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現実と理想
205ー1 混乱と前進(3)ー1
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王宮会議室に集合していたのは、国王と各大臣、不在の大臣や領主の代理として副大臣などが5人、役無しの領主が1人。
そして俺たち4人と、高学院から2人。
宰相のサナへ侯爵と法務大臣のマギ公爵は領地に戻らせたし、国務大臣のワートン公爵は、自領から帰ってくる気配さえない。
ワイコリーム公爵は、【魔獣討伐専門部隊】を率いてサナへ領だ。
国王の隣に座るのは弟であり財務大臣のレイム公爵。
本来会議を仕切るのは宰相の仕事だが、サナへ侯爵は当分帰ってこれないだろう。
「それでは、覇王会議を始めます」と、国王の対面に座ったラリエスが議長として第一声を発した。
俺から見て会議用テーブルの右側に、ラリエス、ボンテンク先輩、エイトが座っている。席を1つ開けて、高学院の学院長、リーマス王子が続く。
また1つ席を開けて、役無しのサーシム侯爵、不在である領主(ワイコリーム・マギ・サナへ・ヘイズ・ワートン)の代理が5人。
左側に、国王、レイム公爵、魔法省大臣のマリード侯爵、一般魔法省大臣のトーマス王子、一般軍大臣のハシム殿、建設大臣のログドル王子、防御壁建設大臣のデミル公爵、その他の大臣5人。
俺の側近が上座に座っていることを、不満気に見ている大臣や副大臣もいるが、【覇王軍】にお世話になっている領主や代理たちは、デミル公爵を除いて不満はなさそうだ。
領主の多くは、覇王や【覇王軍】の機嫌を損なうことが、自領の破滅に繋がることを、今年に入ってから嫌という程に思い知らされている。
もしも【覇王軍】が居なかったら、自領の半分は壊滅・・・という目に実際に遭っているのだから。
「先日王都にドラゴンが飛来した。愚か者の単独行動により、教会は多大な被害を受け、王城のシンボルである塔も失った。
今回は幸運にも、これくらいの被害で済んだが、これからは違う。
秋にはドラゴンが大挙して王都や各領を襲うだろう。
その目的は人を食らうため、そして新たな拠点を求めての移動だ。
本当の地獄はこれから始まる。
覇王及び【覇王軍】【王立高学院特別部隊】は、現在マギ領とサナへ領に出動している隊員が戻り次第、王都の守りを固める。
よって以後、各領地への出動はしない!
各領主は、必要な人員を【覇王講座】で学ばせ、自領を守る準備を当然整えているはずだ」
俺はこの場に居る領主や代理に厳しい視線を向けながら、ゆっくりと、分かり易く、聞き漏らすことが無いように通告する。
「それでは、覇王様は地方の住民を見捨てると?」
不服そうに席を立って文句を言ったのは、ワートン領主の代理である国防副大臣だ。
「見捨てる? フン、何を言っているのだ?
覇王軍も王立高学院特別部隊も有料で活動している。
なのに何処の領地も、初回分の料金しか払っていない。完全に赤字だ!
最も出動回数が多かったのはワートン領だが、皆さんは我ら学生に、命の代価である活動費の追加分を払っていない。
支払いもせず文句を言う? 領民を見捨てたのは領主たちだ!
払わないんだから自分の領地は、自分たちで守るのは当然だろう!」
いつまでも学生を頼って、いや、学生をタダ働きさせることを当然だと考え甘えている者たちに、上から目線で文句を言い返すのはボンテンクだ。
この場で学生らしくとか、身分差なんてことを考えていたら何も言えない。
ボンテンクはレイム領の伯爵家の子息だが、財務大臣でもあるレイム公爵の甘い考え方には賛同していない。
この国は覇王や高学院の学生に甘えて、銅貨1枚さえ出していないのだ。
もともと払う気がないから、必要なお金だと認識さえしていないのだろう。
出動回数が2回目になると、旅費交通費は実費で領主に請求しているが、討伐や救済活動の人件費を追加で払えと、俺はあえて言ってこなかった。
……払うのが常識だと俺は思っていたんだ。ずっと待っていたけど、残念ながら俺の常識は通用しなかった。
……よし、領主の多くに2回目以降の出動料金を、踏み倒されたと覇王便りに書いておこう
「皆さんにお尋ねします。魔獣の変異種やドラゴンに襲撃された町に向かうとしたら、皆さんは自分に相応しい日当はいくらだと考えますか?
ドアに近い方から順に即答してください。
これからは本当に討伐に向かうことになりますよ? ご自分の命の値段は金貨1枚ですか? 金貨30枚ですか?」
エイトは立ち上がり、穏やかな笑顔で出席者全員に向かって質問する。
そんなことなど考えてもいなかったという顔をした副大臣や大臣は、エイトが言った即答……とは程遠い時間を掛け、腕組みをしながら考える。
国王の御前で本心を言うべきか、それとも無料だと見栄を張るのか、どう答えるのが正しいのかで迷っているのだ。
そして俺たち4人と、高学院から2人。
宰相のサナへ侯爵と法務大臣のマギ公爵は領地に戻らせたし、国務大臣のワートン公爵は、自領から帰ってくる気配さえない。
ワイコリーム公爵は、【魔獣討伐専門部隊】を率いてサナへ領だ。
国王の隣に座るのは弟であり財務大臣のレイム公爵。
本来会議を仕切るのは宰相の仕事だが、サナへ侯爵は当分帰ってこれないだろう。
「それでは、覇王会議を始めます」と、国王の対面に座ったラリエスが議長として第一声を発した。
俺から見て会議用テーブルの右側に、ラリエス、ボンテンク先輩、エイトが座っている。席を1つ開けて、高学院の学院長、リーマス王子が続く。
また1つ席を開けて、役無しのサーシム侯爵、不在である領主(ワイコリーム・マギ・サナへ・ヘイズ・ワートン)の代理が5人。
左側に、国王、レイム公爵、魔法省大臣のマリード侯爵、一般魔法省大臣のトーマス王子、一般軍大臣のハシム殿、建設大臣のログドル王子、防御壁建設大臣のデミル公爵、その他の大臣5人。
俺の側近が上座に座っていることを、不満気に見ている大臣や副大臣もいるが、【覇王軍】にお世話になっている領主や代理たちは、デミル公爵を除いて不満はなさそうだ。
領主の多くは、覇王や【覇王軍】の機嫌を損なうことが、自領の破滅に繋がることを、今年に入ってから嫌という程に思い知らされている。
もしも【覇王軍】が居なかったら、自領の半分は壊滅・・・という目に実際に遭っているのだから。
「先日王都にドラゴンが飛来した。愚か者の単独行動により、教会は多大な被害を受け、王城のシンボルである塔も失った。
今回は幸運にも、これくらいの被害で済んだが、これからは違う。
秋にはドラゴンが大挙して王都や各領を襲うだろう。
その目的は人を食らうため、そして新たな拠点を求めての移動だ。
本当の地獄はこれから始まる。
覇王及び【覇王軍】【王立高学院特別部隊】は、現在マギ領とサナへ領に出動している隊員が戻り次第、王都の守りを固める。
よって以後、各領地への出動はしない!
各領主は、必要な人員を【覇王講座】で学ばせ、自領を守る準備を当然整えているはずだ」
俺はこの場に居る領主や代理に厳しい視線を向けながら、ゆっくりと、分かり易く、聞き漏らすことが無いように通告する。
「それでは、覇王様は地方の住民を見捨てると?」
不服そうに席を立って文句を言ったのは、ワートン領主の代理である国防副大臣だ。
「見捨てる? フン、何を言っているのだ?
覇王軍も王立高学院特別部隊も有料で活動している。
なのに何処の領地も、初回分の料金しか払っていない。完全に赤字だ!
最も出動回数が多かったのはワートン領だが、皆さんは我ら学生に、命の代価である活動費の追加分を払っていない。
支払いもせず文句を言う? 領民を見捨てたのは領主たちだ!
払わないんだから自分の領地は、自分たちで守るのは当然だろう!」
いつまでも学生を頼って、いや、学生をタダ働きさせることを当然だと考え甘えている者たちに、上から目線で文句を言い返すのはボンテンクだ。
この場で学生らしくとか、身分差なんてことを考えていたら何も言えない。
ボンテンクはレイム領の伯爵家の子息だが、財務大臣でもあるレイム公爵の甘い考え方には賛同していない。
この国は覇王や高学院の学生に甘えて、銅貨1枚さえ出していないのだ。
もともと払う気がないから、必要なお金だと認識さえしていないのだろう。
出動回数が2回目になると、旅費交通費は実費で領主に請求しているが、討伐や救済活動の人件費を追加で払えと、俺はあえて言ってこなかった。
……払うのが常識だと俺は思っていたんだ。ずっと待っていたけど、残念ながら俺の常識は通用しなかった。
……よし、領主の多くに2回目以降の出動料金を、踏み倒されたと覇王便りに書いておこう
「皆さんにお尋ねします。魔獣の変異種やドラゴンに襲撃された町に向かうとしたら、皆さんは自分に相応しい日当はいくらだと考えますか?
ドアに近い方から順に即答してください。
これからは本当に討伐に向かうことになりますよ? ご自分の命の値段は金貨1枚ですか? 金貨30枚ですか?」
エイトは立ち上がり、穏やかな笑顔で出席者全員に向かって質問する。
そんなことなど考えてもいなかったという顔をした副大臣や大臣は、エイトが言った即答……とは程遠い時間を掛け、腕組みをしながら考える。
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