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商人魔王
96ー1 商人ですが何か?(3)ー1
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荷馬車は町役場を離れ、モカの町の外科医院に向かっていた。
医院への道案内をかって出てくれたのは、先日副役場長に関する有益な情報をもたらし、西地区の被災者に泣きながら謝罪していたソムラさん26歳だ。
「ソムラさん、行き先を役場長の家に変更してください」
俺はむくりと起き上がると、痛たたと言いながらそう告げた。
「えっ? しかし早く治療をしなければ命に係わるのでは?」
「はい、ですから役場長の家にお願いします。
ここにいらっしゃるのは、第五王子リーマス様で、王立高学院では医療コースに在学され薬師でいらっしゃいます」
いったい何を言い出すんだろうって顔をしているソムラさんに、俺は隣に居るのが王子だと教え、これは命令なのですよという意味を込めてにっこりと笑った。
「へっ、王子様なんですか?」
「はい、副役場長はなにやら勘違いをしているようですが、王立高学院特別部隊は、王子や領主や高位貴族の子女を中心にした組織です。
もちろん平民だって居ますが、高学院のエリート集団なのです」
リーマス王子に視線を向けながら説明するのはボンテンク先輩だ。
「私はこれから、副役場長の手の者に襲われたアコルの治療と、役場長の治療を同時に行うつもりです。
モカの町の混乱を治めるには役場長の存在が必要です。
私は奇跡のポーションを持っているのですが、1本しかありません。
ですから貴重なポーションを無駄にしないため、同時に二人を治療するのです」
リーマス王子は優しい口調で、緊張し硬くなっているソムラさんに、これから役場長を救いに行くのだと教える。
「反撃ですわ。せっかくモカの町の救済に来たのに、悪人が大きな顔をしていては、救える命も救えなくなりますもの。
わたくしたちのリーダーであるアコル君を傷付け、被災者を見捨て、役場長や前のシラミド男爵を亡き者とした罪、きっちりと償わせねばなりません!」
復讐?に燃えているのは、執行部部長のノエル様だ。
俺がわざと斬られたと知らないノエル様は、激おこである。
……これが作戦だったなどと、決して口を滑らせてはならない。
「もう副役場長派の好きにはさせない。安心してくれ」
トゥーリス先輩は力強く誓うように宣言する。
「・・・反撃、・・・副役場長を・・・」
言っていることは理解できているのだが、簡単に現状を受け入れるのが難しいソムラさんだ。
それでも頭を切り替え荷馬車を役場長の家へと向け手綱を握った。
およそ10分後、背中を刺されたのにも拘わらず、きちんと治療を受けたとは思えない様子で弱っていた役場長と対面した。
副役場長は、医者にまで手を回していたのかもしれない。
「役場長、リーマス王子様とサナへ侯爵家三男トゥーリス様が、助けに来てくださいました。副役場長を倒してくださるそうです!」
役場長が横になっている部屋に、役人のソムラさんが興奮しながら入っていき、助けに来ましたと嬉しそうに報告する。
生気を失くし青い顔で横になっていた役場長56歳は、王子と聞き慌てて起き上がろうとする。
でも、熱があるのか息も荒くとても苦しそうだ。
リーマス王子は「そのままでよい」と、優しい声で寝ているよう命令した。
俺は一刻の猶予もないと判断し、ウエストポーチ型マジックバッグの中から、中級ポーション【天の恵み】を1本取り出してリーマス王子に渡す。
自分の背中の傷は確認できないけど、出血もほぼ止まっているので傷は深くないと思う。それでも痛いものは痛い。
ちゃっちゃとポーションを傷にかけて治し、役場で決着をつけなきゃいけない。
上着を脱ぎながら「俺も副役場長と住民管理部長の手下に斬られたんですよ」と言って、役場長の隣で横になる。
「これは【天の恵み】というポーションです。必ず治るので私を信じてください」と、リーマス王子は優しい声で安心させる。
そしてリーマス王子は、ポーションを慎重に傷口へと振り掛けていく。
「信じられない! これが幻の天の恵み……傷が完全に塞がっている」
治療というかポーションをかける一部始終を見ていたトゥーリス先輩は、完全に治った傷口を見て驚き、何度も首を横に振っている。
「さすがリーマス王子とアコル君ですわ。天の恵みを復活させたという噂は本当だったのですね」
何処から仕入れた情報なのか、ノエル様は素晴らしいですわと言いながら、俺とリーマス王子に熱い視線を向けてくる。
素晴らしいのはノエル様の情報収集力です。
「これって、買ったらいくらだアコル?」と訊くのはボンテンク先輩だ。
「原価は金貨5枚だったかな」と、俺はシャツを着ながら値段を答え、「ありがとうございましたリーマス王子」と笑顔で礼を言った。
役場長も涙を流しながら「この御恩は忘れません。必ず金貨5枚払います」と頭を下げている。
「いいや、お金は要らない。恩を感じていただけるのなら、その分、役場の立て直しに尽力してください」
今日のリーマス王子は、一皮むけた感じで堂々としている。
ポーションで命を救えたのが本当に嬉しいみたいだ。
表向きには、ポーションを提供したのはリーマス王子だし、副役場長派に正義の鉄槌を下すのはトゥーリス先輩の役目になっている。
……リーマス王子もトゥーリス先輩も、自分に自信を持てたみたいだ。うんうん良かった。
医院への道案内をかって出てくれたのは、先日副役場長に関する有益な情報をもたらし、西地区の被災者に泣きながら謝罪していたソムラさん26歳だ。
「ソムラさん、行き先を役場長の家に変更してください」
俺はむくりと起き上がると、痛たたと言いながらそう告げた。
「えっ? しかし早く治療をしなければ命に係わるのでは?」
「はい、ですから役場長の家にお願いします。
ここにいらっしゃるのは、第五王子リーマス様で、王立高学院では医療コースに在学され薬師でいらっしゃいます」
いったい何を言い出すんだろうって顔をしているソムラさんに、俺は隣に居るのが王子だと教え、これは命令なのですよという意味を込めてにっこりと笑った。
「へっ、王子様なんですか?」
「はい、副役場長はなにやら勘違いをしているようですが、王立高学院特別部隊は、王子や領主や高位貴族の子女を中心にした組織です。
もちろん平民だって居ますが、高学院のエリート集団なのです」
リーマス王子に視線を向けながら説明するのはボンテンク先輩だ。
「私はこれから、副役場長の手の者に襲われたアコルの治療と、役場長の治療を同時に行うつもりです。
モカの町の混乱を治めるには役場長の存在が必要です。
私は奇跡のポーションを持っているのですが、1本しかありません。
ですから貴重なポーションを無駄にしないため、同時に二人を治療するのです」
リーマス王子は優しい口調で、緊張し硬くなっているソムラさんに、これから役場長を救いに行くのだと教える。
「反撃ですわ。せっかくモカの町の救済に来たのに、悪人が大きな顔をしていては、救える命も救えなくなりますもの。
わたくしたちのリーダーであるアコル君を傷付け、被災者を見捨て、役場長や前のシラミド男爵を亡き者とした罪、きっちりと償わせねばなりません!」
復讐?に燃えているのは、執行部部長のノエル様だ。
俺がわざと斬られたと知らないノエル様は、激おこである。
……これが作戦だったなどと、決して口を滑らせてはならない。
「もう副役場長派の好きにはさせない。安心してくれ」
トゥーリス先輩は力強く誓うように宣言する。
「・・・反撃、・・・副役場長を・・・」
言っていることは理解できているのだが、簡単に現状を受け入れるのが難しいソムラさんだ。
それでも頭を切り替え荷馬車を役場長の家へと向け手綱を握った。
およそ10分後、背中を刺されたのにも拘わらず、きちんと治療を受けたとは思えない様子で弱っていた役場長と対面した。
副役場長は、医者にまで手を回していたのかもしれない。
「役場長、リーマス王子様とサナへ侯爵家三男トゥーリス様が、助けに来てくださいました。副役場長を倒してくださるそうです!」
役場長が横になっている部屋に、役人のソムラさんが興奮しながら入っていき、助けに来ましたと嬉しそうに報告する。
生気を失くし青い顔で横になっていた役場長56歳は、王子と聞き慌てて起き上がろうとする。
でも、熱があるのか息も荒くとても苦しそうだ。
リーマス王子は「そのままでよい」と、優しい声で寝ているよう命令した。
俺は一刻の猶予もないと判断し、ウエストポーチ型マジックバッグの中から、中級ポーション【天の恵み】を1本取り出してリーマス王子に渡す。
自分の背中の傷は確認できないけど、出血もほぼ止まっているので傷は深くないと思う。それでも痛いものは痛い。
ちゃっちゃとポーションを傷にかけて治し、役場で決着をつけなきゃいけない。
上着を脱ぎながら「俺も副役場長と住民管理部長の手下に斬られたんですよ」と言って、役場長の隣で横になる。
「これは【天の恵み】というポーションです。必ず治るので私を信じてください」と、リーマス王子は優しい声で安心させる。
そしてリーマス王子は、ポーションを慎重に傷口へと振り掛けていく。
「信じられない! これが幻の天の恵み……傷が完全に塞がっている」
治療というかポーションをかける一部始終を見ていたトゥーリス先輩は、完全に治った傷口を見て驚き、何度も首を横に振っている。
「さすがリーマス王子とアコル君ですわ。天の恵みを復活させたという噂は本当だったのですね」
何処から仕入れた情報なのか、ノエル様は素晴らしいですわと言いながら、俺とリーマス王子に熱い視線を向けてくる。
素晴らしいのはノエル様の情報収集力です。
「これって、買ったらいくらだアコル?」と訊くのはボンテンク先輩だ。
「原価は金貨5枚だったかな」と、俺はシャツを着ながら値段を答え、「ありがとうございましたリーマス王子」と笑顔で礼を言った。
役場長も涙を流しながら「この御恩は忘れません。必ず金貨5枚払います」と頭を下げている。
「いいや、お金は要らない。恩を感じていただけるのなら、その分、役場の立て直しに尽力してください」
今日のリーマス王子は、一皮むけた感じで堂々としている。
ポーションで命を救えたのが本当に嬉しいみたいだ。
表向きには、ポーションを提供したのはリーマス王子だし、副役場長派に正義の鉄槌を下すのはトゥーリス先輩の役目になっている。
……リーマス王子もトゥーリス先輩も、自分に自信を持てたみたいだ。うんうん良かった。
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