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現実と理想
206ー1 混乱と前進(4)ー1
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【覇王軍第二部隊】の情報には、皆さん諸手を挙げ大歓迎してくれた。
「もちろん派遣代金は貰いますよ。【覇王軍第二部隊】の月給は金貨5枚。住居を用意してくれたら負担額は一人金貨3枚でいいです。
【覇王軍】と同じ月給だけど、今の【覇王軍】に救援要請し、日当として一人金貨10枚出すことを思えば安いよね」
喜んでいる領主たちに向かって、エイトが笑顔で金を出せと付け加えた。
俺としたことが、大事な負担金の話を忘れるところだった。ありがとうエイト。
「それでは、これで会議を・・・ああ! 大事なことを言い忘れていました。
これまで2回以上救済や救援に行った領主から、きちんと派遣代を払わせてください覇王様。
第二部隊もできるし、覇王軍に就職する卒業生に支払う給料を考えたら、財政はかなり厳しいです。
新しく【王立高学院特別部隊】に入る学生も増えますから」
会議終了を宣言しかけたラリエスが、大変なことを忘れていたとばかりに、サナへ領やワートン領の副大臣に聴かせるよう、金をとれと俺に進言する。
追加料金を払いたくない者たちは、そそくさと逃げるように席を立つ。
「そうだなラリエス。出動内容を精査して請求する。
でもまあこれから王都で出動する時は、【覇王軍】と【王立高学院特別部隊】に対し、その都度戦いに応じた金額を国に請求する。
例えばドラゴン2頭までなら金貨100枚、3頭なら金貨150枚、最大で金貨300枚という感じで。
かなり格安だけど、タダ働きなんかしないよ」
「王都壊滅で金貨800万枚の損失を負うことを考えたら、安すぎますよ覇王様」と、ボンテンクが不満そうにレイム公爵を見ながら言う。
俺の側近や従者は、商人である俺の影響ですっかり金勘定が得意に、いやいや、命を懸けるために必要な経費や何やらについて、真剣に考えるようになっている。
国王とレイム公爵が「えっ?」って目を丸くして声を漏らした。
俺たちがタダで出動すると、安易に思っていたことがまる分かりだよ!
今、驚いた顔をした者に向かって、俺は【覇気】をお見舞いする。
……あんたたち、今まで何を聞いていたの?
「当然お金のことは覇王便りで公表するよ。
もしも覇王軍が出動しなかったら、国王や大臣たちが覇王軍にお金を払わなかったと分かる。
王都で暮らす民は、自分たちは国に見捨てられたんだと思うだろうね。
一度でも王都民の信用を失ったら、皆は王都を出ていく。貴族は信用を失いこの国は破綻する・・・そのくらい学生だって分かってるんだけどね」
俺は完全無表情で、国王とレイム公爵を脅しておく。
「心配ありません覇王様、王宮で働く者の多くは覇王講座を受けています。
我らが戦わなくても、大臣を含めた彼等が総動員で戦えば、ドラゴンなど討伐できる……と皆さん考えておられるに違いありません」
「ああ、それが本来の正しい姿ですねボンテンク先輩。
国から給金を頂いて働く者は、国民を守って戦うのが本分。我ら学生は、学院で講義を受け、卒業を目指し勉学に励むことが本分ですから」
久し振りに勉強ができますねと、ラリエスが怒りとたっぷりの皮肉を込めて付け加える。
俺たちは学生なんだから、役人や責任を負うべき貴族の代わりに命を懸けて戦うことを、当然のことだなんて思ってない。
だが、学生だとしても、貴族であるなら責任を果たすべきだと俺は常日頃から皆に言ってきた。
それなのにどうだ?
こいつらは未だに他人事のように現実から逃げている。
タダで学生に頼ろうとする。
甘えた考えの、目の前の王や高位貴族が許せない!
「だれもドラゴンから逃げることなんかできない。
戦わず自ら死を選びたい者は、ドラゴンの餌になればいい。
未払金を全ての領地が払わなければ、覇王軍は、これからも上級地区で活動することはないだろう」
俺は戦う気のない者たちに、勝手に死ねと見放すような言葉を投げつけた。
覇気を受け、苦しそうに片膝をつきしゃがんでいる大臣や領主代理たちに、「もう教会はないぞ」と、俺は最後通告をして会議室を出ていく。
そう、王城と高さを競っていた教会の大聖堂はもう無いのだ。
次にドラゴンが飛来したら、真っ先に王城に来るだろう。
ここで前進できない組織なら、この国の未来に期待できない。
俺たちは会議室を出て、覇王時代の魔術具が保管してある宝物庫に向かう。
今日は久し振りにマキアート教授と一緒に、古代の遺産を確認する。
ドラゴン討伐に役に立つ魔術具がないか、起動できる魔術具がないかを調べるのだ。
そして、これまで起動の仕方が分からなかった魔術具を含め、壊れていない魔術具を高学院に移動させる。
崩壊の危険がある王宮に、このまま遺産を置いておくことはできない。
「会議は終わったのですか?」と先に地下宝物庫に来ていたマキアート教授が、吞気な感じで俺に質問する。
「フフ、覇王軍は貧乏ですから、お金をちゃんと払ってくれとお願いしておきました」
「お願い?」って、胡散臭そうな視線を俺に向けてマキアート教授が問う。
絶対に脅しただろう?って顔で俺を見るから、俺は何も言わず微笑んでおく。
「それでどうですか? 起動できそうな物がありましたか?」と俺がマキアート教授に質問していると、賢者妖精のロルフがスゥーッと姿を現した。
「もちろん派遣代金は貰いますよ。【覇王軍第二部隊】の月給は金貨5枚。住居を用意してくれたら負担額は一人金貨3枚でいいです。
【覇王軍】と同じ月給だけど、今の【覇王軍】に救援要請し、日当として一人金貨10枚出すことを思えば安いよね」
喜んでいる領主たちに向かって、エイトが笑顔で金を出せと付け加えた。
俺としたことが、大事な負担金の話を忘れるところだった。ありがとうエイト。
「それでは、これで会議を・・・ああ! 大事なことを言い忘れていました。
これまで2回以上救済や救援に行った領主から、きちんと派遣代を払わせてください覇王様。
第二部隊もできるし、覇王軍に就職する卒業生に支払う給料を考えたら、財政はかなり厳しいです。
新しく【王立高学院特別部隊】に入る学生も増えますから」
会議終了を宣言しかけたラリエスが、大変なことを忘れていたとばかりに、サナへ領やワートン領の副大臣に聴かせるよう、金をとれと俺に進言する。
追加料金を払いたくない者たちは、そそくさと逃げるように席を立つ。
「そうだなラリエス。出動内容を精査して請求する。
でもまあこれから王都で出動する時は、【覇王軍】と【王立高学院特別部隊】に対し、その都度戦いに応じた金額を国に請求する。
例えばドラゴン2頭までなら金貨100枚、3頭なら金貨150枚、最大で金貨300枚という感じで。
かなり格安だけど、タダ働きなんかしないよ」
「王都壊滅で金貨800万枚の損失を負うことを考えたら、安すぎますよ覇王様」と、ボンテンクが不満そうにレイム公爵を見ながら言う。
俺の側近や従者は、商人である俺の影響ですっかり金勘定が得意に、いやいや、命を懸けるために必要な経費や何やらについて、真剣に考えるようになっている。
国王とレイム公爵が「えっ?」って目を丸くして声を漏らした。
俺たちがタダで出動すると、安易に思っていたことがまる分かりだよ!
今、驚いた顔をした者に向かって、俺は【覇気】をお見舞いする。
……あんたたち、今まで何を聞いていたの?
「当然お金のことは覇王便りで公表するよ。
もしも覇王軍が出動しなかったら、国王や大臣たちが覇王軍にお金を払わなかったと分かる。
王都で暮らす民は、自分たちは国に見捨てられたんだと思うだろうね。
一度でも王都民の信用を失ったら、皆は王都を出ていく。貴族は信用を失いこの国は破綻する・・・そのくらい学生だって分かってるんだけどね」
俺は完全無表情で、国王とレイム公爵を脅しておく。
「心配ありません覇王様、王宮で働く者の多くは覇王講座を受けています。
我らが戦わなくても、大臣を含めた彼等が総動員で戦えば、ドラゴンなど討伐できる……と皆さん考えておられるに違いありません」
「ああ、それが本来の正しい姿ですねボンテンク先輩。
国から給金を頂いて働く者は、国民を守って戦うのが本分。我ら学生は、学院で講義を受け、卒業を目指し勉学に励むことが本分ですから」
久し振りに勉強ができますねと、ラリエスが怒りとたっぷりの皮肉を込めて付け加える。
俺たちは学生なんだから、役人や責任を負うべき貴族の代わりに命を懸けて戦うことを、当然のことだなんて思ってない。
だが、学生だとしても、貴族であるなら責任を果たすべきだと俺は常日頃から皆に言ってきた。
それなのにどうだ?
こいつらは未だに他人事のように現実から逃げている。
タダで学生に頼ろうとする。
甘えた考えの、目の前の王や高位貴族が許せない!
「だれもドラゴンから逃げることなんかできない。
戦わず自ら死を選びたい者は、ドラゴンの餌になればいい。
未払金を全ての領地が払わなければ、覇王軍は、これからも上級地区で活動することはないだろう」
俺は戦う気のない者たちに、勝手に死ねと見放すような言葉を投げつけた。
覇気を受け、苦しそうに片膝をつきしゃがんでいる大臣や領主代理たちに、「もう教会はないぞ」と、俺は最後通告をして会議室を出ていく。
そう、王城と高さを競っていた教会の大聖堂はもう無いのだ。
次にドラゴンが飛来したら、真っ先に王城に来るだろう。
ここで前進できない組織なら、この国の未来に期待できない。
俺たちは会議室を出て、覇王時代の魔術具が保管してある宝物庫に向かう。
今日は久し振りにマキアート教授と一緒に、古代の遺産を確認する。
ドラゴン討伐に役に立つ魔術具がないか、起動できる魔術具がないかを調べるのだ。
そして、これまで起動の仕方が分からなかった魔術具を含め、壊れていない魔術具を高学院に移動させる。
崩壊の危険がある王宮に、このまま遺産を置いておくことはできない。
「会議は終わったのですか?」と先に地下宝物庫に来ていたマキアート教授が、吞気な感じで俺に質問する。
「フフ、覇王軍は貧乏ですから、お金をちゃんと払ってくれとお願いしておきました」
「お願い?」って、胡散臭そうな視線を俺に向けてマキアート教授が問う。
絶対に脅しただろう?って顔で俺を見るから、俺は何も言わず微笑んでおく。
「それでどうですか? 起動できそうな物がありましたか?」と俺がマキアート教授に質問していると、賢者妖精のロルフがスゥーッと姿を現した。
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