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高学院二年目

220ー2 絆(1)ー2

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「グレードラゴンの売却代金の7割は、今回壊滅した村や小さな町の復興に使ってくれ。
 ああ、一応アッサム帝国の宰相か国王に、経緯を報告した方がいいかな?」

「はい覇王様。今回の経緯と、ドラゴンの売却代金は被災地で使うように覇王様の指示が出ていることを、私から国王に必ず伝えます。何から何までありがとうございます」

領主は椅子から立ち上がり、最上級の礼をとって感謝を示した。

「あのー、覇王軍に支払う金額よりも、頂く素材代金の方が高額ですが、本当に宜しいのでしょうか?」

「ドラゴンの売却代金の3割でも、金貨60枚くらいですが?」

役場長とギルマスが、申し訳なさそうな顔をして訊いてきた。
 この町の役場長もギルマスも、本当に善人なのだと思う。うん、いい町だ。


 役場長が金貨30枚を取りに向かっている間に、置いて帰る魔獣をマジックバッグから取り出そうと、解体場に向かっていると、突然ラリエスの契約妖精トワが姿を現した。

『大変ですアコル様! コーチャー山脈でグレードラゴンの群と遭遇し、黒いドラゴンから攻撃を受けたラリエスが、ラリエスがじょ、上空から落下しました。
 エリスも負傷して……なんとかエイトと一緒に退避しました!』

「なんだって! ラリエスが落下した?」と俺はつい叫んでしまった。

「ブラックドラゴンに攻撃された? コーチャー山脈にも生息していたのか!」と、ボンテンクは怒りの声を上げた。

 不安定なトワに落ち着いて状況を話すよう言って、俺はエクレアとユテを呼び出した。

『アコル、直ぐに現場に向かいましょう。もしもラリエスがケガしていたら大変だわ』と、エクレアも心配しながら、トワの肩を優しく撫でている。

『ランドルを直ぐに呼んできます』と言って、ユテは慌てて瞬間移動する。

 のんびりしている時間が無くなった俺たちは、置いていく魔獣を直ぐにギルドの解体場で出した。
 あまりの量に、解体職人もギルド職員も顔が強張っていく。

 ドラゴンを保存し運搬するためのマジックバッグを取り出し、俺と領主とギルマスの3人で血判登録し、ボンテンクのマジックバッグから取り出したグレードラゴンを、新しいマジックバッグに収納し直した。

 今回使ったマジックバッグは、売ったのではなく俺個人が貸し出しした。
 一か月の使用料は金貨5枚、1年間なら割引価格の金貨50枚だと言ったら、ギルマスが喜んで金貨50枚を支払った。

 ランドルが冒険者ギルド前の広場に到着し、俺たちは多くの住民に見送られながら慌ただしく飛び立った。



 目的地はケガをしたエリスが向かったという、ワートン領とヘイズ領の境に在るワルテ湖だ。
 ワルテ湖は、あのアイススネークが生息している湖である。

「ボンテンク、このポーションを使ってエリスの治療を頼む」
「えっ? 私も共に探しに行きます!」
「これは命令だ」

 1分1秒でも早くラリエスを探しに行きたいが、ボンテンクを乗せていると足手まといになる。
 俺だけなら、ランドルの足に取り付けられた籠から落ちても大丈夫だ。たぶん。

 俺とラリエスは、つい先日ある魔法を組み合わせて、高所から落下しても死なない方法を考案した。
 とは言っても、試したのは10メートル程度の高さからであり、その魔法が100メートル以上の高さでも通用するのかは分からない。

 納得できないって顔をしているボンテンクをワルテ湖で降ろし、俺とランドルは急いでラリエスが落下したコーチャー山脈の現場へと向かう。

「トワ、黒いドラゴンは炎の攻撃を仕掛けてきたんだな? 大きさは? 先代の覇王時代に、ブラックドラゴンが居たという記憶は?」

コーチャー山脈が眼前に迫ってきた時、俺はトワにいくつか質問をした。

「はい、まさかグレードラゴンの仲間が、炎を吐くと思っていなかったので油断しました。
 大きさは、グレードラゴンの半分くらいで、グレードラゴンに攻撃しろと命令していた気がします。

 私が産まれた頃は、既に魔獣の大氾濫は終息しており、ブラックドラゴンについての記憶はありません。
 あっ、でも、エリスの母ドラゴンは、光のドラゴンは悪魔の音の影響は受けないから安心だって言ってました」

それがどういう意味なのかその時は分からなかったけど、今ならその話はブラックドラゴンの音の攻撃のことなのだと分かると、トワは懐かしそうに言った。

「トワ、ブラックドラゴンは、魔獣を自分の思うがままに行動をさせることができる。
 先程の町で、ランドルと戦っていた仲間のグレードラゴンを、攻撃して簡単に殺した。

 200頭の魔獣たちは、水も食べ物も与えられず走り続けさせられ、苦しそうに顔を歪めていた。
 俺は初めて、魔獣がかわいそうだと思ったよ」

 ブラックドラゴンは、強敵になりそうだとトワに教えておく。
 エクレアも、あの音の攻撃は妖精にも有効かもしれないと注意する。


 ラリエスが落下したであろう標高1800メール地点より、500メートル下辺りを目指して、山脈の下の方からゆっくりと高度を上げていく。
 双眼鏡で確認すると、2000メール付近を旋回している、2頭のグレードラゴンがいた。

「ランドル、あの2頭、任せてもいいか?」
『任せてアコル。黒いヤツが居ないなら楽勝だよ』

 俺は2頭のグレードラゴンが気付かないギリギリの高さまで行って、ランドルから降りた。 
 
 ……ラリエス、必ず助ける! 諦めずに生きて、必ず生きていろ!
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