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高学院二年目

224ー1 絆(5)ー1

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 ◇◇ エイト ◇◇

 ラリエスとコーチャー山脈に向かったところから、俺は執行部メンバーに詳しく状況説明していった。

「ラリエスは、日頃から光のドラゴンと行動を共にするから、籠から落下する可能性を考え、アコル様と一緒に最近新しい魔法陣を考案したと言っていた」

ラリエスが落下する少し前に聞いた話だけどと、悲痛な顔をしてる皆に追加情報を出した。

「落下しても大丈夫な魔法?」と、新しい魔法陣を考えるのが好きなマサルーノ先輩が訊いてきた。

「はい、でも、たった一回しか実験していなかったようです。
 それに・・・実験したのは10メートル程度の高さからで、ラリエスが落下した高さは、100メートルくらいありました。

 俺がもっと気を付けていれば、俺がラリエスの体を支えていれば、ラリエスは落下しなかった。
 俺が・・・俺のせいでラリエスが……」

 俺はまた涙が溢れそうになり、グッと歯を噛み締めた。
 仲間であり婚約者でもあるチェルシー先輩が、俺の背中をそっと優しく撫でてくれる。

「エイト、全ての責任は俺にある。お前のせいじゃない。
 ラリエスは、落下防止魔法をちゃんと発動させていた。
 大量の血を失った原因は、落下直後にビッグベアーに襲われ、背中に傷を負ったからだ」

 声のする方向に皆が視線を向けると、そこにはアコル様が立っておられた。
 その表情は硬く、俺以上に自分を責めておられる感じがして、誰も声が掛けられなかった。

 フーッと大きく息を吐きだされたアコル様は、ご自分の椅子に座られた。
 疲れのせいか顔色が悪い。よく見たら、アコル様の服も血で汚れている。

 どうか休んでくださいとノエル様がお願いされたけど、首を横に振ったアコル様は、ご自分がラリエスを発見した時の状況を、皆に詳しく話してくださった。


 ラリエスは自分の身を魔獣から守るため、緊急避難用のかまくらを作っていた。
 かまくらの中で、魔獣除けの薬を使い、見える範囲のケガをポーションで治療していたらしい。

 その時点までは、冷静な判断と行動がとれていたようだが、ラリエスは一番大きな背中のケガを治療していなかった。

『激しい痛みと出血で感覚が麻痺し、背中の傷に気付かなかった可能性がある。
 契約妖精である私が、もう少しラリエスの側についていたら・・・』

ラリエスの契約妖精トワが、テーブルの上に突然姿を現し、悔しそうに俯く。

『誰のせいでもないわ、トワ。
 悪いのはブラックドラゴンであり、グレードラゴンの群よ。

 それにラリエスなら、きっと全て自分が未熟だったからだと言うと思うわ。
 自分のせいで仲間が苦しむことを、ラリエスは望まないわ。そうでしょう?』

トワの隣に現れたエクレアちゃんが腕組みをして、しっかりしなさいと皆に活を入れた。

 ……確かにラリエスの性格なら、そう言うに違いない。

「それで、ラリエスの容態は、ラリエスは大丈夫なんでしょうかアコル様?」

俺はアコル様に、一番大事な質問をした。

「ポーションでケガは全て完治している。
 しかし、出血量が多すぎた。ポーションでは血液は増やせないから、あとはラリエスの生命力次第だ。
 俺は、俺はラリエスの生命力を信じている!」

エクレアちゃんの言葉の影響か、アコル様は前向きに信じると言って微笑まれた。

「私もラリエスの生命力を信じるぞ」とルフナ王子も同意する。
 皆も「そうだ」「そうですわね」と頷きながら同意する。

「アコル様、ラリエス君の看病はどうされますか? 執行部メンバーが順番で看病するのはどうでしょうか?」

「ノエル様、ラリエスの看病は、ワイコリーム領の者に限定したいと思います」

アコル様はそう仰って、シルクーネ先輩に段取りを頼むと指示を出された。
 俺だって看病したいけど、きっとワイコリーム公爵からの指示もあるのだろう。



 ◇◇ ラリエス ◇◇

 目覚めた私は、そこが自分の高学院寮の部屋なのだど分かり、フーッと安堵の息を吐いた。
 まだ夢の中に居るようでぼんやりするし、全身が怠くて息苦しい。

 少し開いているカーテンに目をやれば、間もなく夜明けが近いのか、薄っすらと明るくなり始めている。
 夜明け前の少しひんやりとした空気が、カーテンを揺らして入ってくる。

 ……ああ、気持ちがいい。

 ……生きていた。生きて戻ってこられた。

 きっとアコル様が、救出してくださったのだろう。
 エリスは大丈夫だっただろか? トワにも心配かけたんだろうな。夜が明けたらトワを呼び出そう。

 体はどうだろう?
 折れていた右足は・・・よし、痛みもないし動く。
 手はどうだろうって、両手を軽く握ってみる。

 ・・・ん? この感触は?って、首を窓とは反対側に向けると、良く知っているグレーに銀色の混じる髪の毛が、自分の肩より少し下に見えた。
 驚いてよく見てみると、俺の右手をアコル様が握っていた。

「えっ、アコル様?」と、私はつい声を出してしまった。
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