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覇王の改革
195ー2 商会主アコル(9)ー2
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マリードの町は、小高い丘の上に領主屋敷があり、その屋敷を囲むように円形に広がっている。
イメージ的には領都サーシムに似ているが、強い魔獣に襲われる可能性が低いので、町を囲む壁の高さは3メートルと低いが頑丈だ。
入場門に到着すると、タルトさんが馬車で待っていてくれたので、宿まで歩かなくて済んだ。
全員疲労困憊だったので、冒険者ギルドに行くのは明日にして、宿で入浴し食事をとったら、倒れるように眠りについた。
翌朝目覚めると、門番から報告を受けたらしいマリード侯爵の次男が、側近と冒険者ギルドのギルマスを伴い面会を待っていた。
……成る程、覇王専用馬車の効力か・・・
今ではすっかり覇王や覇王軍のことが国内中で周知され、馬車や隊服の紋章は門番である警備隊が必ずチェックしている。
そんな中、タルトさんが隠していた覇王専用馬車の紋章を出して町に入ったので、「覇王様が来られたー!」って、昨晩は大騒ぎになったらしい。
「おはようございます覇王様。ウラルと申します。
昨日兄のハシム(ノエル様の父親)から連絡があり、指示通りに急いで高ランク冒険者を集め、今朝早くミルダの町に向かわせました」
王立高学院特別部隊の顧問でもあり、一般軍大臣でもあるハシム殿の弟ウラル殿が、俺の部屋に来て挨拶をする。
年齢は30代前半だろうか、マリード侯爵によく似ている。
「マリード支部の高ランク冒険者たちは、運良く昨日の夕方、王都の覇王講座から戻ってきました。
どの顔も自信に満ちており、確実に強くなったと言ってました。
必ずや、覇王様の期待に応えてミルダの町を守るでしょう」
冒険者ギルドマリード支部のギルマスは、胸を張って報告してくれる。
覇王講座を受講したサブギルマスが現地に向かったので、ミルダ支部の冒険者と協力して、魔獣討伐に全力を尽くすと約束してくれた。
「火山噴火とそれに伴う魔獣の被害に対応するため、昨日領内の貴族に緊急招集をかけました。
しかし、詳しい被害報告が届いていないので、ミル山の噴火状況と、確認できている被害情報を教えて頂けませんでしょうか」
ウラル殿の要請を聞き、状況説明のため俺たちは宿の食堂に向かった。
護衛であるタルトさんが高級宿を取ってくれたようで、朝食は食堂ではなく別室に用意されていた。
時間がもったいないので、朝食をとりながら昨日の出来事を説明していく。
「えっ、ニルギリ公国側はそんな大惨事になっているのですか?」
「はいウラル殿。ミル山の中間から噴き出た溶岩はなんとかなりそうですが、東側の被害はまだ続くでしょう。
とりあえず、マリード領の東側から逃げ出した100頭の魔獣は、サーシム領内で覇王軍の指揮官であるマサルーノと光のドラゴンが討伐しました」
俺は簡単な地図を描いて被害状況を説明し、この機会に、覇王軍の指揮官である二人の優秀さと、特務部ながら冒険者を指揮できるヤーロン先輩を自慢することにした。
「なんと! 100頭もの大群を光のドラゴンと、たったお一人で?」と、ウラル殿が驚いて叫んだ。
「私はマリード領の貴族ですから、自領のために尽くすのは当然です」と、マサルーノ先輩はちょっと誇らしそうだ。
「それからギルマス、ニルギリ公国のレギル火山に飛来したグレードラゴンを、もう一人の指揮官であるボンテンクが倒しました。
後で持って行きますので解体をお願いします。
ウラル殿、グレードラゴンの素材代金の一部は、マリード領の被災者のためにお使いください」
「「はい?」」
ギルマスとウラル殿は理解できなかったのか、俺たちを異質なものでも見るような顔をして、ついでに首を傾げて困惑している。
説明するより見てもらった方が早いので、朝食後は直ぐに冒険者ギルドへ向かった。
ギルマスの執務室にはマリード領の財務担当者も駆け付けて、これから考えられる被害や対策を具体的に話し合っていく。
ウラル殿には魔獣の大群に襲われて大きな被害を受けた村の、救済活動を急いでもらうよう指示を出した。
マリード領は、日頃から救済活動の訓練をしており、救済品も用意してあるので、担当の役人が迅速に対応を進めているとウラル殿は胸を張った。
……さすが王立高学院特別部隊を率いている、ノエル様のご実家だ。頼もしい。
話し合いが終わって、解体場でグレードラゴンとビッグベアーの変異種を含む、食用になる魔獣10頭をマジックバッグから取り出した。
冒険者とギルド職員は全員、何度も目を擦りながら幻ではないのかと確認している。
その姿にちょっと笑えたが、こんな凶悪な上位種が居たのだと思い至ったギルマスの顔色は悪い。
そうそう、今回の討伐で、ボンテンクとマサルーノ先輩の冒険者ランクは、ASランクに上がった。
上級魔獣を倒したヤーロン先輩も、Aランクに上がった。
そして何時もの如く俺はギルマスとウラル殿を手招きし、目の前の全ての魔獣が収納できる、時間経過が遅いマジックバッグを破格の金貨200枚で売った。
いつもなら冒険者ギルドに売るところだが、買取価格だけで破産しそうな気がする。
ドラゴン素材の売却代金の半分はマリード領に寄付するので、今回は冒険者ギルドマリード支部と、領主にお金を出し合って買ってもらうことにした。
まあドラゴン素材は貴重だし、オークションに出品すれば、金貨400枚以上になるのは間違いないので、覇王軍が半分を取っても、金貨200枚は被災者救済に充てられる。
……俺はどんな時も商人だし、商機は見逃さない。でも、ドラゴンが入る大きさだから、正規料金なら金貨500枚だ。むしろ大盤振る舞いである。
冒険者ギルドでの仕事を終えた俺たちは、ウラル殿を連れて本来の目的地である商業ギルドマリード支部に向かうことにした。
イメージ的には領都サーシムに似ているが、強い魔獣に襲われる可能性が低いので、町を囲む壁の高さは3メートルと低いが頑丈だ。
入場門に到着すると、タルトさんが馬車で待っていてくれたので、宿まで歩かなくて済んだ。
全員疲労困憊だったので、冒険者ギルドに行くのは明日にして、宿で入浴し食事をとったら、倒れるように眠りについた。
翌朝目覚めると、門番から報告を受けたらしいマリード侯爵の次男が、側近と冒険者ギルドのギルマスを伴い面会を待っていた。
……成る程、覇王専用馬車の効力か・・・
今ではすっかり覇王や覇王軍のことが国内中で周知され、馬車や隊服の紋章は門番である警備隊が必ずチェックしている。
そんな中、タルトさんが隠していた覇王専用馬車の紋章を出して町に入ったので、「覇王様が来られたー!」って、昨晩は大騒ぎになったらしい。
「おはようございます覇王様。ウラルと申します。
昨日兄のハシム(ノエル様の父親)から連絡があり、指示通りに急いで高ランク冒険者を集め、今朝早くミルダの町に向かわせました」
王立高学院特別部隊の顧問でもあり、一般軍大臣でもあるハシム殿の弟ウラル殿が、俺の部屋に来て挨拶をする。
年齢は30代前半だろうか、マリード侯爵によく似ている。
「マリード支部の高ランク冒険者たちは、運良く昨日の夕方、王都の覇王講座から戻ってきました。
どの顔も自信に満ちており、確実に強くなったと言ってました。
必ずや、覇王様の期待に応えてミルダの町を守るでしょう」
冒険者ギルドマリード支部のギルマスは、胸を張って報告してくれる。
覇王講座を受講したサブギルマスが現地に向かったので、ミルダ支部の冒険者と協力して、魔獣討伐に全力を尽くすと約束してくれた。
「火山噴火とそれに伴う魔獣の被害に対応するため、昨日領内の貴族に緊急招集をかけました。
しかし、詳しい被害報告が届いていないので、ミル山の噴火状況と、確認できている被害情報を教えて頂けませんでしょうか」
ウラル殿の要請を聞き、状況説明のため俺たちは宿の食堂に向かった。
護衛であるタルトさんが高級宿を取ってくれたようで、朝食は食堂ではなく別室に用意されていた。
時間がもったいないので、朝食をとりながら昨日の出来事を説明していく。
「えっ、ニルギリ公国側はそんな大惨事になっているのですか?」
「はいウラル殿。ミル山の中間から噴き出た溶岩はなんとかなりそうですが、東側の被害はまだ続くでしょう。
とりあえず、マリード領の東側から逃げ出した100頭の魔獣は、サーシム領内で覇王軍の指揮官であるマサルーノと光のドラゴンが討伐しました」
俺は簡単な地図を描いて被害状況を説明し、この機会に、覇王軍の指揮官である二人の優秀さと、特務部ながら冒険者を指揮できるヤーロン先輩を自慢することにした。
「なんと! 100頭もの大群を光のドラゴンと、たったお一人で?」と、ウラル殿が驚いて叫んだ。
「私はマリード領の貴族ですから、自領のために尽くすのは当然です」と、マサルーノ先輩はちょっと誇らしそうだ。
「それからギルマス、ニルギリ公国のレギル火山に飛来したグレードラゴンを、もう一人の指揮官であるボンテンクが倒しました。
後で持って行きますので解体をお願いします。
ウラル殿、グレードラゴンの素材代金の一部は、マリード領の被災者のためにお使いください」
「「はい?」」
ギルマスとウラル殿は理解できなかったのか、俺たちを異質なものでも見るような顔をして、ついでに首を傾げて困惑している。
説明するより見てもらった方が早いので、朝食後は直ぐに冒険者ギルドへ向かった。
ギルマスの執務室にはマリード領の財務担当者も駆け付けて、これから考えられる被害や対策を具体的に話し合っていく。
ウラル殿には魔獣の大群に襲われて大きな被害を受けた村の、救済活動を急いでもらうよう指示を出した。
マリード領は、日頃から救済活動の訓練をしており、救済品も用意してあるので、担当の役人が迅速に対応を進めているとウラル殿は胸を張った。
……さすが王立高学院特別部隊を率いている、ノエル様のご実家だ。頼もしい。
話し合いが終わって、解体場でグレードラゴンとビッグベアーの変異種を含む、食用になる魔獣10頭をマジックバッグから取り出した。
冒険者とギルド職員は全員、何度も目を擦りながら幻ではないのかと確認している。
その姿にちょっと笑えたが、こんな凶悪な上位種が居たのだと思い至ったギルマスの顔色は悪い。
そうそう、今回の討伐で、ボンテンクとマサルーノ先輩の冒険者ランクは、ASランクに上がった。
上級魔獣を倒したヤーロン先輩も、Aランクに上がった。
そして何時もの如く俺はギルマスとウラル殿を手招きし、目の前の全ての魔獣が収納できる、時間経過が遅いマジックバッグを破格の金貨200枚で売った。
いつもなら冒険者ギルドに売るところだが、買取価格だけで破産しそうな気がする。
ドラゴン素材の売却代金の半分はマリード領に寄付するので、今回は冒険者ギルドマリード支部と、領主にお金を出し合って買ってもらうことにした。
まあドラゴン素材は貴重だし、オークションに出品すれば、金貨400枚以上になるのは間違いないので、覇王軍が半分を取っても、金貨200枚は被災者救済に充てられる。
……俺はどんな時も商人だし、商機は見逃さない。でも、ドラゴンが入る大きさだから、正規料金なら金貨500枚だ。むしろ大盤振る舞いである。
冒険者ギルドでの仕事を終えた俺たちは、ウラル殿を連れて本来の目的地である商業ギルドマリード支部に向かうことにした。
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