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魔王城 前編

303.闇落ち

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 1人の兵士を斬った時、周りを見渡す。敵兵の姿はほとんどなく、代わりに地面には無数の兵士が倒れていた。
 流石の俺でも、この人数をまともに相手は無理があった。

「かなりの人数が俺に攻撃してきたか・・・」

 現在、最前線で戦っている俺以外はいない。
 未だに門の前の所で戦っているだろう。

「今は先へと行くしかないか」

 戻ったとしても、そこには兵士達が待ち受けている可能性が高い。なら、前へと進んだ方がまだマシだろう。
 それに結構進んでいるが、それでもまだまだ先が長い。

「今は休憩を少し取った後、城の入り口に向かうか」

 その場で警戒しながら、俺はそこにあった噴水へと腰を掛けた。
 周りは彼らが放った魔法で、燃えていた。

 ベレニアスが攻めるが、リーネには何1つ届いてない。全てを防がれては、隙を突かれ、攻撃される。
 その度にベレニアスは体力を奪われていく。

「まだ、立つって・・・どこまで体力が残ってるのかしら」
「もう私には・・・あなたに勝てる程の・・・体力は残ってないですよ・・・」

 声を出しながらも、彼女は懸命に立ち上がる。
 周りから来た兵士達も彼女の手で粛清された。今では彼女1人で戦っていた。

「ハァハァ・・・」
「そんな状態で、私に挑むなんてね」
「もう・・・奥の手です」

 その時、彼女は何かを砕いたのか、歯と歯を強く噛み締めた。その時に微かに何かを砕く音が聞こえた。
 その音を聞いてリーネは何かを察したかのように、彼女へと鋭い目で見た。

「あなた・・・まさか・・・」
「私もこれだけは頼りたくなかったですが・・・、こうでもしないとあなたには勝てない!」

 ベレニアスから黒いオーラを発生させた。彼女がある物を砕いた事により、発生したオーラだ。

・・・、自ら闇落ちするなんてね・・・」
「これが私の本気です。あなたを倒すのに闇落ちぐらいどうって事でもないです」

 ベレニアスの傷が徐々に回復していく。闇の力を得た者は自然回復は何倍にも膨れ上がる。
 だが、体への負担はその分大きい。
 彼女はそれを分かっていた為に、使用を拒んでいた。自分で自分ではない力を使う事は出来ないと・・・。
 だが、目の前に今の実力では倒せない強敵が現れていた。その為に彼女は自らも闇落ちと代償に力を得たのだ。

「これが私であり、私ではないのです!」

 一瞬でリーネの目の前まで来ていた。その事に遅れて気付いた時には剣は体へと入れられていた。
 そして、剣の斬撃なのか、勢いよく後ろへと飛ばされた。壁へと激突し、その場で倒れ込んだ。

「まだやれるはずです。私は私を捨て、あなたを超えてみせます」
「そんなので、私に勝ったつもりかしらねえ」

 体へと斬られた為か、衣服には斬れ跡が残っていた。だが、体への傷はなかった。
 剣を持ち直し、彼女は血を払うかのように一振りをした。

「面白い事してくれるなんてね。私も本気を出そうかしら」

 リーネはベレニアスの元へとゆっくりと歩いて行った。
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