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第25章 幸せに向かって
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K区役所に採用された小山内慶子は、地域住民課地域住民調整係の自席で執務をしていた。今田進一という係長が彼女の初めての上司だ。慶子の家庭が裕福だったこともあり、バイトやパートは両親から禁止されていたから、初めて働く職場だ。学生時代は同年代の仲間と生活してきた。だから、自分より年齢の上の人、つまり、先輩や上司という人間関係の中で、同じ時間を8時間も共有するのは初めての経験だ。慶子は天真らん漫な明るい性格だったが、初勤務日の前日ともなると緊張した。
勤務初日、役所の本庁舎内にあるホールで辞令交付式が始まった。慶子はパイプ椅子に座ってから心を落ち着けるように周囲を見回した。会場にはこれから同僚となる100名ほどの同年代の若者が集まっていた。だれもが真剣な顔で正面を向いていた。緊張した周囲の同僚を見ると、慶子も幾分安心した。
「みんな、同じ気持ちだわ、きっと」
慶子は心中でつぶやきながら、ホール前方の幹部席に座る女性に視線を移した。
「あら? 潤子先輩に似た方がいるわ」
遊び仲間である同じ大学の潤子先輩に似た濃紺スーツを身にまとった女性は、普段、居酒屋でよく会うおちゃらけた潤子先輩とはまるで雰囲気の違う女性だった。あの方があの席に座っている訳がないわ、と思うと同時、初めて気が付いた。潤子先輩の姓は何だったろ? 連絡はもっぱらスマホだから相手の姓を言って呼び出すこともなかった。潤子先輩も美人の部類に入るが、世の中には似ている人がいるものだわ、と思いながら女性を見つめた。
勤務初日、役所の本庁舎内にあるホールで辞令交付式が始まった。慶子はパイプ椅子に座ってから心を落ち着けるように周囲を見回した。会場にはこれから同僚となる100名ほどの同年代の若者が集まっていた。だれもが真剣な顔で正面を向いていた。緊張した周囲の同僚を見ると、慶子も幾分安心した。
「みんな、同じ気持ちだわ、きっと」
慶子は心中でつぶやきながら、ホール前方の幹部席に座る女性に視線を移した。
「あら? 潤子先輩に似た方がいるわ」
遊び仲間である同じ大学の潤子先輩に似た濃紺スーツを身にまとった女性は、普段、居酒屋でよく会うおちゃらけた潤子先輩とはまるで雰囲気の違う女性だった。あの方があの席に座っている訳がないわ、と思うと同時、初めて気が付いた。潤子先輩の姓は何だったろ? 連絡はもっぱらスマホだから相手の姓を言って呼び出すこともなかった。潤子先輩も美人の部類に入るが、世の中には似ている人がいるものだわ、と思いながら女性を見つめた。
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