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高学院二年目

225ー1 合格発表の日ー1

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 9月に入り、療養中だったラリエスが【覇王軍】に復帰した。
 覇王講座は終了したが、執行部メンバーは相変わらず忙しく動き回っている。

 今日は入学試験の合格発表ということもあり、正門前では増員された警備員が、不正に入場する者を排除するため目を光らせていた。

 緊急時以外は、関係者以外立ち入ることができない決まりの高学院だ。
 だが最近、盗難事件や不法侵入者の捕縛事案が、王立高学院内で発生していた。

 考えられる犯人の目的はいくつかあるが、最も可能性が高いのは入試問題関連だった。
 試験問題を盗んでしまっては、別の問題になってしまうので、何とかして盗み見たり、書き写したりしようと考えたようだ。

 入試関連で捕らえられた者は2人いて、1人は伯爵家らしき屋敷の者から依頼されており、依頼先の家名は侵入した本人も知らなかった。
 もう1人は、試験問題を予想する予想屋と呼ばれている男で、昨年は大きくヤマを外し、今年こそは失敗できないと考え侵入した愚か者だった。

 捕まっていない者もいるため、警備は念には念を入れ、合格発表を見ることができるのは、受験者本人または受験票を持参した代理人のみと限定されている。
 学院長は、覇王を狙った侵入の可能性もあると考えているようだ。 


 なにせ今年度は、受験者の数が予想を大きく超え、例年の2倍以上の志願者が居たのだ。
 その理由の一つが、特務部と商学部の枠が増えたことで、もう一つが、覇王である俺が在学しているからだ。

 貴族部の合格ラインを100点から200点に上げたのに、貴族部の受験者数は群を抜いて多かった。
 懸命に勉強する貴族が増えたとは思えないが、希望者は全員受験できるのだから仕方ない。

 特務部と商学部は、今年から平民の受験枠が拡大されている。
 両方の学部とも、軍・魔法省・冒険者ギルド・教会・商会等の推薦が枠ができたのだ。
 
 ただし、推薦枠が増えたのではなく、一般入試枠だから自力で合格を勝ち取ることが前提だ。
 一般入試で合格すれば、平民の授業料は免除されるが、就職先は国の機関に限定され、最低10年は辞められない。

 一般軍は、兵士と指揮官の数が激減し、存続の危機にあった。
 それなのに今年の特務部の卒業生は、【魔獣討伐専門部隊・軍部】・【覇王軍】・【王立高学院特別部隊一般部】に殆どが就職してしまった。
 来年度のことを考慮し、特務部の入学枠は40人から60人に拡大された。


 また王宮では、無能な役人が大量に自主退職したことや、国防省が機能不全に陥ったことにより、各副大臣から国王に泣きが入った。
 優秀な商学部の卒業生は、王宮より給料も待遇も良い領主屋敷・町役場・商会に獲られてしまい、事務方の人材不足は危機的状況だった。

 王宮に就職した学生は、殆どが上級貴族部の卒業生で、これまでとは異なりきちんとした試験を行ったので、一般貴族部の学生は2割しか合格できなかった。
 その結果、王宮の人材不足をなんとかするため、商学部の入学枠は30人から40人に拡大された。

 因みに、平民の一般入試枠は、特務部が15人、商学部が10人となっている。
 この枠で入学した学生は、寮ではなく家から通学することも可能だ。

 魔法部については、どこの学部からもB級魔術師(一般・作業どちらでも可)の資格を取れば、転部や編入が可能になったため、入学枠は変わっていない。



 合格者の家族の中には、子供を使って覇王に近付こうと画策する者が、一定数いるはずだと学院長から聞き、面倒臭さに溜息が出た。
 もちろん学生の中にも、様々な理由で俺に近付こうとする者が居るはずだから、用心するようにとリーマス王子からラリエスは注意を受けたそうだ。

「受験するのは自由だが、実力のない者は合格できない。勘違いした貴族など、アコル様に近付けるはずもない」と、鼻で笑うのはエイトだ。

「図書館棟の1階にある、新聞部の隣の資料室を空けてもらい覇王軍本部にしたので、卒業したメンバーの居場所もできた。
 図書館棟の入り口に近いから、怪しい動きをすれば窓から外の様子もばっちり見える」

覇王軍本部の開設担当をしていたラリエスが、フフフと不敵に笑う。
 マサルーノとマキアート副学院長が、中からは外の様子がよく見えるが、外からは中の様子が窺えない新しい魔法陣を設置したと、新情報を教えてくれた。

 覇王軍本部の総責任者は、卒業したボンテンクで、副責任者はシルクーネさんだ。
 指揮官でもあるマサルーノは、覇王軍魔法開発責任者として、日頃はトーマス王子が使っていた研究室で研究をしている。

 覇王軍本部の中に新しく本部事務局を作ると言ったら、ワイコリーム公爵が自領の貴族を事務局長(事務長)として用意してくれた。
 なんと事務長はエリザーテさんの2番目の兄で、商学部を卒業しているらしい。まだ会っていないが、名前はエバンで年齢は21歳だ。


 覇王軍は地方専用の第二部隊が稼働し始めたので、定期連絡も必要だし冒険者ギルドとの連携も今まで以上に必要になった。
 そのため冒険者ギルド代表として、王都支部からサブギルマスのダルトンさんと、事務の女性が常駐することになった。

 覇王軍本部は、俺の執務室の倍の広さがあるので、大所帯になっても大丈夫だ。
【覇王軍】【覇王軍第二部隊】【冒険者ギルド連携部】【覇王軍事務局】の4つの部署が同居している状態だが、室内の大半は会議スペースとなっている。

 因みに、俺の御者兼護衛のタルトさんには、【覇王軍第二部隊】の責任者代行として、地方の冒険者ギルドと【覇王軍第二部隊】の隊員との調整をしてもらっている。
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