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冒険者とお仕事

29ー2 新しい仲間(2)ー2

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「アコル? もしかしてお前は、サイモンとパリージアの息子のアコルか?」

「はいそうです。セイガさん、【宵闇の狼】の皆さん。これから暫くお世話になります。モンブラン商会から来ました、秘書見習いのアコルです。俺の本業は商人なので、冒険者はアルバイトです。よろしくお願いします」

 モンブラン商会の人間として恥ずかしくないよう、俺はきちんと立って挨拶する。商人は礼儀正しくがモットーだ。

「はあ? 商人? まだ医師とか薬師見習いなら分かるが……」って、若者パーティーのホルクスさんが、信じられないって顔で眉間にしわを寄せる。


「確かにモンブラン商会からの依頼は受けたが、一緒に旅に出る依頼主の商人ってアコルなのか? 
 はあ? アコルという少年と旅に出て、冒険者として鍛えながら、モンブラン商会の依頼をこなせばいいってサブギルドマスターのダルトンさんが……

 いやいや、ちょっと待て。なんで冒険者じゃなくて商人?
 なんでEランクなんだよ! あの特大エアーカッターはCランク……いや、Bランクでもおかしくないだろう!
 何やってんだよギルドは、許せん!」


【宵闇の狼】のリーダーのセイガさんが、超不機嫌な顔をして、許せないとかなんとかブツブツ言い始めた。他の人たちも「有り得ない!」とか「魔力量検査はどうした!」とか「ギルドの失態だ!」って騒ぎ始めた。

「まあ、そこは置いといて、早くケガ人を休ませてあげましょう。傷口は塞がりましたが、これから熱が出るかもしれません。急いで下山しましょう」

 これ以上突っ込まれても答えようがないので、全員の意識を俺からケガ人のミレーヌさんとロードさんに向ける。

「ああ、そうだった。討伐した魔獣もこのままじゃマジックバッグに入らないしな。新種の魔獣の可能性もあるから、本当はこのまま持ち帰りたいところだが、今から支部に戻ってギルマスのマジックバッグを持ってくるのは無理だ。日が暮れてしまう。危険を考えると仕方ない。さあ、急いで解体するぞ!」

「はいリーダー」

「はいセイガさん!」

セイガさんの掛け声に、残りの力を振り絞るようにして皆は立ち上がる。

 ……ん? マジックバッグに入らない? あれれ、でもAランク冒険者だよね。

「あの~、Aランク冒険者って、あのくらいの大きさの魔獣が入るマジックバッグを持っているんじゃ……」

「んな訳あるか! こんなデカい魔獣が入るマジックバッグなんか、Sランクの冒険者くらいじゃないと持ってないわ!」

 ……えーっと、そうか、みんな自分じゃ作らないんだよな。普通は高学院の魔法部で魔法陣を学ばないと作れないんだった。
 ……ということは、冒険者にはA級魔法師の人って居ないのかな? ギルマスのマジックバッグは国宝級って言ってたなそう言えば・・・


 俺は倒された魔獣をじっと見て、その大きさと自分のマジックバッグの収納量を考えてみる。
 たぶんだけど、ギリギリ入るかもしれない。

 人前でマジックバッグを見せるなと、王都支部のギルマスから厳しく言われているけど、モンブラン商会のマジックバッグだって言えば誤魔化せるかも。
 そうだよ。香木の幹を入れるために、商会のマジックバッグを持たされたと言えばいいじゃん。うん、そうしよう。

「セイガさん、俺が持ってるモンブラン商会のマジックバッグなら、もしかして入るかもしれません。収納してみないと分かりませんが・・・」

「えっ? モンブラン商会のマジックバッグ? 依頼主がマジックバッグを持たせてくれたのか? 珍しいなあ。もしも貸してもらえたら助かるけど、さすがの大商会でも、この魔獣が入る国宝級の大きさのマジックバッグを、見習いの少年に持たせるかなぁ?」

 セイガさんは信じられないって顔をして首を傾げる。
 どうやら俺の認識は、いろいろと間違っていたようだ。でもここは誤魔化して、この機会に是非、この大きさの魔獣が入るかどうか試してみたい。

 俺は倒された魔獣の頭部を持ってきてもらって、欠損のない状態に揃った魔獣をマジックバッグに収納してみる。
 確か巨大な物を収納する時は、詠唱が必要だって【上級魔法と覇王の遺言】に書いてあったな。


「誓約の魔力を捧げし我に、神の示す空間を広げ、望むものを収納せよ」

 詠唱と同時に、スウッと魔力がマジックバッグに吸い取られていく。
 カッ!と一瞬光が辺りを包んだかと思うと、目の前にあった魔獣の姿が無くなっていた。思っていたより多くの魔力を使ったようで、体が重くなった気がする。

「アコル大丈夫? 今の魔法、随分と魔力を使ったでしょう?」

ずっと俺の肩にとまっていたエクレアが、心配そうに訊いてきた。

「うん、詠唱すると魔力をかなり持っていかれる。ちょっと疲れたかな」

小さな声でエクレアの問いに答えて、ふ~っと大きな息を吐いた。
 すると、暖かい何かが体に流れ込んできて、体がポカポカしてきた。

「私の魔力を分けてあげるわアコル。大丈夫、大した量じゃないわ。山を下りるのに必要な量だけよ」

エクレアはそう言ってにっこりと笑った。

 ……ああ、俺のエクレアは優しいし、可愛いな。

「ありがとうエクレア。とっても楽になったよ」ってお礼を言って、みんなの方に振り返った。
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