学院長が受け取り、医療コースの教授が責任を持って管理する。
高額な寄付をし、マジックバッグを受け取った者の名は、商業ギルド前の掲示板で発表される。
また、【覇王軍】への善意の寄付もお願いしたい。
【覇王軍】への寄付金は、個人からのみ受け取るものとし、銅貨1枚から最高金貨1枚までとする。
【覇王軍】への善意の寄付には返礼品も名前の発表もないが、【覇王軍】や【王立高学院特別部隊】メンバーが直接受け取り、感謝の気持ちを伝える。
◆【王立高学院特別部隊】への寄付は、必ず学院長に面会予約をして行うこと。
◆【覇王軍】への寄付は、高学院の正門前で、明日から三日間、午前9時から午後5時まで受け付ける。
「我々は全員、交代で寄付金の受け付けをするってことか……
でも、覇王様と勇者様が居ないと、王都民はガッカリしますよね。
顔の売れてるルフナ王子・エイト君・マサルーノ、シルクーネさん、ノエル様、ミレーヌ様に、笑顔で頑張っていただきましょう」
どれだけの王都民が来るのだろうかと、戦々恐々としている教え子の気持ちは理解できる。
きっと凄い人数が寄付金を持って集まるだろう。警備の者を増やす必要があるな。
王都民が進んで寄付することで、名指しされた王宮の者たちの立場は、ますます悪くなるだろう。
そして王都民たちは、より一層【覇王軍】や【王立高学院特別部隊】を応援する気持ちが強くなるだろう。
「責任者には、執行部副部長になった妹のカイヤを指名します。
そして妖精の皆さんに、危険人物が近付かないよう見張ってもらいましょう。
これで少しは、覇王様のご負担が減ればいいのですが・・・」
ボンテンク君はそう言って、モンブラン商会へ行くため部屋を出ていった。
あとは国王が、出動代金をきちんと払っていない領主に、払えと命令できるかどうかだ。
全く払っていない3つの領以外にも、交通費などの必要経費を払っていないサナへ領やサーシム領も、払わなければ【覇王便り】で名指し公表してやろう。
覇王様の読み通り、王都民の怒りは王宮へと向けられた。
人々は「覇王様と勇者様をお守りしよう!」とか「国は【覇王軍】や【王立高学院特別部隊】を守れ!」とか、「我らの命は金貨800枚程度か!」と叫びながら行進している。
先日の歩み寄り会議で、本当に腐っているのが誰なのか、何故国がお金を出さないのか、その理由と元凶を私は知った。そして王都民同様に腹が立った。
国王や宰相、財務大臣や副大臣にとって、やはり魔獣の討伐は他人事だった。
優先すべきは何なのか、本当に必要なことは何なのかを、真剣に議論した形跡すらなかった。
彼らは、覇王様と学生が優秀なことに甘え、申し訳ないと思ってはいても、自分たちにもすべきことがあるのではと、声を上げる気概さえなかった。
驚いたことに、それが無責任なことだと気付いていなかった。
この国を命懸けで救おうとしている覇王軍メンバーに感謝もできず、本当のことを指摘されたら怒りの視線を向ける本性を甘く見るな! と仰った覇王様は、歩み寄りなど無駄だと分かっておられたのだ。
この者たちの意識を変えるのは簡単ではないぞと、学院長、トーマス王子、マリード侯爵の認識の甘さを指摘し、王の剣、王の盾になるための覚悟・・・即ち、宰相と財務大臣を排除するという覚悟が、全く足りていないと示されたのだ。
これこそが覇王、これこそが世界を統べる者の慧眼なのだ。
王の目を曇らせ、耳を塞がせ、何もできない王にしたのは宰相と財務大臣であると断言された。
耳が痛いのは私も同じだ。
自分が覇王様側の人間であったことを神に感謝しよう。
そして覇王様の信頼を裏切ることが無いよう、今一度気を引き締めよう。
「失礼します副学院長、お呼びでしょうか?」と、覇王軍総責任者であるボンテンク君が入室してきた。
「覇王様から、新しい【覇王便り】の原稿を預かっている。今日中に印刷して欲しいそうだ。
そうすれば、王都民の行進は半分になるだろうと言われていた」
すっかり覇王軍の責任者として凛々しくなった教え子を見て嬉しく思いながら、急いでモンブラン商会の担当者の所へ行くよう指示を出す。
【 覇 王 便 り 】
これから魔獣との戦いは厳しさを増し、グレードラゴンは間もなく王都を襲撃するだろう。
しかし問題は、多くのケガ人を助けるための薬草やポーションを用意する資金が無くなったことだ。
そこで【王立高学院特別部隊】は、商会や大商団、および貴族の皆さんに寄付をお願いしたい。
もしも金貨130枚以上の寄付をしてくれるなら、冒険者が貸与されているものと同じ大きさ同じ機能のマジックバッグを、返礼品としてプレゼントする。
寄付金は全て、民のための薬草代金と、隊員たちの治療費に充てられる。
寄付金は学院長が受け取り、医療コースの教授が責任を持って管理する。
高額な寄付をし、マジックバッグを受け取った者の名は、商業ギルド前の掲示板で発表される。
また、【覇王軍】への善意の寄付もお願いしたい。
【覇王軍】への寄付金は、個人からのみ受け取るものとし、銅貨1枚から最高金貨1枚までとする。
【覇王軍】への善意の寄付には返礼品も名前の発表もないが、【覇王軍】や【王立高学院特別部隊】メンバーが直接受け取り、感謝の気持ちを伝える。
◆【王立高学院特別部隊】への寄付は、必ず学院長に面会予約をして行うこと。
◆【覇王軍】への寄付は、高学院の正門前で、明日から三日間、午前9時から午後5時まで受け付ける。
「我々は全員、交代で寄付金の受け付けをするってことか……
でも、覇王様と勇者様が居ないと、王都民はガッカリしますよね。
顔の売れてるルフナ王子・エイト君・マサルーノ、シルクーネさん、ノエル様、ミレーヌ様に、笑顔で頑張っていただきましょう」
どれだけの王都民が来るのだろうかと、戦々恐々としている教え子の気持ちは理解できる。
きっと凄い人数が寄付金を持って集まるだろう。警備の者を増やす必要があるな。
王都民が進んで寄付することで、名指しされた王宮の者たちの立場は、ますます悪くなるだろう。
そして王都民たちは、より一層【覇王軍】や【王立高学院特別部隊】を応援する気持ちが強くなるだろう。
「責任者には、執行部副部長になった妹のカイヤを指名します。
そして妖精の皆さんに、危険人物が近付かないよう見張ってもらいましょう。
これで少しは、覇王様のご負担が減ればいいのですが・・・」
ボンテンク君はそう言って、モンブラン商会へ行くため部屋を出ていった。
あとは国王が、出動代金をきちんと払っていない領主に、払えと命令できるかどうかだ。
全く払っていない3つの領以外にも、交通費などの必要経費を払っていないサナへ領やサーシム領も、払わなければ【覇王便り】で名指し公表してやろう。
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