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冒険者とお仕事
35ー2 妖精使いのアコル(1)ー2
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「大きくなったなアコル。子供は三年間で随分と変わるものだな」
「遅くなりました会頭。これまで守っていただきありがとうございます」
会頭の執務机の前で挨拶をして、俺は深く頭を下げ礼を言った。
この三年間で俺は身長が15センチも伸びて、年相応に見られるようになっていた。体つきも女の子のようだとは言われないくらいに鍛えてある。
「「「 お帰りアコル 」」」
会頭の執務室には、セージさんとマルク人事部長、それから副会頭に就任した元不動産部のマンデリン部長も居て、俺を暖かく迎えてくれた。
「それで、最高級の香木はどうした?」
「はいマルク人事部長、こちらです」と言って、俺はマジックバッグから、太さ50センチ、長さ3メートルの最高級の香木を取り出して床に置いた。
広い会頭の執務室だからこそ置けたのだが、突然出された丸太を見て、マルク人事部長は呆れたように「倉庫で出せ」と叱った。
「それにしても、アコルのマジックバッグは、かなりの量を収納できるのだな」
「そうなんですよマンデリン副会頭、白磁の移送中に30人の盗賊に襲われたんですが、護衛についていたアコルが、白磁だけを自分のマジックバッグに収納し、盗賊に奪われたのは研究用の割れた失敗作が入った陶器箱だけでした。
でも普通のマジックバッグは、割れ物を入れると割れてしまうので、誰もマジックバッグに陶器を隠すなんて考えもしません。
きっと盗賊も気付かなかったでしょう。
私も盗まれるよりはマシだったと諦め、アコルを責めませんでした。
ところが、盗賊が去ってアコルが白磁を荷馬車に戻したら、全く割れていないどころか、ヒビさえ入っていませんでした」
セージさんは俺のリュックを見ながら、常識外なのは知識や魔力量や妖精だけではないんですと力説する。
……なんだか褒められているような気がしないのは何故だろう?
「ああ、あの時は本当に助かったよアコル。あの時の荷は、隣国に献上される予定の物だったので、モンブラン商会の信用を失わずに済んだ」
「いいえ会頭、あの時は過分な護衛報酬を頂きました。お陰さまで下級地区に家を買うことができました。お礼を申し上げるべきは私の方です」
あの時は特別報酬として金貨10枚(100万円)も貰った。セージさん曰く、白磁が盗まれたり割れたりしていたら、金貨300枚以上の損失だったから、当然の報酬なのだそうだ。
「今後白磁を運ぶ時は、アコルを同行したいですね会頭。いや、アコルのマジックバッグを売ってもらうのはどうだろうか?」
「申し訳ありませんセージさん。私の作るマジックバッグは、使うのにかなり魔力量が必要になります。ああ、でも白磁を入れる箱2つ分くらいの大きさなら大丈夫かも・・・セージさんの魔力量はどのくらいですか?」
手のひらサイズより小さなマジックバッグだったら、俺以外の人でも使えるかもしれない。う~ん、どうなんだろうか? 作ってみなければ分からないな。
「はあ? ちょっと待てアコル、そのマジックバッグは自分で作ったのか?」
「はいマルク人事部長。ギルドマスターからも親からも絶対に人に言うなと厳命されていますが、私はモンブラン商会の一員ですから、お役に立てることがあれば頑張りたいと思います。もしもセージさんが使えて、陶器が割れないマジックバッグが出来たら、買い取って頂いてもよろしいでしょうか?」
商人として、無償とかタダというのは却って高くつくし、無責任なことになりかねない。だからここは学費のためにも有償でいくべきだろう。
「陶器が割れないマジックバッグなんて、国宝級もんだろう。値段なんか付けられないぞアコル。そもそも何故自分で作れるんだ? まさか、魔術も独学で?」
俺がマジックバッグを作れることに半信半疑の様子だった会頭は、急に眉を寄せ難しい顔をして、魔術を独学で学んだのかと訊いてきた。
持っている魔術書のことなんて言えないので、ここは誤魔化すしかない。
「そこは聞かないでください。作ってみたら出来た。それが全てです」
会頭もセージさんも副会頭もマルク人事部長も、全然納得してないような表情で俺を見るけど、どう突っ込んでいいのか分からないようで、それ以上言及してこなかった。
「私の魔力量は70くらいだと思う。高学院卒業後に調べてないけど、一応伯爵家の人間だからな」
「70なら大丈夫かな……早速作ってみます。高学院の学費が、まだ一年分しか貯まってないので、学費の足しになったら嬉しいです」
俺はにっこりと笑って、学費一年分の値段くらいでどうでしょうかと遠回しに言ってみた。
「アコル、手紙にも書いておいたが、学費は全額モンブラン商会が出す。
それは推薦者である商会の責任なんだ。
それに学費一年分なら僅か金貨15枚だ。貴族用の寮に入っても、二年間で金貨50枚程度だ。
この世に存在しない奇跡のようなマジックバッグなら、金貨100枚出してでも欲しがる商人は居る。
モンブラン商会なら金貨200枚は出すだろう。うちのメイン商品はガラスや陶器などの割れ物なんだぞ」
「分かりました会頭。それじゃぁ、もしも商品が割れないマジックバッグが完成したら、どんな手を使ってでも俺を高学院の個室の寮に入れてください。
貴族部屋には入れないでしょうが、個室なら、もしかして本当に上位貴族であるレイム公爵家やサナへ侯爵家の血族かもしれないと、魔法省の奴らに思わせることが出来るかもしれません。
本来、平民で商会推薦の者が個室に入ることはないんでしょう?
俺はこれから魔法省に対し、はったりと脅しで危機を回避するつもりですから」
「「「「 はったりと脅し? 」」」」
驚いたように声を揃えた四人は、いったい何をする気だアコル!って顔をして俺を見る。
この三年間で磨き上げた俺の演技力を、とうとう見せる時がやってきた。
どんなキャラにでもなれる。その能力こそが俺を守り、無駄な戦いを回避することになるだろう。
「遅くなりました会頭。これまで守っていただきありがとうございます」
会頭の執務机の前で挨拶をして、俺は深く頭を下げ礼を言った。
この三年間で俺は身長が15センチも伸びて、年相応に見られるようになっていた。体つきも女の子のようだとは言われないくらいに鍛えてある。
「「「 お帰りアコル 」」」
会頭の執務室には、セージさんとマルク人事部長、それから副会頭に就任した元不動産部のマンデリン部長も居て、俺を暖かく迎えてくれた。
「それで、最高級の香木はどうした?」
「はいマルク人事部長、こちらです」と言って、俺はマジックバッグから、太さ50センチ、長さ3メートルの最高級の香木を取り出して床に置いた。
広い会頭の執務室だからこそ置けたのだが、突然出された丸太を見て、マルク人事部長は呆れたように「倉庫で出せ」と叱った。
「それにしても、アコルのマジックバッグは、かなりの量を収納できるのだな」
「そうなんですよマンデリン副会頭、白磁の移送中に30人の盗賊に襲われたんですが、護衛についていたアコルが、白磁だけを自分のマジックバッグに収納し、盗賊に奪われたのは研究用の割れた失敗作が入った陶器箱だけでした。
でも普通のマジックバッグは、割れ物を入れると割れてしまうので、誰もマジックバッグに陶器を隠すなんて考えもしません。
きっと盗賊も気付かなかったでしょう。
私も盗まれるよりはマシだったと諦め、アコルを責めませんでした。
ところが、盗賊が去ってアコルが白磁を荷馬車に戻したら、全く割れていないどころか、ヒビさえ入っていませんでした」
セージさんは俺のリュックを見ながら、常識外なのは知識や魔力量や妖精だけではないんですと力説する。
……なんだか褒められているような気がしないのは何故だろう?
「ああ、あの時は本当に助かったよアコル。あの時の荷は、隣国に献上される予定の物だったので、モンブラン商会の信用を失わずに済んだ」
「いいえ会頭、あの時は過分な護衛報酬を頂きました。お陰さまで下級地区に家を買うことができました。お礼を申し上げるべきは私の方です」
あの時は特別報酬として金貨10枚(100万円)も貰った。セージさん曰く、白磁が盗まれたり割れたりしていたら、金貨300枚以上の損失だったから、当然の報酬なのだそうだ。
「今後白磁を運ぶ時は、アコルを同行したいですね会頭。いや、アコルのマジックバッグを売ってもらうのはどうだろうか?」
「申し訳ありませんセージさん。私の作るマジックバッグは、使うのにかなり魔力量が必要になります。ああ、でも白磁を入れる箱2つ分くらいの大きさなら大丈夫かも・・・セージさんの魔力量はどのくらいですか?」
手のひらサイズより小さなマジックバッグだったら、俺以外の人でも使えるかもしれない。う~ん、どうなんだろうか? 作ってみなければ分からないな。
「はあ? ちょっと待てアコル、そのマジックバッグは自分で作ったのか?」
「はいマルク人事部長。ギルドマスターからも親からも絶対に人に言うなと厳命されていますが、私はモンブラン商会の一員ですから、お役に立てることがあれば頑張りたいと思います。もしもセージさんが使えて、陶器が割れないマジックバッグが出来たら、買い取って頂いてもよろしいでしょうか?」
商人として、無償とかタダというのは却って高くつくし、無責任なことになりかねない。だからここは学費のためにも有償でいくべきだろう。
「陶器が割れないマジックバッグなんて、国宝級もんだろう。値段なんか付けられないぞアコル。そもそも何故自分で作れるんだ? まさか、魔術も独学で?」
俺がマジックバッグを作れることに半信半疑の様子だった会頭は、急に眉を寄せ難しい顔をして、魔術を独学で学んだのかと訊いてきた。
持っている魔術書のことなんて言えないので、ここは誤魔化すしかない。
「そこは聞かないでください。作ってみたら出来た。それが全てです」
会頭もセージさんも副会頭もマルク人事部長も、全然納得してないような表情で俺を見るけど、どう突っ込んでいいのか分からないようで、それ以上言及してこなかった。
「私の魔力量は70くらいだと思う。高学院卒業後に調べてないけど、一応伯爵家の人間だからな」
「70なら大丈夫かな……早速作ってみます。高学院の学費が、まだ一年分しか貯まってないので、学費の足しになったら嬉しいです」
俺はにっこりと笑って、学費一年分の値段くらいでどうでしょうかと遠回しに言ってみた。
「アコル、手紙にも書いておいたが、学費は全額モンブラン商会が出す。
それは推薦者である商会の責任なんだ。
それに学費一年分なら僅か金貨15枚だ。貴族用の寮に入っても、二年間で金貨50枚程度だ。
この世に存在しない奇跡のようなマジックバッグなら、金貨100枚出してでも欲しがる商人は居る。
モンブラン商会なら金貨200枚は出すだろう。うちのメイン商品はガラスや陶器などの割れ物なんだぞ」
「分かりました会頭。それじゃぁ、もしも商品が割れないマジックバッグが完成したら、どんな手を使ってでも俺を高学院の個室の寮に入れてください。
貴族部屋には入れないでしょうが、個室なら、もしかして本当に上位貴族であるレイム公爵家やサナへ侯爵家の血族かもしれないと、魔法省の奴らに思わせることが出来るかもしれません。
本来、平民で商会推薦の者が個室に入ることはないんでしょう?
俺はこれから魔法省に対し、はったりと脅しで危機を回避するつもりですから」
「「「「 はったりと脅し? 」」」」
驚いたように声を揃えた四人は、いったい何をする気だアコル!って顔をして俺を見る。
この三年間で磨き上げた俺の演技力を、とうとう見せる時がやってきた。
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