蜃気楼の女

第5章 蜃気楼の国

1話

　紀元前、アラビアーナ国は、クウェート、サウジアラビア、イラクの3国から敵対され、追い詰められた結果、三国の境界に追いやられた。国土面積が極小の国だったが、超能力を備えた少数民族だった。  
　アラビアーナ国王・ムクタフィーは周辺国の軍力を束ねられるほどの絶対的なパワーと統率力を持っていた。
　しかし、強大な超能力に磨きを掛け、やがて、周辺民族は自分たちが奴隷にされてしまう恐怖を抱いていた。周辺民族は、団結、協力してアラビアーナ国民を抹殺することにした。平和を愛するアラビアーナ人は自分たちの能力を使って、ひっそりと平和に、相互愛を糧に生きる平和の道を選択した。
　アラビアーナ人は、その強大な超能力のパワーを見せたりしなかったことが仇となった。周辺国は結束しアラビアーナ国に奇襲を掛けてきた。  
　善人な能力者、国王・ムクタフィーは自身の肉体を使って、肉眼では見ることのできない国土を異次元空間に造りだした後、国土を覆う見えない防御壁を作った。国王の右腕であった国軍司令官・マスウードはムクタフィーの意思を継承し、 蜃気楼しんきろうアラビアーナ国と命名し、国と統治することを宣言し、国王の座に着いた。そして、ムクタフィーの全能力を継承し、絶大な力を得たマスウードは、自分たちを恐れる周辺民族の記憶の全てを消し去り、アラビアーナ人の生きてきた痕跡を周辺民族の記憶から完全に消し去った。  
　以来2000年間、アラビアーナ国はセックスを愛する平和の民として存続し、お互いが愛情を注ぎ合い、尊厳、尊重しながら、周辺国から存在を隠し平和に暮らした。隔離された空間で生活するアラビアーな国民は、超能力を使った性技が研ぎ澄まされていった。
　生物は、進化の過程で必ず亜種が出現する。突然変異による長老の超能力者たちを超える若い超能力者である。その亜種は、能力を両親に知られることなく本能的に隠す能力を備えていた。マスウードの娘、上王妃･ラービアである。彼女は健やかに両親に育てられていたが、徐々に、亜流主たる邪悪な力を増大させ、未知なる邪悪な力を蓄えていく。本来持つ超能力をも、制御することができない邪悪な力に増大し、自らの力を持て余し、爆発を抑え込むだけの悶々とした生活を送っていた。