勇者として召喚されたはずだけど、勇者として歓迎されませんでした

戦争 序章

161.風呂場

「で、その聖剣とやらで春八女は傷を負ったのね」
「あぁ、極限までダメージ量を抑えてもこれらしい」

　重症とも言える状態の春八女を連れて、リーネの魔法店に戻っていた。
　目の前の現象を見ながらリーネはため息を吐くしかなかった。まあ、この有様を見て誰もがそう思うよな。
　ちなみに森には大きな斬撃跡が残っている為、発見されたら大きな話題になるだろうな。

「あそこまで動かれてはこちらも対応しきれないよハハ」
「この人っていつもこうなのか？」
「えぇ・・・、慣れるまでは時間かかると思うわよ」

　でも、実力は本物だ。本来の俺だったら勝てるかどうかも怪しい。今はチートと呼んでもおかしくはない程の性能を持つ聖剣を持っている。
　ラストクロノ…、まだまだ謎が多いよなこれ。もしかしたら聖剣の力をそのまま手で使えるかもしれない。
　そんな事考えた自分はいるけど、実際にそこまでやれるかどうかも怪しい。

「ま、いい特訓にはなったんじゃないの。明後日出発みたいだから明日のうちに準備は進めておいてね」

　リーネはそう言いつつ、彼の治療へと移る。ちゃんと治癒魔法を使っての傷の手当だ。
　もう遅いし、他の人達は寝ている頃かな。俺もそろそろ寝ないと。

「先に寝るね…」
「あ、ちょっと待って」

　突如とリーネは慌てて、奥へと行った。すぐに戻って来ては手にタオルを持っていた。

「裏手に風呂場みたいなの作ってみたから入ってみるといいよ」

　いつの間に…、風呂場を作っていたって事は元から作っている最中だったのだろう。俺らが旅している間に時間かけてゆっくりと仕上げていそうだ。

「ホントか？助かるよ」

　タオルを受け取り、指定された所へと向かう。最近ろくに風呂とか入れなかった。
　体には汗で染み付いてるし、ついでに服装も変えて洗っておいた方がいいだろう。
　風呂場へと到着した時は驚いた。がちもん作ってるじゃねえか。

「どこかの銭湯かここは」

　どこかの旅館にありそうな狭い空間に作られてはいるが、見た目は露天風呂って感じのが伝わってくる。
　とりあえず、一旦体洗うか。そこも揃えているらしく、石鹸類もちゃんと鏡の前に置かれていた。

「どんだけこだわってるやら」

　体を洗い終わった後、ゆっくりと風呂に浸かる。ちょうどいい温度調整がされているみたいで気持ちがいい。
　それに当分こういう風呂には入れないだろうな。
　その場で数分間使った後、風呂場を出る。俺は服も洗ってるので予備で持って来た服に着替えた後、寝室へと向かった。