窓野枠 短編傑作集 7

窓野枠

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鹿よ

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 鹿はどこにでもいるようになったもんだ。今更ながら、実感している自分がいる。昔は、有名なところで、奈良とか、京都、そんな所にいたけど、きょうび、人間だけではないのであるな。鹿も生きていくため、場所を選んではいられない。だから、でも、どうして、やっぱり、納得できない……どうして、僕の部屋なんだ。鹿も大きいから、僕にとって、僕の部屋には邪魔である。いや、そういうことではない気もするが。だって、僕の部屋は6畳のリビング、キッチン、風呂、洗面所、まあ、何処にでもある普通の狭小住宅である。一人住まいなら、結構、ゆとりかな、という程度である。でも、賃貸。財閥でも、金持ち、成金、御曹司、そんな言葉、まったく、生まれつき、縁がない僕なのに。しかし、鹿を飼っていると思われているのが更に納得いかない。「ねえ、このアパートはペット禁止ですから、早くどうにかしてくださいね。お隣も迷惑してますので」さっき、大家さんが来てながながと、いつも説教を垂れている大家さん。きょうだけは別だ。何故なら、この鹿が大家さんの尻をかんだものだから大家さんは一目散に逃げていった。ちょっと、あのやかましい大家さんも鹿にはかなわないのであるな、と思ったら可笑しかった。ギャー今、この鹿が僕のほっぺたをなめた。あごから耳に掛けて、べろりだ。押しかけ女房というのは聞いたことあるけど、押しかけペットなんて聞いたことない。ジャー今、鹿がトイレに入って水を流した。うーん、どうしたものか。明日、ペット可というアパートを探しに行こうと思っている僕である。ちょっと、幸せな気分、久しぶりかな。それと、鹿に名前を付けて上げよう。
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