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第3章 児玉進一
1話
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進一は売店に並べた商品をチェックしていた。
「店長、この商品、なかなかの人気ですねえ」
進一の秘書のように、後を付いてくる尚子が商品を手にして言った。職員10人の厚生労働大臣官房直轄の機密情報室である。しかし、職員からは重宝室と呼ばれ、どこにも該当しない雑仕事をする部署で、何でも屋と重宝がられている部署という意味を込めて呼んでいた。求められれば可能な限り努力する。そういうスタンスである。
情報室はあらゆる製品のマーケティングをしている。尚子はアダルトグッズに興味があるようで、モニターに任せないで、自分でいろんなおもちゃを試している様子だ。進一はそれがとても気になっていて尚子に聞いてみた。
「君はプライベートでそれを試しているのかい?」
「そうよ、自分で試さなければ分からないでしょ? 気持ちよくなければ、誇大広告だし、 別の意味で、詐欺ですよね? 誰よりもあたしがいち早く試してあげているって訳ね」
進一が知る幼い頃の清楚で清純な尚子の言葉と思えないほど、今の尚子はすっかりエロい女に変わってしまった。進一が最も好きなタイプだ。でも、勤勉、実直な好青年という尚子の印象を壊したくない進一であった。
日本全国で製品化されたあらゆる商品がこの重宝室に納品される。すべての製造物は重宝室に納品されることになっていて、物品納品制度が法制化された。納品しなければ罰金を科すことができる。1兆円から1円と幅は広く、実に基準がアバウトである。機密重宝室長である児玉に裁量権が与えられている。科料に従わないものには警察権力に支持し、逮捕する権限も与えられていた。大きなものは、宇宙船、小さなものはノミのブランコがあった。
しかし、宇宙船、飛行機、戦車、船舶など大型の機器は保管する場所がないから納品は拒否している。ノミのブランコなんて買う人がいるのか、と思ったが、場所のいらないペットとしてにわかに脚光を浴びているペット用品である、という。こんなどうでもいいものは製品の安全検査なんかする価値もない気がしているが、役所だから決められていることは遂行しなければならない。
なんと言っても、生活に密着する商品は重要であり、慎重に安全検査をしなければならない。効能通りの性能があるかを無作為に試験している。優秀な製品なら海外に輸出する交渉もする。例えば、尚子が手にした電動マッサージ機である。首都圏で一番売れている。それも単身女性に人気がある商品と聞く。
「こういうの使っちゃうんだね、今の女子は?」
電動マッサージ機を手にした尚子はまじまじとなめるようににらんでいる。
「そうよね、進ちゃんがあたしにマッサージしてくれれば、買わなくて済むのにね……」
尚子の何気ない言動に、進一はまたびっくり仰天である。清楚で清純な尚子から出た言葉と思えない。二人きりになるといつも怖くなるくらい挑発的な発言をする。
近年、失業率の増加もさることながら、少子化も問題となっている。恋人を作らない若者、セックスしないセックスレス夫婦。子どものいない世帯。それでいて、風俗産業は花形産業になってきている。あまたの寂しさ、空虚さ、やるせない気持ちなどを忘却させてくれる耽美な世界は癒やしのパラダイスとして人気スポットである。
尚子がその商品を手にして進一に向かって質問した。
「進ちゃんは、これ、使っている?」
作業の手を休めて進一は尚子のほうを見た。尚子がアダルトグッズのオナホールを箱から出して見えるように差し出した。
「なんでそんなことを僕に聞くのさ……」
「あららー だって、寂しそうだものー 進ちゃんさぁー…… 真面目の堅物男だから、童貞でしょ? これ使いたくなったらさぁー あたしが全身で慰めてあげるからいつでも言ってね」
「尚ちゃんさ、そういう冗談さ、職場で止めてくれる? そういう下ネタ話、どこで誰が聴いているか分からないしさ。まして、変に誤解されて、お父さんの耳に入ったら、僕、大変だからね…… 責任取りなさいってーーー 即、転勤だよ? それも遠くにさ、いやでしょ?」
「ええぇー それってぇー 超嫌だナ、進ちゃん、いなくなったら、あたしもう生きがいなくなっちゃうよ。進ちゃんをもてあそぶ生きがいね、でも、もっと嫌なのは進ちゃんのほうでしょ? あたしからいじめられなくなっちゃうものね 進ちゃん、もう、マゾっけ、丸出しだもんね!」
尚子はそんなことを平気で言ってくる。進一は改めて周囲を見回す。誰もいない、ことを確認すると心から安堵する。
「店長、この商品、なかなかの人気ですねえ」
進一の秘書のように、後を付いてくる尚子が商品を手にして言った。職員10人の厚生労働大臣官房直轄の機密情報室である。しかし、職員からは重宝室と呼ばれ、どこにも該当しない雑仕事をする部署で、何でも屋と重宝がられている部署という意味を込めて呼んでいた。求められれば可能な限り努力する。そういうスタンスである。
情報室はあらゆる製品のマーケティングをしている。尚子はアダルトグッズに興味があるようで、モニターに任せないで、自分でいろんなおもちゃを試している様子だ。進一はそれがとても気になっていて尚子に聞いてみた。
「君はプライベートでそれを試しているのかい?」
「そうよ、自分で試さなければ分からないでしょ? 気持ちよくなければ、誇大広告だし、 別の意味で、詐欺ですよね? 誰よりもあたしがいち早く試してあげているって訳ね」
進一が知る幼い頃の清楚で清純な尚子の言葉と思えないほど、今の尚子はすっかりエロい女に変わってしまった。進一が最も好きなタイプだ。でも、勤勉、実直な好青年という尚子の印象を壊したくない進一であった。
日本全国で製品化されたあらゆる商品がこの重宝室に納品される。すべての製造物は重宝室に納品されることになっていて、物品納品制度が法制化された。納品しなければ罰金を科すことができる。1兆円から1円と幅は広く、実に基準がアバウトである。機密重宝室長である児玉に裁量権が与えられている。科料に従わないものには警察権力に支持し、逮捕する権限も与えられていた。大きなものは、宇宙船、小さなものはノミのブランコがあった。
しかし、宇宙船、飛行機、戦車、船舶など大型の機器は保管する場所がないから納品は拒否している。ノミのブランコなんて買う人がいるのか、と思ったが、場所のいらないペットとしてにわかに脚光を浴びているペット用品である、という。こんなどうでもいいものは製品の安全検査なんかする価値もない気がしているが、役所だから決められていることは遂行しなければならない。
なんと言っても、生活に密着する商品は重要であり、慎重に安全検査をしなければならない。効能通りの性能があるかを無作為に試験している。優秀な製品なら海外に輸出する交渉もする。例えば、尚子が手にした電動マッサージ機である。首都圏で一番売れている。それも単身女性に人気がある商品と聞く。
「こういうの使っちゃうんだね、今の女子は?」
電動マッサージ機を手にした尚子はまじまじとなめるようににらんでいる。
「そうよね、進ちゃんがあたしにマッサージしてくれれば、買わなくて済むのにね……」
尚子の何気ない言動に、進一はまたびっくり仰天である。清楚で清純な尚子から出た言葉と思えない。二人きりになるといつも怖くなるくらい挑発的な発言をする。
近年、失業率の増加もさることながら、少子化も問題となっている。恋人を作らない若者、セックスしないセックスレス夫婦。子どものいない世帯。それでいて、風俗産業は花形産業になってきている。あまたの寂しさ、空虚さ、やるせない気持ちなどを忘却させてくれる耽美な世界は癒やしのパラダイスとして人気スポットである。
尚子がその商品を手にして進一に向かって質問した。
「進ちゃんは、これ、使っている?」
作業の手を休めて進一は尚子のほうを見た。尚子がアダルトグッズのオナホールを箱から出して見えるように差し出した。
「なんでそんなことを僕に聞くのさ……」
「あららー だって、寂しそうだものー 進ちゃんさぁー…… 真面目の堅物男だから、童貞でしょ? これ使いたくなったらさぁー あたしが全身で慰めてあげるからいつでも言ってね」
「尚ちゃんさ、そういう冗談さ、職場で止めてくれる? そういう下ネタ話、どこで誰が聴いているか分からないしさ。まして、変に誤解されて、お父さんの耳に入ったら、僕、大変だからね…… 責任取りなさいってーーー 即、転勤だよ? それも遠くにさ、いやでしょ?」
「ええぇー それってぇー 超嫌だナ、進ちゃん、いなくなったら、あたしもう生きがいなくなっちゃうよ。進ちゃんをもてあそぶ生きがいね、でも、もっと嫌なのは進ちゃんのほうでしょ? あたしからいじめられなくなっちゃうものね 進ちゃん、もう、マゾっけ、丸出しだもんね!」
尚子はそんなことを平気で言ってくる。進一は改めて周囲を見回す。誰もいない、ことを確認すると心から安堵する。
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