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第8章 二人だけの執務室
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「あの、好意うれしいけど、きょうだけね。変なうわさが立つと、きみにも迷惑をかけるしね。でも、二人分の弁当を作るなんて頑張ったね」
進一は褒め言葉を慶子に言ったほうがいいような気がして気持ちを伝えた。
「えっ? 変なうわさですか? でも、もうあたしたち、ヒトメボレで知り合ってしまったんですよ。大丈夫です、どうにでもなりますから」
慶子の笑顔が増したように見えた。進一は慶子の初めて見せる底なしの笑顔を見つめてしまった。ああ、この子をすぐにでも抱きしめてあげたい、と思った。今までであれば妄想の中でのことである。二人で会議室に入ったら抱きしめてしまうかもしれない。そうしたら、慶子は叫んで人を呼ぶだろう。進一の公務員の人生が終わる。そんな事になってしまってからでは遅い。進一はヒトメボレの機能をゲーム店員から聞かなかったことを、呪った。進一は、昨日の会話から二人の関係が進み、とてつもない怖い関係になってしまった気がして心配になってきた。とにかくゲームの詳細を聞き出して今後の慶子との対応を考えなければならない。ラブゲームはスマホの中で対戦するのか、を確認しておきたい。リアという単語が気になって仕方ないのだ。
他の係員は席を立ちながら進一たちを見た。
「係長、昼休み時間を使ってのご指導、ご足労様です」
清水がねぎらいの言葉を掛けてきた。進一は頭をかきながら言った。
「いやあー 小山内くんの手弁当だものな、断れないよな」
「えぇ? 係長、何を仰ってるのです? リアラブゲームの恋人関係になられたんですから、堂々となさってください」
「えぇえっ、清水さんはリア・ラブゲームを知っているのですか?」
「ええ、これ昨日ゲーム店で購入しました」
そう言った清水は胸ポケットからスマホを取り出して進一の前に差し出してみせた。
「なんか、結構、買ってる人がいるみたいですね。どんな人に一目ぼれするのか楽しみです」
「えぇえっ、どういうこと?」
「係長さん、ゲームの説明を聞いていないのですか? では、これからあたしが詳しく説明しますから会議室へ行きましょう」
慶子がしびれを切らしたように清水との会話を遮って入ってきた。
「そうしてください。わたしは食堂へ行きますので」
そう話す清水の隣には同じ係員の高橋こづえが立っていた。
「いいなぁ、慶子さんの手作り弁当かぁ、あたしも作りたいけど料理は無理かな?」
「あたし、料理教室へ行ってるおかげなんですよ。それまで、全くダメでした」
慶子が弁当を胸の前に持ち上げて言う。
「そうなの? あたしも行こうかな、今度、教室のこと、教えてね」
進一は二人の会話を聞いて、ますます、不安が増してきた。手弁当を一緒に食べるのはきょうだけと言ってるだろ? 進一は心中で思う。これからどうなってしまうのか? 進一の脳内に不安が増殖する。
進一は褒め言葉を慶子に言ったほうがいいような気がして気持ちを伝えた。
「えっ? 変なうわさですか? でも、もうあたしたち、ヒトメボレで知り合ってしまったんですよ。大丈夫です、どうにでもなりますから」
慶子の笑顔が増したように見えた。進一は慶子の初めて見せる底なしの笑顔を見つめてしまった。ああ、この子をすぐにでも抱きしめてあげたい、と思った。今までであれば妄想の中でのことである。二人で会議室に入ったら抱きしめてしまうかもしれない。そうしたら、慶子は叫んで人を呼ぶだろう。進一の公務員の人生が終わる。そんな事になってしまってからでは遅い。進一はヒトメボレの機能をゲーム店員から聞かなかったことを、呪った。進一は、昨日の会話から二人の関係が進み、とてつもない怖い関係になってしまった気がして心配になってきた。とにかくゲームの詳細を聞き出して今後の慶子との対応を考えなければならない。ラブゲームはスマホの中で対戦するのか、を確認しておきたい。リアという単語が気になって仕方ないのだ。
他の係員は席を立ちながら進一たちを見た。
「係長、昼休み時間を使ってのご指導、ご足労様です」
清水がねぎらいの言葉を掛けてきた。進一は頭をかきながら言った。
「いやあー 小山内くんの手弁当だものな、断れないよな」
「えぇ? 係長、何を仰ってるのです? リアラブゲームの恋人関係になられたんですから、堂々となさってください」
「えぇえっ、清水さんはリア・ラブゲームを知っているのですか?」
「ええ、これ昨日ゲーム店で購入しました」
そう言った清水は胸ポケットからスマホを取り出して進一の前に差し出してみせた。
「なんか、結構、買ってる人がいるみたいですね。どんな人に一目ぼれするのか楽しみです」
「えぇえっ、どういうこと?」
「係長さん、ゲームの説明を聞いていないのですか? では、これからあたしが詳しく説明しますから会議室へ行きましょう」
慶子がしびれを切らしたように清水との会話を遮って入ってきた。
「そうしてください。わたしは食堂へ行きますので」
そう話す清水の隣には同じ係員の高橋こづえが立っていた。
「いいなぁ、慶子さんの手作り弁当かぁ、あたしも作りたいけど料理は無理かな?」
「あたし、料理教室へ行ってるおかげなんですよ。それまで、全くダメでした」
慶子が弁当を胸の前に持ち上げて言う。
「そうなの? あたしも行こうかな、今度、教室のこと、教えてね」
進一は二人の会話を聞いて、ますます、不安が増してきた。手弁当を一緒に食べるのはきょうだけと言ってるだろ? 進一は心中で思う。これからどうなってしまうのか? 進一の脳内に不安が増殖する。
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