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第1章 二人
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彼女の重く責任のある役職を鑑みれば、当然ながら、夫の今田進一より仕事の帰りが少しずつ遅くなっていくのは当然と言えた。今田純子は人間から見れば、神のような存在であったが、そこは人間である。非の打ち所のないと言われるスーパーウーマンにも致命的な弱点があった。彼女はどこにでもいそうな容姿のフツメンである進一を尋常とは言えないほど好きになってしまった。彼女によれば、世間で言うところの運命の人ではすまされない、くらい奇跡の人、だという。彼女は進一のすべてにそそられる。どこに、そんな部分があるの? と、だれもがいう。
彼女は役所の入所式場で、進一を始めて見たとき、自分でもあきれるほどの狼ばいぶりだった、と思い起こしている。彼の体に反応し、自分の体が制御できないほどほてり熱くなった。彼女は式が終わると、すぐにトイレに駆け込んだほどだ。個室に入った彼女は、こんな男がこの世界にいたことに興奮した。彼の存在は、彼女をこの職場で冷静に働くことを許さない、と確信させた。個室に入り、長時間に渡り、思考と空想を繰り返した。彼を自分のそばに置きたい、独占したい、と神に祈りたいほどだった。
しかし、そのアイデアが見つからない。彼が他の女性を好きになったらどうしよう、と心配と不安が彼女に押し寄せてくる。彼女は苦しくなり嗚咽した。
長考の末、彼に告白しよう、というシンプルな結論になった。彼女は生まれて一度なりと、恋心を抱いたことがなく、挑発的な行為、色香を振りまく、などあざとさが思いつかなかった。今まで、モテモテ人生だった彼女は、相手を好きになり、自分から告白などしたことがない。幼稚園から大学まで、好きになった相手がいなかった。
「フフウ、純子…… 安心して、あたしの美貌でとりこにしてあげるから……」
彼女の中のだれかがささやいた。
彼女は役所の入所式場で、進一を始めて見たとき、自分でもあきれるほどの狼ばいぶりだった、と思い起こしている。彼の体に反応し、自分の体が制御できないほどほてり熱くなった。彼女は式が終わると、すぐにトイレに駆け込んだほどだ。個室に入った彼女は、こんな男がこの世界にいたことに興奮した。彼の存在は、彼女をこの職場で冷静に働くことを許さない、と確信させた。個室に入り、長時間に渡り、思考と空想を繰り返した。彼を自分のそばに置きたい、独占したい、と神に祈りたいほどだった。
しかし、そのアイデアが見つからない。彼が他の女性を好きになったらどうしよう、と心配と不安が彼女に押し寄せてくる。彼女は苦しくなり嗚咽した。
長考の末、彼に告白しよう、というシンプルな結論になった。彼女は生まれて一度なりと、恋心を抱いたことがなく、挑発的な行為、色香を振りまく、などあざとさが思いつかなかった。今まで、モテモテ人生だった彼女は、相手を好きになり、自分から告白などしたことがない。幼稚園から大学まで、好きになった相手がいなかった。
「フフウ、純子…… 安心して、あたしの美貌でとりこにしてあげるから……」
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