76 / 709
高学院 1年生
52ー1 アコル、喧嘩を売る(3)ー1
しおりを挟む
冒険者ギルドで今後の予定を大雑把に告げ、半信半疑ながらも俺を覇王だと認めたギルマスとダルトンさんに、明日にでも王立高学院に来てもらうようお願いした。
ドラゴンの件で大騒ぎになっているギルドの職員の皆さんに、スープと大量のパンを差し入れして泣かれ、【ドラゴンの件は王宮からの正式発表があるまで、何も答えられない】と書いた紙を、正面入り口に貼り出すよう提案し受付の皆さんにも泣かれた。
冒険者ギルドに来る途中の下級地区の人々には、まだドラゴンからの襲撃は伝わっていない様子だったけど、高学院に帰る途中の様子では、どんどん噂が広がりつつあるようだった。
それは中級地区に入ってからの方が顕著に表れていて、大商会や大商団は急遽店を閉め、多くの住民や商人たちが情報収集をしようと、商業ギルド本部や警備隊本部に詰め掛けていた。
俺はモンブラン商会本店に立ち寄り、会頭の執務室で冒険者ギルドで得た情報を伝え、お願い事をする。
「ということで、本店と支店の中庭に、商品と従業員全員が避難できる地下室を早急に造ってください。
土魔法が得意な魔術師を魔術師ギルドから雇うことをお勧めします。
魔術師ギルドの信用が失墜している今なら、お安く工事していただけると思います。
他の商会も地下室を作り始めたら値段が高騰しますので、今から直ぐに使いを送り契約を済ませてください。魔術師も、作業的な仕事ならキチンとするでしょう」
「相変わらず魔術師に対して容赦ないなアコル。分かった。大至急地下室を造ろう。セージ部長、使いを出してくれ」
会頭は直ぐに、魔術師ギルドに依頼することを了承してくれた。
セージ部長は急いで警備隊長に伝え、直ぐに戻ってきた。
「ああそれから、一つお願いがあります。
これから私は、高学院の学生を使ってドラゴンに襲撃された町の救済に向かう予定です。その時に、炊き出しをしようと思うのですが、材料費をモンブラン商会から出して欲しいのです。
もちろん被災者の皆さんには、モンブラン商会からの救済だと説明します。
私はモンブラン商会の名声を、貴族だけではなく庶民にも広めていきたいと思います。
どんな高価な商品より、一杯の暖かいスープの方が有り難いと思う時があります。そして人は、美味しい食べ物を与えてくれた恩人のことは忘れないものです」
俺はその場で必要な調理器具や材料などの経費を概算し、モンブラン商会には王宮からではなく学院長から感謝状を出してもらう約束をした。
これは学院への寄付金とは違い、高学院の崇高なるボランティア精神を応援する援助であり、感謝状を店先に掲示することにより、他の商会や商団にも追随させることを目的とする。
また、高学院の崇高なる活動を援助していると公言することで、高学院も救済活動をせざるを得ない状況に持っていける。
災害が起きた時に、直ぐに救いの手を差し伸べた高学院とモンブラン商会の行いが、王都民にとっての試金石になるだろうと説明した。
「被災者を救済する? 高学院がそんなことをしてくれるのかアコル?」
「もちろん、誰もそんなことをしたいなんて思っていませんよ会頭。
ですから、高学院に居る王族を脅します。
このままでは、ドラゴンや魔獣に襲われても王族や貴族は何もしてくれないと、住民は怒りや不満の感情を抱き、不安になった王都民は混乱し治安が悪化しますが、よろしいのでしょうかと」
「ちょ、ちょっと待てアコル。王族を脅す?」
マルク人事部長は信じられないって顔を俺に向ける。
「いくらなんでもそれはやり過ぎだぞ」と会頭が心配して注意する。
「脅したところで、高学院の学生たちが協力するとは思えないが?」
副会頭は冷静だ。そんなこと無理だろうと言う。
本気で心配そうに俺を見る三人は、冒険者ギルドの二人と同じように、高学院で何かあったのか?とか、不敬罪で処罰されるからやめておけと注意する。
「でも、もしもこれから、度々ドラゴンが襲撃してきたら、誰かがやらないといけないことでしょう?
今の王族や貴族・・・いえ、腐った役人たちに期待するのは無駄ですよ。
フフ、何のために高学院に王立という文字がついているのです?
王立高学院は国営ですから、使える人材は使わないと。しかもタダです。
人件費タダ。そして救済活動は勉強の一環として行える、素晴らしい講義のひとつです」
「うわー、アコルが悪い商人の顔になってる」
「人聞きの悪いことを言わないでくださいセージ部長。私は商学部の学生、利益にならないことはしませんよ」
「いやいや問題はそこじゃないだろう! 王族を脅すなんて、いくら学院長やトーマス王子でも、賛同してくれるとは思えないぞ」
「大丈夫です副会頭。もう散々脅していますから。
それに、今はまだ言えませんが、学院長やトーマス王子でも、私を不敬罪にはできない理由があるんです」
俺はそう言ってにっこりと微笑んだけど、皆の心配そうな表情は変わらない。
このメンバーには、まだ自分の本当の身分は言えない。
俺はまだ、モンブラン商会のアコルでいたいから。
帰る前に、モンブラン商会の刻印が入った小袋を10枚ばかり頂いて、買った材料などはセージ部長のマジックバッグに収納しておいて欲しいと頼んだ。
ドラゴンの件で大騒ぎになっているギルドの職員の皆さんに、スープと大量のパンを差し入れして泣かれ、【ドラゴンの件は王宮からの正式発表があるまで、何も答えられない】と書いた紙を、正面入り口に貼り出すよう提案し受付の皆さんにも泣かれた。
冒険者ギルドに来る途中の下級地区の人々には、まだドラゴンからの襲撃は伝わっていない様子だったけど、高学院に帰る途中の様子では、どんどん噂が広がりつつあるようだった。
それは中級地区に入ってからの方が顕著に表れていて、大商会や大商団は急遽店を閉め、多くの住民や商人たちが情報収集をしようと、商業ギルド本部や警備隊本部に詰め掛けていた。
俺はモンブラン商会本店に立ち寄り、会頭の執務室で冒険者ギルドで得た情報を伝え、お願い事をする。
「ということで、本店と支店の中庭に、商品と従業員全員が避難できる地下室を早急に造ってください。
土魔法が得意な魔術師を魔術師ギルドから雇うことをお勧めします。
魔術師ギルドの信用が失墜している今なら、お安く工事していただけると思います。
他の商会も地下室を作り始めたら値段が高騰しますので、今から直ぐに使いを送り契約を済ませてください。魔術師も、作業的な仕事ならキチンとするでしょう」
「相変わらず魔術師に対して容赦ないなアコル。分かった。大至急地下室を造ろう。セージ部長、使いを出してくれ」
会頭は直ぐに、魔術師ギルドに依頼することを了承してくれた。
セージ部長は急いで警備隊長に伝え、直ぐに戻ってきた。
「ああそれから、一つお願いがあります。
これから私は、高学院の学生を使ってドラゴンに襲撃された町の救済に向かう予定です。その時に、炊き出しをしようと思うのですが、材料費をモンブラン商会から出して欲しいのです。
もちろん被災者の皆さんには、モンブラン商会からの救済だと説明します。
私はモンブラン商会の名声を、貴族だけではなく庶民にも広めていきたいと思います。
どんな高価な商品より、一杯の暖かいスープの方が有り難いと思う時があります。そして人は、美味しい食べ物を与えてくれた恩人のことは忘れないものです」
俺はその場で必要な調理器具や材料などの経費を概算し、モンブラン商会には王宮からではなく学院長から感謝状を出してもらう約束をした。
これは学院への寄付金とは違い、高学院の崇高なるボランティア精神を応援する援助であり、感謝状を店先に掲示することにより、他の商会や商団にも追随させることを目的とする。
また、高学院の崇高なる活動を援助していると公言することで、高学院も救済活動をせざるを得ない状況に持っていける。
災害が起きた時に、直ぐに救いの手を差し伸べた高学院とモンブラン商会の行いが、王都民にとっての試金石になるだろうと説明した。
「被災者を救済する? 高学院がそんなことをしてくれるのかアコル?」
「もちろん、誰もそんなことをしたいなんて思っていませんよ会頭。
ですから、高学院に居る王族を脅します。
このままでは、ドラゴンや魔獣に襲われても王族や貴族は何もしてくれないと、住民は怒りや不満の感情を抱き、不安になった王都民は混乱し治安が悪化しますが、よろしいのでしょうかと」
「ちょ、ちょっと待てアコル。王族を脅す?」
マルク人事部長は信じられないって顔を俺に向ける。
「いくらなんでもそれはやり過ぎだぞ」と会頭が心配して注意する。
「脅したところで、高学院の学生たちが協力するとは思えないが?」
副会頭は冷静だ。そんなこと無理だろうと言う。
本気で心配そうに俺を見る三人は、冒険者ギルドの二人と同じように、高学院で何かあったのか?とか、不敬罪で処罰されるからやめておけと注意する。
「でも、もしもこれから、度々ドラゴンが襲撃してきたら、誰かがやらないといけないことでしょう?
今の王族や貴族・・・いえ、腐った役人たちに期待するのは無駄ですよ。
フフ、何のために高学院に王立という文字がついているのです?
王立高学院は国営ですから、使える人材は使わないと。しかもタダです。
人件費タダ。そして救済活動は勉強の一環として行える、素晴らしい講義のひとつです」
「うわー、アコルが悪い商人の顔になってる」
「人聞きの悪いことを言わないでくださいセージ部長。私は商学部の学生、利益にならないことはしませんよ」
「いやいや問題はそこじゃないだろう! 王族を脅すなんて、いくら学院長やトーマス王子でも、賛同してくれるとは思えないぞ」
「大丈夫です副会頭。もう散々脅していますから。
それに、今はまだ言えませんが、学院長やトーマス王子でも、私を不敬罪にはできない理由があるんです」
俺はそう言ってにっこりと微笑んだけど、皆の心配そうな表情は変わらない。
このメンバーには、まだ自分の本当の身分は言えない。
俺はまだ、モンブラン商会のアコルでいたいから。
帰る前に、モンブラン商会の刻印が入った小袋を10枚ばかり頂いて、買った材料などはセージ部長のマジックバッグに収納しておいて欲しいと頼んだ。
2
お気に入りに追加
312
あなたにおすすめの小説
チート薬学で成り上がり! 伯爵家から放逐されたけど優しい子爵家の養子になりました!
芽狐
ファンタジー
⭐️チート薬学3巻発売中⭐️
ブラック企業勤めの37歳の高橋 渉(わたる)は、過労で倒れ会社をクビになる。
嫌なことを忘れようと、異世界のアニメを見ていて、ふと「異世界に行きたい」と口に出したことが、始まりで女神によって死にかけている体に転生させられる!
転生先は、スキルないも魔法も使えないアレクを家族は他人のように扱い、使用人すらも見下した態度で接する伯爵家だった。
新しく生まれ変わったアレク(渉)は、この最悪な現状をどう打破して幸せになっていくのか??
更新予定:なるべく毎日19時にアップします! アップされなければ、多忙とお考え下さい!
辺境伯家次男は転生チートライフを楽しみたい
ベルピー
ファンタジー
☆8月23日単行本販売☆
気づいたら異世界に転生していたミツヤ。ファンタジーの世界は小説でよく読んでいたのでお手のもの。
チートを使って楽しみつくすミツヤあらためクリフ・ボールド。ざまぁあり、ハーレムありの王道異世界冒険記です。
第一章 テンプレの異世界転生
第二章 高等学校入学編 チート&ハーレムの準備はできた!?
第三章 高等学校編 さあチート&ハーレムのはじまりだ!
第四章 魔族襲来!?王国を守れ
第五章 勇者の称号とは~勇者は不幸の塊!?
第六章 聖国へ ~ 聖女をたすけよ ~
第七章 帝国へ~ 史上最恐のダンジョンを攻略せよ~
第八章 クリフ一家と領地改革!?
第九章 魔国へ〜魔族大決戦!?
第十章 自分探しと家族サービス
田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。
けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。
日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。
あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの?
ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。
感想などお待ちしております。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
魔眼の守護者 ~用なし令嬢は踊らない~
灯乃
ファンタジー
幼い頃から、スウィングラー辺境伯家の後継者として厳しい教育を受けてきたアレクシア。だがある日、両親の離縁と再婚により、後継者の地位を腹違いの兄に奪われる。彼女は、たったひとりの従者とともに、追い出されるように家を出た。
「……っ、自由だーーーーーーっっ!!」
「そうですね、アレクシアさま。とりあえずあなたは、世間の一般常識を身につけるところからはじめましょうか」
最高の淑女教育と最強の兵士教育を施されたアレクシアと、そんな彼女の従者兼護衛として育てられたウィルフレッド。ふたりにとって、『学校』というのは思いもよらない刺激に満ちた場所のようで……?
チート生産魔法使いによる復讐譚 ~国に散々尽くしてきたのに処分されました。今後は敵対国で存分に腕を振るいます~
クロン
ファンタジー
俺は異世界の一般兵であるリーズという少年に転生した。
だが元々の身体の持ち主の心が生きていたので、俺はずっと彼の視点から世界を見続けることしかできなかった。
リーズは俺の転生特典である生産魔術【クラフター】のチートを持っていて、かつ聖人のような人間だった。
だが……その性格を逆手にとられて、同僚や上司に散々利用された。
あげく罠にはめられて精神が壊れて死んでしまった。
そして身体の所有権が俺に移る。
リーズをはめた者たちは盗んだ手柄で昇進し、そいつらのせいで帝国は暴虐非道で最低な存在となった。
よくも俺と一心同体だったリーズをやってくれたな。
お前たちがリーズを絞って得た繁栄は全部ぶっ壊してやるよ。
お前らが歯牙にもかけないような小国の配下になって、クラフターの力を存分に使わせてもらう!
味方の物資を万全にして、更にドーピングや全兵士にプレートアーマーの配布など……。
絶望的な国力差をチート生産魔術で全てを覆すのだ!
そして俺を利用した奴らに復讐を遂げる!
悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~
こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。
それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。
かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。
果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!?
※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる