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高学院二年目
225ー2 合格発表の日ー2
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人手不足は、王宮だけの問題ではないのだ。
どう考えても事務方の人員が足らないが、秘密保持の観点から誰でもいいという訳にはいかない。
「そう言えば在学生や学生の親から、【覇王軍】や【王立高学院特別部隊】の事務仕事を手伝わせて欲しいと、学院長宛に嘆願書がたくさん届いているらしい。
優秀な学生だったら大歓迎だが、学院長が推薦してこない時点でアウトだ」
俺は完全実力主義を掲げているので、事務の仕事だろうが部隊の仕事だろうが、試験をパスするか主要メンバーが認めなければ受け入れる気はない。
学院長に泣きついている時点で、試験を受けさせる気にもなれない。
「ああ、それ私も内容を確認しましたが、一般貴族部の学生ばかりで、自分はお茶を淹れるのが得意だとか、字が綺麗に書けるとか、我が家が総力を挙げてお支えしますとか、意味不明なものばかりだった」
俺の側近として内容を確認したラリエスが、見ただけで凄く疲れたと言いながら、勘違いもここまで来ると害にしかならないと心配する。
「でもまあ、今年度から執行部は食堂の席も分けられているし、図書館棟の3階へ上がる階段前には、警備員が常駐して立ち入り制限してくれるから、アコル様に取り入るのは難しいさ」
食堂の席を分けるように提案したルフナ王子が、到着した食堂内を見て満足そうに言う。
新しい執行部の席は、教師専用席とされていた食堂の中二階になった。
中二階には、教師の実数の倍のテーブルが設置されており、対立していたヘイズ侯爵派とレイム公爵派の間にパーテーションを置き、区切って使用されていた。
既にヘイズ侯爵派は存在していないので、元のヘイズ侯爵派が使用していた区画を、執行部と覇王軍本部関係者、覇王の執務室関係者が使用することになった。
この中二階は、教師の休憩用にも使用されており、食事時間以外はお茶を飲むこともできる。
執行部席では、女子が3人座って楽しそうに朝食を食べていた。
「それにしても、女性の受験者が多いですわね」と、飛び級で上級貴族部3年に進級したカイヤさん(レイム領・ボンテンク先輩の妹)が驚いたように言う。
「そうみたいねカイヤさん。優秀な後輩なら新聞部に迎えたいわ」と、商学部の卒業資格は取ったけど、普通に2年生に進学したスフレさんも同意する。
「成績優秀な女子に声を掛るため、食べ終わったら、合格成績上位者の名前をチェックしに行くわよ!」
貴族部を飛び級で卒業し、魔法部3年に進学したチェルシーさんの声は、ちょっと楽しそうに弾んでいる。
空いている席に持ってきた朝食トレイを置くと、今年の合格者の話になった。
「今年の貴族部の合格者は、女性の方が多いようです」と、こっそり合格者名簿を先に確認したルフナ王子が教えてくれる。
「頭の痛さが増しそうだな」と、ラリエスは溜息を吐く。
「これまでは、女だから王立高学院を受験する必要などないと考える中級や下級貴族が多かったのですが、もしかしたら覇王様の正妃や側室に……とか、自分の家を陞爵させたいと目論む貴族が欲を出したのですわ」
いつの間に後ろの席にやって来たのか、貴族部を卒業し、魔法部3年になったエイトの姉であるミレーヌ様がフフフと微笑んで、貴族部女子のことはお任せくださいと頼もしいことを言ってくれた。
なんでも、貴族部の部長教授になったフィナンシェ様(ルフナ王子の母)から、1年生の女子が必ず履修するマナーの講義の手伝いをして欲しいと頼まれているらしい。
公爵家の息女であるミレーヌ様なら、講義の助手に適任なんだとか。
魔法部に進級したとはいえ、妖精と契約したミレーヌ様の冒険者ランクは既にBAランクである。
8月の魔術師試験ではB級一般魔術師の資格も取っているので、魔法部の卒業資格もクリアしている。だから実習時間は出席免除になるらしい。
「それでも、女性に学ぶ機会が与えられたことは喜ぶべきことですわ。
合格した貴族部の女性たちは、必死で勉強したのでしょうね、皆さん250点を越えていましたわ。
勉強を頑張りながら【王立高学院特別部隊】に入隊していただきたいですわね」
子爵家令嬢であり、貴族部を飛び級で卒業し、魔法部3年に進級したエリザーテさんは、下級貴族の女性の方が、【王立高学院特別部隊】で活躍してくれる可能性が高いと言う。
優秀な後輩を早く見つけ出し、指導したいと燃えている。
「アコル様、ボンテンクさんとマサルーノさんとシルクーネさんが卒業したので、新年度執行部役員の補充はどうされますか? どなたか推薦者がいますか?
新入生は、アコル様と同じように、クラス対抗戦の後で任命されますか?
それと、代表者はわたくしではなくアコル様の方が良いのではないでしょうか?」
最後に話し掛けてきたのは、貴族部を卒業し魔法部3年に進級されたノエル様だ。
俺としたら、このまま執行部はノエル様にお任せしたい。
でも、【王立高学院特別部隊】も率いているので、負担が大きい気がする。さて、どうしたもんだろうか・・・
ノエル様とミレーヌ様は、それぞれ【王立高学院特別部隊】を率いて救済活動に向かうから、このお二人は外した方がいいだろう。
かと言って、他のメンバーも重責を担っている。
「我々は救援や救済のため学院を留守にすることが多いので、医療コースに進級したトゥーリスさんに部長をお願いし、副部長としてカイヤさんはどうでしょう?
もちろんこれは一つの案です。明日にでも執行部会議を行い、今後のことは全員で意見を出し合って決めましょう」
俺は食べかけたパンを皿の上に戻し、ずっと苦労を掛けているノエル様に、心の中で手を合わせた。
どう考えても事務方の人員が足らないが、秘密保持の観点から誰でもいいという訳にはいかない。
「そう言えば在学生や学生の親から、【覇王軍】や【王立高学院特別部隊】の事務仕事を手伝わせて欲しいと、学院長宛に嘆願書がたくさん届いているらしい。
優秀な学生だったら大歓迎だが、学院長が推薦してこない時点でアウトだ」
俺は完全実力主義を掲げているので、事務の仕事だろうが部隊の仕事だろうが、試験をパスするか主要メンバーが認めなければ受け入れる気はない。
学院長に泣きついている時点で、試験を受けさせる気にもなれない。
「ああ、それ私も内容を確認しましたが、一般貴族部の学生ばかりで、自分はお茶を淹れるのが得意だとか、字が綺麗に書けるとか、我が家が総力を挙げてお支えしますとか、意味不明なものばかりだった」
俺の側近として内容を確認したラリエスが、見ただけで凄く疲れたと言いながら、勘違いもここまで来ると害にしかならないと心配する。
「でもまあ、今年度から執行部は食堂の席も分けられているし、図書館棟の3階へ上がる階段前には、警備員が常駐して立ち入り制限してくれるから、アコル様に取り入るのは難しいさ」
食堂の席を分けるように提案したルフナ王子が、到着した食堂内を見て満足そうに言う。
新しい執行部の席は、教師専用席とされていた食堂の中二階になった。
中二階には、教師の実数の倍のテーブルが設置されており、対立していたヘイズ侯爵派とレイム公爵派の間にパーテーションを置き、区切って使用されていた。
既にヘイズ侯爵派は存在していないので、元のヘイズ侯爵派が使用していた区画を、執行部と覇王軍本部関係者、覇王の執務室関係者が使用することになった。
この中二階は、教師の休憩用にも使用されており、食事時間以外はお茶を飲むこともできる。
執行部席では、女子が3人座って楽しそうに朝食を食べていた。
「それにしても、女性の受験者が多いですわね」と、飛び級で上級貴族部3年に進級したカイヤさん(レイム領・ボンテンク先輩の妹)が驚いたように言う。
「そうみたいねカイヤさん。優秀な後輩なら新聞部に迎えたいわ」と、商学部の卒業資格は取ったけど、普通に2年生に進学したスフレさんも同意する。
「成績優秀な女子に声を掛るため、食べ終わったら、合格成績上位者の名前をチェックしに行くわよ!」
貴族部を飛び級で卒業し、魔法部3年に進学したチェルシーさんの声は、ちょっと楽しそうに弾んでいる。
空いている席に持ってきた朝食トレイを置くと、今年の合格者の話になった。
「今年の貴族部の合格者は、女性の方が多いようです」と、こっそり合格者名簿を先に確認したルフナ王子が教えてくれる。
「頭の痛さが増しそうだな」と、ラリエスは溜息を吐く。
「これまでは、女だから王立高学院を受験する必要などないと考える中級や下級貴族が多かったのですが、もしかしたら覇王様の正妃や側室に……とか、自分の家を陞爵させたいと目論む貴族が欲を出したのですわ」
いつの間に後ろの席にやって来たのか、貴族部を卒業し、魔法部3年になったエイトの姉であるミレーヌ様がフフフと微笑んで、貴族部女子のことはお任せくださいと頼もしいことを言ってくれた。
なんでも、貴族部の部長教授になったフィナンシェ様(ルフナ王子の母)から、1年生の女子が必ず履修するマナーの講義の手伝いをして欲しいと頼まれているらしい。
公爵家の息女であるミレーヌ様なら、講義の助手に適任なんだとか。
魔法部に進級したとはいえ、妖精と契約したミレーヌ様の冒険者ランクは既にBAランクである。
8月の魔術師試験ではB級一般魔術師の資格も取っているので、魔法部の卒業資格もクリアしている。だから実習時間は出席免除になるらしい。
「それでも、女性に学ぶ機会が与えられたことは喜ぶべきことですわ。
合格した貴族部の女性たちは、必死で勉強したのでしょうね、皆さん250点を越えていましたわ。
勉強を頑張りながら【王立高学院特別部隊】に入隊していただきたいですわね」
子爵家令嬢であり、貴族部を飛び級で卒業し、魔法部3年に進級したエリザーテさんは、下級貴族の女性の方が、【王立高学院特別部隊】で活躍してくれる可能性が高いと言う。
優秀な後輩を早く見つけ出し、指導したいと燃えている。
「アコル様、ボンテンクさんとマサルーノさんとシルクーネさんが卒業したので、新年度執行部役員の補充はどうされますか? どなたか推薦者がいますか?
新入生は、アコル様と同じように、クラス対抗戦の後で任命されますか?
それと、代表者はわたくしではなくアコル様の方が良いのではないでしょうか?」
最後に話し掛けてきたのは、貴族部を卒業し魔法部3年に進級されたノエル様だ。
俺としたら、このまま執行部はノエル様にお任せしたい。
でも、【王立高学院特別部隊】も率いているので、負担が大きい気がする。さて、どうしたもんだろうか・・・
ノエル様とミレーヌ様は、それぞれ【王立高学院特別部隊】を率いて救済活動に向かうから、このお二人は外した方がいいだろう。
かと言って、他のメンバーも重責を担っている。
「我々は救援や救済のため学院を留守にすることが多いので、医療コースに進級したトゥーリスさんに部長をお願いし、副部長としてカイヤさんはどうでしょう?
もちろんこれは一つの案です。明日にでも執行部会議を行い、今後のことは全員で意見を出し合って決めましょう」
俺は食べかけたパンを皿の上に戻し、ずっと苦労を掛けているノエル様に、心の中で手を合わせた。
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