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戦いの始まり
163ー1 王都の危機(4)ー1
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◇◇ エイト ◇◇
レイム公爵家の馬車ではなく、財務大臣専用馬車から降りてきたレイム公爵は、側近3人を連れていて腰には剣を帯刀していた。
……どうやらレイム公爵も、親父と同じで魔獣討伐する気のようだ。
「学院長が反対した訳ではないマギ公爵。
学生が使う武器や食料や寝泊まりするための布団などを用意するのに時間が掛かった。
用意できたのが30人分で、馬車は国防省や財務部から借りた」
遅れた理由と人数が少ない理由を、レイム公爵は疲れた顔で説明する。
王都を守る為なのだから、国防省が物資を出すはずだし、本来なら一般軍や一般魔法省が動くべき案件だ。何故直ぐに馬車を用意できないんだ!
「ああ、……事前準備は必要だな」と、バツが悪そうに親父は納得する。
……そんな当たり前の準備もせずに、学生を戦場に出せる訳がないだろう!
……救援要請をするなら、必要な物を揃えてからにしろよ!
サナへ侯爵は完全にダメだったけど、レイム公爵も親父と一緒で、事前準備の大切さを何も分かっていなかったようだ。
サーシム領に向かったアコル様たちは大丈夫だろうか?
俺と同じように領主に呆れているんじゃないだろうか・・・
「それより、ケガをしたのか?」
「あぁ、変異種と戦って……逃げられたが」
親父の腕に巻かれた包帯を見て、レイム公爵は心配そうに訊いてきた。
親父の後ろに控えてる側近も、ケガの手当が終わって頭に包帯を巻いていた。
大ケガを負った側近と【魔獣討伐専門部隊】の魔法師2人は、今から王都へと帰される。
親父とワイコリーム公爵が、レイム公爵にこれまでの経緯を説明するようなので、俺たち執行部メンバーは、新しく応援としてやって来た学生たちと合流する。
「領主や大臣こそ、危機管理指導講座で試験を受けさせるべきでしたわ」
「そうですわねミレーヌ様。レイム公爵夫人は優秀でしたのに、残念ですわ」
少し離れた場所で様子を窺っていた姉貴とエリザーテ先輩が、毒舌で話しながら呆れている。
突然救援要請を受けた学生たちも戸惑っているようで、何をしたらいいんだろうかと、マサルーノ先輩やチェルシー先輩に質問している。
【王立高学院特別部隊】に所属していない学生は、まだ野営の練習もしていないし、炊き出しの練習もしていない。
魔法攻撃ができたとしても、それだけで魔獣討伐を団体で行える訳ではない。
「今到着した学生は、後方支援の支援をしてくれ。
死にたくなければ、絶対に単独行動をしたり、前に出て攻撃しないことが大事だ。
指揮官である俺とマサルーノ先輩の指示にだけ従うこと」
「でもエイト君、私たちはレイム公爵様から、日頃の訓練の成果を存分に発揮して欲しいと言われている。レイム公爵が指揮してくださるそうだ」
先月B級作業魔法師に合格した上級貴族家の魔法部3年の先輩が、自分たちだって十分に戦える力があるんだと、不服そうに意見してきた。
他の応援メンバーも頷きながら、自分たちだけいい格好をするなと、俺の指示に不満を漏らす。
「私は別に構わない。
魔獣と戦ったこともない素人の公爵に従って死にたい者は死ねばいい。
同じように簡単に考えて魔獣討伐に挑んだマギ公爵は腕を縫うケガをし、側近は重傷を負って王都に戻される。
【覇王軍】の指揮に従えない者は、レイム公爵の指揮下に入ることを認める」
マサルーノ先輩は、厳しい顔で突き放すように言う。
もしも危なくなっても、【覇王軍】と【王立高学院特別部隊】には、助ける余裕なんてないし、他の場所で戦っている者にまで気を配ることなど不可能だと、マサルーノ先輩は現実を突きつける。
そして、選ぶのはお前たちだと付け加えた。
「俺たちは今朝、100頭の魔獣と3頭の変異種と戦った。変異種1頭は逃げたが、なんとか大ケガをすることなく生き残れた。
それは、全員が指揮官の指示に従い、布陣を崩さず連携して戦ったからだ。
俺の本心を言わせてもらうなら、今回応援に来てくれた皆には、魔獣と戦う様子を安全な場所から学んでもらいたい。
もしも俺たちが危機的状況に陥ったら、その時に参戦してくれると有難い」
【覇王軍】メンバーで特務部2年のヤーロン先輩が、主に特務部の学生を見ながら説得しようとする。
特務部の学生としたら、この機会に活躍して名を上げたいと考えているのだろうが、団体で戦う時はどうすべきなのかを、講義の中でしっかりと学んでいた。
そしてヤーロン先輩は、平民ながら実力を認められて【覇王軍】に入ったエリートだ。
特務部の学生にとっては憧れの存在でもあった。
「そうだな。団体戦において、指揮官の指示に従うことは最も重要なことだ。
俺たち特務部17人は、ヤーロンの指示に従いエイト君の指揮下に入る!」
特務部の学生を纏めていた2年生が、1歩前に出て宣言した。
けれど魔法部の3年生や2年生は納得できないようで、レイム公爵と相談して結論を出すことにした。
「魔法部の応援組は、貴族として自分に責任を持ち選択してくれ!
では手始めに、これから自分で使える魔法陣を、死に物狂いで3枚以上書いてくれ。
もしかしたら、日暮れまでに魔獣の群が襲ってくるかもしれない」
俺は戦闘開始前に、自分の身を守るための魔法陣を書くよう指示を出した。
その前に、詳しい状況を聞いていなかった応援組に、どんな魔獣と戦ったのか、どう倒したのかを説明するため、マジックバッグの中に収納した魔獣を取り出して見せた。
最後に変異種を取り出すと、威勢の良かった魔法部の先輩方の口は重くなった。
午後5時半、今日はもう魔獣は襲来しないだろうと考え、夕食の準備を開始する。
応援組は、レイム公爵が準備した食材を使って、主に特務部の学生が夕食を作る。
肉は干し肉しか準備できなかったようなので、昼に解体した魔獣の肉をお裾分けした。
レイム公爵家の馬車ではなく、財務大臣専用馬車から降りてきたレイム公爵は、側近3人を連れていて腰には剣を帯刀していた。
……どうやらレイム公爵も、親父と同じで魔獣討伐する気のようだ。
「学院長が反対した訳ではないマギ公爵。
学生が使う武器や食料や寝泊まりするための布団などを用意するのに時間が掛かった。
用意できたのが30人分で、馬車は国防省や財務部から借りた」
遅れた理由と人数が少ない理由を、レイム公爵は疲れた顔で説明する。
王都を守る為なのだから、国防省が物資を出すはずだし、本来なら一般軍や一般魔法省が動くべき案件だ。何故直ぐに馬車を用意できないんだ!
「ああ、……事前準備は必要だな」と、バツが悪そうに親父は納得する。
……そんな当たり前の準備もせずに、学生を戦場に出せる訳がないだろう!
……救援要請をするなら、必要な物を揃えてからにしろよ!
サナへ侯爵は完全にダメだったけど、レイム公爵も親父と一緒で、事前準備の大切さを何も分かっていなかったようだ。
サーシム領に向かったアコル様たちは大丈夫だろうか?
俺と同じように領主に呆れているんじゃないだろうか・・・
「それより、ケガをしたのか?」
「あぁ、変異種と戦って……逃げられたが」
親父の腕に巻かれた包帯を見て、レイム公爵は心配そうに訊いてきた。
親父の後ろに控えてる側近も、ケガの手当が終わって頭に包帯を巻いていた。
大ケガを負った側近と【魔獣討伐専門部隊】の魔法師2人は、今から王都へと帰される。
親父とワイコリーム公爵が、レイム公爵にこれまでの経緯を説明するようなので、俺たち執行部メンバーは、新しく応援としてやって来た学生たちと合流する。
「領主や大臣こそ、危機管理指導講座で試験を受けさせるべきでしたわ」
「そうですわねミレーヌ様。レイム公爵夫人は優秀でしたのに、残念ですわ」
少し離れた場所で様子を窺っていた姉貴とエリザーテ先輩が、毒舌で話しながら呆れている。
突然救援要請を受けた学生たちも戸惑っているようで、何をしたらいいんだろうかと、マサルーノ先輩やチェルシー先輩に質問している。
【王立高学院特別部隊】に所属していない学生は、まだ野営の練習もしていないし、炊き出しの練習もしていない。
魔法攻撃ができたとしても、それだけで魔獣討伐を団体で行える訳ではない。
「今到着した学生は、後方支援の支援をしてくれ。
死にたくなければ、絶対に単独行動をしたり、前に出て攻撃しないことが大事だ。
指揮官である俺とマサルーノ先輩の指示にだけ従うこと」
「でもエイト君、私たちはレイム公爵様から、日頃の訓練の成果を存分に発揮して欲しいと言われている。レイム公爵が指揮してくださるそうだ」
先月B級作業魔法師に合格した上級貴族家の魔法部3年の先輩が、自分たちだって十分に戦える力があるんだと、不服そうに意見してきた。
他の応援メンバーも頷きながら、自分たちだけいい格好をするなと、俺の指示に不満を漏らす。
「私は別に構わない。
魔獣と戦ったこともない素人の公爵に従って死にたい者は死ねばいい。
同じように簡単に考えて魔獣討伐に挑んだマギ公爵は腕を縫うケガをし、側近は重傷を負って王都に戻される。
【覇王軍】の指揮に従えない者は、レイム公爵の指揮下に入ることを認める」
マサルーノ先輩は、厳しい顔で突き放すように言う。
もしも危なくなっても、【覇王軍】と【王立高学院特別部隊】には、助ける余裕なんてないし、他の場所で戦っている者にまで気を配ることなど不可能だと、マサルーノ先輩は現実を突きつける。
そして、選ぶのはお前たちだと付け加えた。
「俺たちは今朝、100頭の魔獣と3頭の変異種と戦った。変異種1頭は逃げたが、なんとか大ケガをすることなく生き残れた。
それは、全員が指揮官の指示に従い、布陣を崩さず連携して戦ったからだ。
俺の本心を言わせてもらうなら、今回応援に来てくれた皆には、魔獣と戦う様子を安全な場所から学んでもらいたい。
もしも俺たちが危機的状況に陥ったら、その時に参戦してくれると有難い」
【覇王軍】メンバーで特務部2年のヤーロン先輩が、主に特務部の学生を見ながら説得しようとする。
特務部の学生としたら、この機会に活躍して名を上げたいと考えているのだろうが、団体で戦う時はどうすべきなのかを、講義の中でしっかりと学んでいた。
そしてヤーロン先輩は、平民ながら実力を認められて【覇王軍】に入ったエリートだ。
特務部の学生にとっては憧れの存在でもあった。
「そうだな。団体戦において、指揮官の指示に従うことは最も重要なことだ。
俺たち特務部17人は、ヤーロンの指示に従いエイト君の指揮下に入る!」
特務部の学生を纏めていた2年生が、1歩前に出て宣言した。
けれど魔法部の3年生や2年生は納得できないようで、レイム公爵と相談して結論を出すことにした。
「魔法部の応援組は、貴族として自分に責任を持ち選択してくれ!
では手始めに、これから自分で使える魔法陣を、死に物狂いで3枚以上書いてくれ。
もしかしたら、日暮れまでに魔獣の群が襲ってくるかもしれない」
俺は戦闘開始前に、自分の身を守るための魔法陣を書くよう指示を出した。
その前に、詳しい状況を聞いていなかった応援組に、どんな魔獣と戦ったのか、どう倒したのかを説明するため、マジックバッグの中に収納した魔獣を取り出して見せた。
最後に変異種を取り出すと、威勢の良かった魔法部の先輩方の口は重くなった。
午後5時半、今日はもう魔獣は襲来しないだろうと考え、夕食の準備を開始する。
応援組は、レイム公爵が準備した食材を使って、主に特務部の学生が夕食を作る。
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