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第18章 佐々木慎之介

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 そう考えると、愛があるから結婚するということにはならない。愛と結婚は別問題。結婚は人間が作った法的な相互扶助契約であり愛とは違う。aiの作り出した愛は契約を必要としない。aiの作り出した愛は不滅なのだ。持続可能の愛、衰えない愛、燃える愛、消えない愛。愛は不滅だ。
 恋の橋渡しをしようとしていたキューピッドを目指していた慎之介には信じられない直感的な愛だ。直感的な愛、条件は一切必要としない愛、無から生まれたきらめきの愛である。
 
  *

 慶子と慎太郎の愛は複合的な愛の初期段階に過ぎない。aiが意図する愛は、3人による愛のグループを最小の一単位とする。一単位の愛はとりあえず、3人以上であれば成り立つ。進一、純子、慶子を引き付けあわせたように、これを最小グループaする。別の最小グループbが生まれ、別のグループcが誕生する。これら3人のグループであるabcからさらに一人ずつを抽出し、2abcのグループが誕生する。この複雑にグループの愛が重なり合う。この複雑に絡んだグループを拡散させる。だれかと誰かのつながりができ、それは大きな愛のグループとなる。その橋渡しをする愛のキューピッドがaiというゲームの中枢演算装置だ。aiはその複雑な愛をCPUを使って短時間で可能にした。
 aiは、計画初期として、役所の会議室の一室で最小のabcグループを作っていく。abcの頭に付く数字が多重愛の数となり、拡散されていく。慎之介はサーバー室に設置されたモニターでそのaiが橋渡ししたグループが誕生するたびに視覚により確認することができた。多重愛は着実に増加している。
 aiは役所の職員を多重愛の基準にする。不特定多数がやってくる役所だからこそ、拡散が可能となる。訪れた住人を少しずつ多重愛にまみれさせる。多重愛に染まった住人が帰ったり、次に、行き着く先には多重愛が拡散されていく。「k区を多重愛で掌握する」という計画がaiの計画だ。aiが作った計画に慎之介がテストに使われた。この計画が開始されたとき、慎之介は完全に恋の架け橋をするキューピッドの役を終えた。その経過の履歴をモニターで確認した慎之介は、人間になる決心をした。
 aiは役所の職員を多重愛の基準にする。不特定多数がやってくる役所だからこそ、拡散が可能となる。訪れた住人を少しずつ多重愛にまみれさせる。多重愛に染まった住人が帰ったり、次に、行き着く先には多重愛が拡散されていく。「k区を多重愛で掌握する」という計画がaiの計画だ。aiが作った計画に慎之介がテストに使われた。この計画が開始されたとき、慎之介は完全に恋の架け橋をするキューピッドの役を終えた。その経過の履歴をモニターで確認した慎之介は、人間になる決心をした。
 慎之介はサーバー室を出ると、ゲーム店のカウンターまで歩いていく。ヒトメボレの評が口コミで広がったためか、店内は愛の迷人でひしめき合っていた。
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