トライアングルパートナー

窓野枠

文字の大きさ
上 下
20 / 190
第2章 管理職昇任試験

しおりを挟む
 彼女は進一にキスをしながら抱きしめる。彼女は弱った人に全身全霊で、自分のできることを全力で支援できる優しい女性だった。それだけではない。あらゆることに優秀な女性だ。そんな優秀な女性でも、彼と出会うまで、恋愛をしたことがない、と話していたことを思い出していた。人を愛するけれど、特定の人を愛することはなかったと言う。3回目のデートのときだ。
「あなたって、女の人と経験はあるの?」
 彼は彼女からそんなことを聞かれるなんて思いもしなかったので、なんと答えたらいいか分からず、返事に言いよどんだ。
「ふふーん、ないんだぁ?」
 少しだけ笑ったように彼女は言うと、進一に突然、抱きついてきた。彼は突然の彼女の行動に目を大きく見開いた。
「えっ、一体、どうしたのですか?」
「やっぱりねぇー あたしの思ったとおりねー」
 抱きついてきた彼女は、彼の顔の横に自分の顔をくっつける。彼にはいい香りがした。
「あたしもないの、でもね、エッチって、誰とでもいいというわけではないよね、君は何かが違うのよね。こんなこと、今が初めてなの、あたしもどうして抱きついているのか、自分が分からないの…… 変だよね? 自分でも訳がわからないわ」
 彼女は顔を赤くしながら、下半身を進一に押し付けてくる。
「ね、あたしって、どうにかなっちゃったみたい、信じられないでしょ?」
 彼女は息が苦しそうで口を開けている。彼女はこういうことをしたい、と思う人が今までいなかった、とキスをしてきた。あまりの唐突な彼女の行動に彼は戸惑う。
「きょうのあたしって、変に思う? そうよね、あたしだって、信じられないもの……」
 彼女の顔が彼の前にあった。
「うーん、僕もこういうこと、今までなかったし、こんなこと、ないな、って思ってた……」
 彼の場合、まったく、女性に関心を今まで持たれなかった。彼にとってこの今の、彼女からの積極的な行動は、夢の中のシーンと思うほどだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

乙男女じぇねれーしょん

ムラハチ
青春
 見知らぬ街でセーラー服を着るはめになったほぼニートのおじさんが、『乙男女《おつとめ》じぇねれーしょん』というアイドルグループに加入し、神戸を舞台に事件に巻き込まれながらトップアイドルを目指す青春群像劇! 怪しいおじさん達の周りで巻き起こる少女誘拐事件、そして消えた3億円の行方は……。 小説家になろうは現在休止中。

由紀と真一

廣瀬純一
大衆娯楽
夫婦の体が入れ替わる話

無垢で透明

はぎわら歓
現代文学
 真琴は奨学金の返済のために会社勤めをしながら夜、水商売のバイトをしている。苦学生だった頃から一日中働きづくめだった。夜の店で、過去の恩人に似ている葵と出会う。葵は真琴を気に入ったようで、初めて店外デートをすることになった。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

雌蛇の罠『異性異種格闘技戦』男と女、宿命のシュートマッチ!

コバひろ
大衆娯楽
格闘技を通して、男と女がリングで戦うことの意味、ジェンダー論を描きたく思います。また、それによる両者の苦悩、家族愛、宿命。 性差とは何か?

喜劇・魔切の渡し

多谷昇太
大衆娯楽
これは演劇の舞台用に書いたシナリオです。時は現代で場所はあの「矢切の渡し」で有名な葛飾・柴又となります。ヒロインは和子。チャキチャキの江戸っ子娘で、某商事会社のOLです。一方で和子はお米という名の年配の女性が起こした某新興宗教にかぶれていてその教団の熱心な信者でもあります。50年配の父・良夫と母・為子がおり和子はその一人娘です。教団の教え通りにまっすぐ生きようと常日頃から努力しているのですが、何しろ江戸っ子なものですから自分を云うのに「あちし」とか云い、どうかすると「べらんめえ」調子までもが出てしまいます。ところで、いきなりの設定で恐縮ですがこの正しいことに生一本な和子を何とか鬱屈させよう、悪の道に誘い込もうとする〝悪魔〟がなぜか登場致します。和子のような純な魂は悪魔にとっては非常に垂涎を誘われるようで、色々な仕掛けをしては何とか悪の道に誘おうと躍起になる分けです。ところが…です。この悪魔を常日頃から監視し、もし和子のような善なる、光指向の人間を悪魔がたぶらかそうとするならば、その事あるごとに〝天使〟が現れてこれを邪魔(邪天?)致します。天使、悪魔とも年齢は4、50ぐらいですがなぜか悪魔が都会風で、天使はかっぺ丸出しの田舎者という設定となります。あ、そうだ。申し遅れましたがこれは「喜劇」です。随所に笑いを誘うような趣向を凝らしており、お楽しみいただけると思いますが、しかし作者の指向としましては単なる喜劇に留まらず、現代社会における諸々の問題点とシビアなる諸相をそこに込めて、これを弾劾し、正してみようと、大それたことを考えてもいるのです。さあ、それでは「喜劇・魔切の渡し」をお楽しみください。

窓野枠 短編傑作集 6

窓野枠
大衆娯楽
日常、何処にでもありそうな、なさそうな、そんなショートショートを書き綴りました。窓野枠 オリジナル作品となります。「クスッ」と笑える作風に仕上げているつもりです。この本の作品20編をお読みになりましたら、次巻も、閲覧のほど、よろしくお願いいたします。

女豹の恩讐『死闘!兄と妹。禁断のシュートマッチ』

コバひろ
大衆娯楽
前作 “雌蛇の罠『異性異種格闘技戦』男と女、宿命のシュートマッチ” (全20話)の続編。 https://www.alphapolis.co.jp/novel/329235482/129667563/episode/6150211 男子キックボクサーを倒したNOZOMIのその後は? そんな女子格闘家NOZOMIに敗れ命まで落とした父の仇を討つべく、兄と娘の青春、家族愛。 格闘技を通して、ジェンダーフリー、ジェンダーレスとは?を描きたいと思います。

処理中です...