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戦いの始まり
161ー2 王都の危機(2)ー2
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「さすが医療班だ。
モスナート教授もトーブル先輩も、魔力切れに気を付けてください。
コリアンダー教授(内科医)、サーシム領は薬草の宝庫です。この機会に、たくさんの薬草を試してください。
お土産に持って帰る薬草の代金は、王様に回せばいいでしょう」
アコル様は医療班を気遣いながら、薬草に関する提案をされた。
「えっ、お土産を持って帰っていいんですか?」
「当然です。魔獣の氾濫は始まったばかりです。有用な薬やポーションを作り出すことは国策ですから。これ、執務机の倍は入りますよ」
アコル様はにっこりと微笑んで、お土産用のマジックバッグをコリアンダー教授に渡している。もちろん時間が経過しないモノだ。
今回アコル様は、【覇王軍】と【王立高学院特別部隊】のメンバーに、魔獣や薬草、救済品やテントなどの必要機材を収納するためのマジックバッグを、たくさん預けている。
アイススネークの変異種の皮で作ったマジックバッグは、残り少なくなっていると思うけど、これから素材はもっと増えるから問題ないのだろう。
「明日から下級役人がたくさん来るそうですから、今後のためにしっかり鍛えておきますわ。
何処の領地も上級役人は役に立ちそうにないので、下級役人や女性、各領地の商業ギルドの職員を中心に、もう一度【危機管理指導講座】を開くのはどうでしょうか?」
ノエル様が真面目な表情で、再び【危機管理指導講座】を開講することを提案された。
確かに今後も救済に向かった領地が、サーシム領のようでは話にならない。
「そうしましょう。今度はもっと強い脅しと褒美が必要ですね。
1位を獲得した領地には、時間経過がない荷馬車サイズのマジックバッグを差し上げましょう。もちろん、販売もしますよ。金貨100枚で」
アコル様は自分は商人だから、どんな時でも商機を逃さないと微笑まれた。
金貨30枚で同じサイズのマジックバッグを買ったメンバーたちは、にこにこ笑いながら「安いのでは?」と言い、モスナート教授は金貨150枚が妥当だと言った。
◇◇ 覇王アコル ◇◇
会議を終えて北地区の被災状況を確認しに行こうかと席を立ったところで、妙な不安感に襲われた。
王都の町が、初めてドラゴンに襲われたと知った時のようだ。
……これは・・・この感覚は何だ?
『アコル、妖精王様から知らせが来たわ。ヘイズ領の魔獣が、王都を襲うって』
突然姿を現したエクレアが、とんでもない情報を話した。
……不思議な感覚は、妖精王様が危機を知らせようとしてくださったからか?
「妖精王様から? 数は? いつ?」
『えっと……数は200頭を超えている……既にヘイズ領の死者は二千人……王都に入るのは三日以内……って聞こえたわ』
「なんだって!」と、その場に居た全員の声が揃った。
三日以内・・・ここから王都に大至急戻ったとして三日は必要だ。
もしも二日後だったら間に合わない・・・
皆も同じことを考えたようで、絶望的な表情をしている。
「ラリエス、ボンテンク、今から王都に取って返す!」
「はいアコル様」と、二人は覚悟を決めた顔をして承知する。
そしてボンテンクは、直ぐに覇王専用馬車を出せるよう準備に向かう。
「ルフナ王子、トーブル先輩、トゥーリス先輩、ゲイルは、サーシム領の役人の動向を確認し、大丈夫だと判断したら明日の午後王都に戻ってください」
「承知しました」と4人が真剣な顔で返事をする。
「レイトル王子、【王立高学院特別部隊】の活動を学びながら、サーシム領の役人に指示をお願いします。ノエル様、あと二日、被災者の救済をお願いします」
「承知しました。責任を持って役人を働かせます。サーシム領が落ち着くまで、私は暫く滞在します」
まさかここまでサーシム領の役人がダメだと思っていなかったレイトル王子は、きりっとした表情で救済活動の指揮を執ると約束してくれた。
「お任せくださいませアコル様。【王立高学院特別部隊】は、覇王様直属の組織です。
誇りに懸け全力で任務を遂行いたします。どうぞ王都民をお守りください」
ノエル様は立ち上がると、いつものように微笑んで礼をとった。
他のメンバーも立ち上がり「王都をお願いいたします」とか「王都をお守りください」と言いながら礼をとる。
来た時と同じように王都の冒険者タルトさんが御者を務めてくれ、馬車はサナへ領ではなく、北西のマギ領に向かって、警鐘を鳴らしながら爆走する。
サーシム領に来る時は、魔獣がサナへ領に向かって溢れている可能性を考えてコースを決めたが、領都サーシムからだと、マギ領の領都を通って王都ダージリンに入った方が、ライバンの森に早く到着できる。
領都マギまでは、普通に急いでも丸一日は必要だが、ギリギリ馬が走れる場所まで進み、野営して夜明け前に出発する。昼前にはマギ領主屋敷の前を通り過ぎた。
これ以上馬に負担を掛けられないので、マギ領の冒険者ギルド龍山支部で馬を替えることにする。
立ち寄った龍山支部で、偶然トーマス王子とブラックカード持ちの赤のダイキリさんと再会した。
俺はブラックカードを出して、馬の交換をサブギルマスに頼み、妖精王様から聞いた王都の危機をギルマスとトーマス王子とダイキリさんに話した。
「なんだとアコル、ヘイズ領に向かった魔獣の大群が王都に向かっている?」
俺の話が信じられなかったのか、ギルマスが大きな声で叫んだ。
「ギルマス、覇王様です。無礼が過ぎます!」と、ラリエスが超不機嫌な顔をして、ギルマスを睨んで抗議した。
すると思い出したように、トーマス王子も含め皆が慌てて礼をとる。
俺はフウッと溜息を吐いて、ラリエスをちらりと睨む。俺の側近は真面目過ぎて融通が利かない。
……ほら、冒険者たちまで慌てて跪いちゃったじゃん。
「ヘイズ領の死者は二千人、明日にでもライバンの森から氾濫した魔獣200頭が王都を襲う」
「・・・・・」
今更隠してもしょうがないし、これから王都に向かう冒険者が居たら危険だから、警告も兼ねて状況説明したら、全員が絶句した。
モスナート教授もトーブル先輩も、魔力切れに気を付けてください。
コリアンダー教授(内科医)、サーシム領は薬草の宝庫です。この機会に、たくさんの薬草を試してください。
お土産に持って帰る薬草の代金は、王様に回せばいいでしょう」
アコル様は医療班を気遣いながら、薬草に関する提案をされた。
「えっ、お土産を持って帰っていいんですか?」
「当然です。魔獣の氾濫は始まったばかりです。有用な薬やポーションを作り出すことは国策ですから。これ、執務机の倍は入りますよ」
アコル様はにっこりと微笑んで、お土産用のマジックバッグをコリアンダー教授に渡している。もちろん時間が経過しないモノだ。
今回アコル様は、【覇王軍】と【王立高学院特別部隊】のメンバーに、魔獣や薬草、救済品やテントなどの必要機材を収納するためのマジックバッグを、たくさん預けている。
アイススネークの変異種の皮で作ったマジックバッグは、残り少なくなっていると思うけど、これから素材はもっと増えるから問題ないのだろう。
「明日から下級役人がたくさん来るそうですから、今後のためにしっかり鍛えておきますわ。
何処の領地も上級役人は役に立ちそうにないので、下級役人や女性、各領地の商業ギルドの職員を中心に、もう一度【危機管理指導講座】を開くのはどうでしょうか?」
ノエル様が真面目な表情で、再び【危機管理指導講座】を開講することを提案された。
確かに今後も救済に向かった領地が、サーシム領のようでは話にならない。
「そうしましょう。今度はもっと強い脅しと褒美が必要ですね。
1位を獲得した領地には、時間経過がない荷馬車サイズのマジックバッグを差し上げましょう。もちろん、販売もしますよ。金貨100枚で」
アコル様は自分は商人だから、どんな時でも商機を逃さないと微笑まれた。
金貨30枚で同じサイズのマジックバッグを買ったメンバーたちは、にこにこ笑いながら「安いのでは?」と言い、モスナート教授は金貨150枚が妥当だと言った。
◇◇ 覇王アコル ◇◇
会議を終えて北地区の被災状況を確認しに行こうかと席を立ったところで、妙な不安感に襲われた。
王都の町が、初めてドラゴンに襲われたと知った時のようだ。
……これは・・・この感覚は何だ?
『アコル、妖精王様から知らせが来たわ。ヘイズ領の魔獣が、王都を襲うって』
突然姿を現したエクレアが、とんでもない情報を話した。
……不思議な感覚は、妖精王様が危機を知らせようとしてくださったからか?
「妖精王様から? 数は? いつ?」
『えっと……数は200頭を超えている……既にヘイズ領の死者は二千人……王都に入るのは三日以内……って聞こえたわ』
「なんだって!」と、その場に居た全員の声が揃った。
三日以内・・・ここから王都に大至急戻ったとして三日は必要だ。
もしも二日後だったら間に合わない・・・
皆も同じことを考えたようで、絶望的な表情をしている。
「ラリエス、ボンテンク、今から王都に取って返す!」
「はいアコル様」と、二人は覚悟を決めた顔をして承知する。
そしてボンテンクは、直ぐに覇王専用馬車を出せるよう準備に向かう。
「ルフナ王子、トーブル先輩、トゥーリス先輩、ゲイルは、サーシム領の役人の動向を確認し、大丈夫だと判断したら明日の午後王都に戻ってください」
「承知しました」と4人が真剣な顔で返事をする。
「レイトル王子、【王立高学院特別部隊】の活動を学びながら、サーシム領の役人に指示をお願いします。ノエル様、あと二日、被災者の救済をお願いします」
「承知しました。責任を持って役人を働かせます。サーシム領が落ち着くまで、私は暫く滞在します」
まさかここまでサーシム領の役人がダメだと思っていなかったレイトル王子は、きりっとした表情で救済活動の指揮を執ると約束してくれた。
「お任せくださいませアコル様。【王立高学院特別部隊】は、覇王様直属の組織です。
誇りに懸け全力で任務を遂行いたします。どうぞ王都民をお守りください」
ノエル様は立ち上がると、いつものように微笑んで礼をとった。
他のメンバーも立ち上がり「王都をお願いいたします」とか「王都をお守りください」と言いながら礼をとる。
来た時と同じように王都の冒険者タルトさんが御者を務めてくれ、馬車はサナへ領ではなく、北西のマギ領に向かって、警鐘を鳴らしながら爆走する。
サーシム領に来る時は、魔獣がサナへ領に向かって溢れている可能性を考えてコースを決めたが、領都サーシムからだと、マギ領の領都を通って王都ダージリンに入った方が、ライバンの森に早く到着できる。
領都マギまでは、普通に急いでも丸一日は必要だが、ギリギリ馬が走れる場所まで進み、野営して夜明け前に出発する。昼前にはマギ領主屋敷の前を通り過ぎた。
これ以上馬に負担を掛けられないので、マギ領の冒険者ギルド龍山支部で馬を替えることにする。
立ち寄った龍山支部で、偶然トーマス王子とブラックカード持ちの赤のダイキリさんと再会した。
俺はブラックカードを出して、馬の交換をサブギルマスに頼み、妖精王様から聞いた王都の危機をギルマスとトーマス王子とダイキリさんに話した。
「なんだとアコル、ヘイズ領に向かった魔獣の大群が王都に向かっている?」
俺の話が信じられなかったのか、ギルマスが大きな声で叫んだ。
「ギルマス、覇王様です。無礼が過ぎます!」と、ラリエスが超不機嫌な顔をして、ギルマスを睨んで抗議した。
すると思い出したように、トーマス王子も含め皆が慌てて礼をとる。
俺はフウッと溜息を吐いて、ラリエスをちらりと睨む。俺の側近は真面目過ぎて融通が利かない。
……ほら、冒険者たちまで慌てて跪いちゃったじゃん。
「ヘイズ領の死者は二千人、明日にでもライバンの森から氾濫した魔獣200頭が王都を襲う」
「・・・・・」
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