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指導者たち
142ー2 魔獣討伐専門部隊(1)ー2
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「アコル様どうされますか? ワイコリーム公爵の後を追われますか?」
「いや、暫く様子をみる。もしかしたら、他の魔獣がこれから襲ってくるかもしれない」
トゥーリス先輩が今後の行動を訊いてきたので、他のメンバーにも聞こえるように答える。
「他の魔獣ですかアコル様?」と、ヤーロン先輩が遠くを警戒しながら問う。
「ヤーロン先輩、俺はビッグホーンが、何かから逃げている気がするんです。
80頭の群が気が狂ったように移動するなんて考えられません。
獰猛な面もありますが、これだけ広い畑に好物の野菜が有るのに、全く食べた形跡がないんです。というか、立ち止まっていません」
俺は首を捻りながら、しっくりこない疑問の原因が何なのかを考える。
「しかし、ライバンの森には上位種は居ないと聞いています」とヤーロン先輩も首を捻る。
「あのー、俺は行商人で、ヘイズ領から今朝この村に到着したんですが、ヘイズ領側のライバンの森の近くの村に寄った時、村人が銀色に輝くタイガーの変異種を見たと言っていました。しかも、2頭です」
40代くらいの行商人の男性が、本当かどうかは分かりませんがと言いながら、最近のライバンの森の噂を教えてくれた。
タイガーの変異種であるレイムや、居るはずのないアースドラゴンがいたとか、見たこともない大きな鳥が飛んでいるのを、多くの村人が目撃していたらしい。
「レイム・・・もしもそうなら、ビッグホーンは逃げるでしょうね」
父さんを殺した変異種の名前を久し振りに聞いて、思わず手に力が入る。
アイツならビッグホーンも食べるだろうし、食欲を満たすためだけじゃなく、ただ自分の強さを示すように狩りを楽しむ習性まである。
……嫌な予感がする。俺の冒険者としての感が危険を察知している。
「ラリエス、トゥーリス、大至急村人全員が避難できる大きさの、かまくらを2つ作れ!
モスナート教授、馬車で来た道を直ぐに戻ってください!
ヤーロンは、やぐらに登って全方向の警戒しろ!」
俺は大声で指示を出し、地面に耳を付けた。
ラリエスとトゥーリス先輩は、緊張した表情で「了解です」と短く応えて、直ぐに土魔法で大きなかまくらを作り始める。
ヤーロン先輩は、倒されずに残っていた村の物見やぐらに急いで登っていく。
馬車の御者は慌てて御者台から飛び降り、モスナート教授を強引に馬車に乗せ、街道を戻っていく。
『アコル、ビッグホーンが戻って来るわ。それに、北から何か来るわ!』
「ああエクレア、足音が近付いてくる。最悪の事態だ。悪いけど、村人をかまくらに入れてくれ」
『了解アコル。任せて』
エクレは可愛い姿を村人の前で現すと、驚いて拝み始めた村人に向かって『私は覇王アコル様の契約妖精エクレアです。村に危険が迫っています。大至急かまくらの中に避難してください。指示に従わないと、大地の実りが無くなりますよ』と、何故か笑顔で脅しをかけた。
どうしたらいいのか分からず呆然としていた村人たちは、はっと我に返ってエクレアの指示に従い始める。
農民にとって妖精は、神にも等しい存在なのだ。
「アコル様ー、北側前方、銀色に光る物体が1頭近付いてきます! そして東側から、ビッグホーンが20頭くらい……その後方に変異種も見えます!」
ヤーロン先輩が、大きな声で叫びながら物見やぐらから降りてくる。
「よし、かまくらの周りに家の瓦礫を置いていけ! 奴らが素通りするよう火を点けるぞ、急げ!」
俺は次の指示を出しながら、レイムと思われる魔獣と対戦するため、北に向かって走り始める。
レイムがビッグホーンと戦うのは喜ばしいが、ビッグホーンはレイムを見たら王都の方角に逃げ出すだろう。それだけは避けねばならない。
……レイムごときに時間はかけられない。素材も無駄にできないな。
そして3分後、俺は銀色に輝く体長5メートル近い化け物と対峙した。
魔力の無駄遣いはできないから、雷撃は使いたくないし、必要ないだろう。
俺は口元を血で濡らしているレイムを睨み付け、チェルシー先輩が得意な電撃魔法の詠唱を始める。
地面に魔法陣が浮かび上がるのと、レイムが俺に向かって跳躍したのは同時くらいで、俺は間一髪で後ろに飛びながら水魔法をレイムに浴びせる。
レイムは思惑通りに魔法陣の上に着地し、電撃魔法に「ぐぎゃー!」と声を上げる。
ほんの一瞬しかレイムの体は痺れないだろう。
たいした効果がないと分かっているが、ほんの一瞬の時間が稼げればそれでいい。
レイムは初めての電撃攻撃によろめき、直ぐに魔法陣から脱出しようとする。
でも俺は、その一瞬を見逃さず、剣を抜いて脇腹に突き刺し、エイト君に教えた【氷剣】の詠唱をする。
残念ながら【氷剣】が発動して全身が凍るまで、多少の時間を要する。
だから俺は剣を突き刺したままで、俊足を使って全速力でその場を離脱する。
当然レイムは俺を噛み殺すため、痺れが残る体を無理矢理動かし巨体で追いかけてくる。
あと一飛びすれば、俺を頭からがぶりとやれると思ったレイムは、勢いよく跳躍した……はずだったが、俺の手前1メートルの場所で、飛び上がった姿勢のままで凍り付き、落下してから絶命した。
水を浴びていたせいか、毛皮についた水が凍って、銀色の毛並みがキラキラと輝く。
今日は、あの薄ら笑いを見ずに済んだ。
氷が解けるのを避けるため、剣を引き抜いて直ぐにマジックバッグに収納した。
そして後ろを振り返ると、仲間がビッグホーンと戦っていた。
ヤーロン先輩は得意のエアーカッターで、サクッと首を落としていく。
トゥーリス先輩は、勢いよく走ってくるビッグホーンの目の前に、新しい魔法陣の紙とアイススネークの変異種の骨の指輪を使って、突然強固な土壁を出現させ、ビッグホーンを激突させている。
そしてラリエスは、同じく新しい魔法陣の紙と指輪を使って、空から剣のように鋭利な石を降らせて、激突し倒れたビッグホーンを仕留めていく。
……見事な連携だけど、容赦ないなぁ。
そしてヤーロン先輩は、残ったビッグホーンの変異種に向かって、新しい魔法陣の紙と指輪を使って、巨大なエアーカッターを放っていく。
魔法陣自体は成功して、巨大なエアーカッターはビッグホーンの変異種の体に突き刺さったが、胴体を真っ二つにはできなかった。
止めを刺したのは、トゥーリス先輩が生み出した魔法陣攻撃だった。
青く高温のこぶし大の炎が二つ、弾丸のように頭を貫いていった。
「いや、暫く様子をみる。もしかしたら、他の魔獣がこれから襲ってくるかもしれない」
トゥーリス先輩が今後の行動を訊いてきたので、他のメンバーにも聞こえるように答える。
「他の魔獣ですかアコル様?」と、ヤーロン先輩が遠くを警戒しながら問う。
「ヤーロン先輩、俺はビッグホーンが、何かから逃げている気がするんです。
80頭の群が気が狂ったように移動するなんて考えられません。
獰猛な面もありますが、これだけ広い畑に好物の野菜が有るのに、全く食べた形跡がないんです。というか、立ち止まっていません」
俺は首を捻りながら、しっくりこない疑問の原因が何なのかを考える。
「しかし、ライバンの森には上位種は居ないと聞いています」とヤーロン先輩も首を捻る。
「あのー、俺は行商人で、ヘイズ領から今朝この村に到着したんですが、ヘイズ領側のライバンの森の近くの村に寄った時、村人が銀色に輝くタイガーの変異種を見たと言っていました。しかも、2頭です」
40代くらいの行商人の男性が、本当かどうかは分かりませんがと言いながら、最近のライバンの森の噂を教えてくれた。
タイガーの変異種であるレイムや、居るはずのないアースドラゴンがいたとか、見たこともない大きな鳥が飛んでいるのを、多くの村人が目撃していたらしい。
「レイム・・・もしもそうなら、ビッグホーンは逃げるでしょうね」
父さんを殺した変異種の名前を久し振りに聞いて、思わず手に力が入る。
アイツならビッグホーンも食べるだろうし、食欲を満たすためだけじゃなく、ただ自分の強さを示すように狩りを楽しむ習性まである。
……嫌な予感がする。俺の冒険者としての感が危険を察知している。
「ラリエス、トゥーリス、大至急村人全員が避難できる大きさの、かまくらを2つ作れ!
モスナート教授、馬車で来た道を直ぐに戻ってください!
ヤーロンは、やぐらに登って全方向の警戒しろ!」
俺は大声で指示を出し、地面に耳を付けた。
ラリエスとトゥーリス先輩は、緊張した表情で「了解です」と短く応えて、直ぐに土魔法で大きなかまくらを作り始める。
ヤーロン先輩は、倒されずに残っていた村の物見やぐらに急いで登っていく。
馬車の御者は慌てて御者台から飛び降り、モスナート教授を強引に馬車に乗せ、街道を戻っていく。
『アコル、ビッグホーンが戻って来るわ。それに、北から何か来るわ!』
「ああエクレア、足音が近付いてくる。最悪の事態だ。悪いけど、村人をかまくらに入れてくれ」
『了解アコル。任せて』
エクレは可愛い姿を村人の前で現すと、驚いて拝み始めた村人に向かって『私は覇王アコル様の契約妖精エクレアです。村に危険が迫っています。大至急かまくらの中に避難してください。指示に従わないと、大地の実りが無くなりますよ』と、何故か笑顔で脅しをかけた。
どうしたらいいのか分からず呆然としていた村人たちは、はっと我に返ってエクレアの指示に従い始める。
農民にとって妖精は、神にも等しい存在なのだ。
「アコル様ー、北側前方、銀色に光る物体が1頭近付いてきます! そして東側から、ビッグホーンが20頭くらい……その後方に変異種も見えます!」
ヤーロン先輩が、大きな声で叫びながら物見やぐらから降りてくる。
「よし、かまくらの周りに家の瓦礫を置いていけ! 奴らが素通りするよう火を点けるぞ、急げ!」
俺は次の指示を出しながら、レイムと思われる魔獣と対戦するため、北に向かって走り始める。
レイムがビッグホーンと戦うのは喜ばしいが、ビッグホーンはレイムを見たら王都の方角に逃げ出すだろう。それだけは避けねばならない。
……レイムごときに時間はかけられない。素材も無駄にできないな。
そして3分後、俺は銀色に輝く体長5メートル近い化け物と対峙した。
魔力の無駄遣いはできないから、雷撃は使いたくないし、必要ないだろう。
俺は口元を血で濡らしているレイムを睨み付け、チェルシー先輩が得意な電撃魔法の詠唱を始める。
地面に魔法陣が浮かび上がるのと、レイムが俺に向かって跳躍したのは同時くらいで、俺は間一髪で後ろに飛びながら水魔法をレイムに浴びせる。
レイムは思惑通りに魔法陣の上に着地し、電撃魔法に「ぐぎゃー!」と声を上げる。
ほんの一瞬しかレイムの体は痺れないだろう。
たいした効果がないと分かっているが、ほんの一瞬の時間が稼げればそれでいい。
レイムは初めての電撃攻撃によろめき、直ぐに魔法陣から脱出しようとする。
でも俺は、その一瞬を見逃さず、剣を抜いて脇腹に突き刺し、エイト君に教えた【氷剣】の詠唱をする。
残念ながら【氷剣】が発動して全身が凍るまで、多少の時間を要する。
だから俺は剣を突き刺したままで、俊足を使って全速力でその場を離脱する。
当然レイムは俺を噛み殺すため、痺れが残る体を無理矢理動かし巨体で追いかけてくる。
あと一飛びすれば、俺を頭からがぶりとやれると思ったレイムは、勢いよく跳躍した……はずだったが、俺の手前1メートルの場所で、飛び上がった姿勢のままで凍り付き、落下してから絶命した。
水を浴びていたせいか、毛皮についた水が凍って、銀色の毛並みがキラキラと輝く。
今日は、あの薄ら笑いを見ずに済んだ。
氷が解けるのを避けるため、剣を引き抜いて直ぐにマジックバッグに収納した。
そして後ろを振り返ると、仲間がビッグホーンと戦っていた。
ヤーロン先輩は得意のエアーカッターで、サクッと首を落としていく。
トゥーリス先輩は、勢いよく走ってくるビッグホーンの目の前に、新しい魔法陣の紙とアイススネークの変異種の骨の指輪を使って、突然強固な土壁を出現させ、ビッグホーンを激突させている。
そしてラリエスは、同じく新しい魔法陣の紙と指輪を使って、空から剣のように鋭利な石を降らせて、激突し倒れたビッグホーンを仕留めていく。
……見事な連携だけど、容赦ないなぁ。
そしてヤーロン先輩は、残ったビッグホーンの変異種に向かって、新しい魔法陣の紙と指輪を使って、巨大なエアーカッターを放っていく。
魔法陣自体は成功して、巨大なエアーカッターはビッグホーンの変異種の体に突き刺さったが、胴体を真っ二つにはできなかった。
止めを刺したのは、トゥーリス先輩が生み出した魔法陣攻撃だった。
青く高温のこぶし大の炎が二つ、弾丸のように頭を貫いていった。
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