トライアングルパートナー

第13章 小山内慶子の攻略

６

　居住者の生活を支援する役所には、突発の緊急案件が入るのは当たり前。そうなれば、彼女は残業をいとわない。それは紛れもなく彼女の本当の、心にある社会への貢献であり、奉仕の精神だろう。
　現在の彼女は進一の知る入庁したころの彼女ではない。世間で言うように、彼女は神がかってきた。進一は自分が彼女の公務を同じようにしたら、きっと、役所に連日、泊まり込みになってしまうかもしれない。途中で、パニックになったり、最悪、過労死するかも、と彼は想像する。優秀な彼女だから可能な役職だ。彼女のためにあるような役職とも言えるし、彼女だからできる。
　そんな神様みたいな彼女は、決して、口には出さないが、進一は、何をおいても進一が一番に好き、と分かっている。彼女は土日に公務を入れないようにしている。しかし、町会の行事、イベント、災害、感染症など緊急事態が発生すれば、公務を優先した。彼女はＫ区の職員から見れば超絶スーパーキャリアウーマンである。
　彼は、今では彼女のことをだれもが神様、仏様、弁天様と、呼んでいることを知っている。呼び方は違うが、つまり、彼女をだれもが崇めている。
　進一は毎朝、スーツを着て出ていく純子を見ているが、天女のごとく薄い布で覆われた天女の羽衣をまとっているのではと思うことがある。
　そういう彼女が、夜になると別の人格になった。彼は、夜の純子の痴態を回想すると、恥ずかしくなる。あのみだらで恥ずかしい異常な行動に、純子は狂喜し、絶叫する。純子のあまりの狂気な行動は、進一に現実感を奪っていく。純子が作り出す行動はすさまじく、おぞましくもある痴態であり、ある意味、芸術とも言えた。それは、進一から現実感を失わせる。