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真田和也 Ⅱ

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中2の出会いでもう1人守屋佑という男を忘れてはならない
中1の時確かに同じクラスだったけどほとんど喋った事もなかった
守屋の目的がハルなのはいきなり肩を叩かれて初めて会話した日からわかってた
ハルに彼氏ができる事なんて想像したくもない
守屋はおかしな奴だった
ここまで表情と心の中が一致する奴は珍しい
中2の2月期にはハルのおかげか精神が落ち着いて体質をだいぶんコントロールできるようになって相手の声を聞こうとすれば感情だけじゃなく声を聞けるようになっていた
その日ハルと公園で寒空の下いつものようにゲラゲラ笑ってたら視線を感じて目を凝らすと守屋がいて俺は用事思い出したとかなんとかハルを先に帰らせた
俺に見つかって守屋はバツが悪そうにしてたけど逃げはしなかった
「おいどうしたんだよ」
そう言って首に腕を回して集中する
お前が羨ましい ハルをあんなに笑顔にできるお前が羨ましい ハルの側にいるお前が羨ましい
心の声は嫉妬なのにいつも誰かから感じる悪意や嫉みは全くなくてかえって清々しくさえ思えるそんな感情
その次の日
俺に女を紹介するって言い出した
俺が邪魔なんだろうなと思って心を探ったけど俺に会いに行く口実が欲しいなんて何とも間抜けな理由だった
なんか面白くてその話に乗ったけど紹介された女はちょっとだけ勘違いしてる絶対にありえない子だった
確かにかわいいし巨乳で一般的に嫌いな男はいない だから自分が振られるなんて微塵も思っていない
そういう子は振られにいくのが正解
「おれが振られるから」と守屋に宣言
相手の心を読んで先回りすれば人は不気味さや不安になる 父親で実情済み
何回かのデートで手を握った時その子は心の中でキスしたいと叫んでた だからキスして
「キスしたかったんでしょ」って言ったら大きな目をパチクリさせて俺を見た
俺のファーストキスはこんなしょうもない感じ
でも彼女は初めてではなかったと思う
「私の事好きじゃないんだね」
「ごめん」
この会話でもう一生会う事はないなと確信した
彼女と別れたと報告したら守屋は何で?どうして?としつこく聞いて来た
「彼女から聞けばいいだろ?」
「教えてくれないんだよ あんなにお前のこと気に入ってたのに何で?」
「俺が振られたんだから理由は彼女に聞けよ」
なんで?本当に振られているんだ
振られると宣言してから付き合って本当に振られているわけがわからない
どんだけ女の子の事わかっていたらそうなるのか?付き合うより別れる方が難しいんじゃないのか?結婚より離婚の方しんどいっていうじゃないか!
守屋の心の声に俺は我慢できなくて笑った
心に小さな竜巻が出来ていて紙人形がその竜巻の中でぐるぐる回ってる
守屋がそんな想像をしている
本当におかしな奴
中3になると守屋はおとなしくなった
何かミスったかなとは思ったが思い当たる事がない
ハルを守屋にやるわけには行かないが守屋とハルを合わせたらなんか面白いことが起こるんじゃないかと思って守屋を誘ってハルの家に行った
出来心 猛烈に後悔することになるなんて思いもしなかった
守屋がハルの部屋でハルの部屋の空気を吸うのを堪能している姿を見るだけで面白くて次の瞬間守屋の発した言葉に反応できなかった
「キスさせて」
おいおい何言ってんだ?
ハルが睨んでる守屋じゃなくて俺を睨んでる
俺は慌てて守屋を連れ出して小突きまくって猛烈に腹を立てた
気落ちした守屋は自転車を押しながら俺は隣で川べりを歩く
自転車を押してやろうか?そう言って自然な感じで手に触れる
気持ちを知る為にはキスだって!友美のやつよく考えたら変態だよ
冷静に考えてちょっと顔見知りの男とキスなんかするはずがない
俺はバカだ大馬鹿だ
ハルのあの顔 俺はもうおしまいだ
きっとど変態だと言いふらされてる
明日から表を歩けない
「お前いいやつだけど変態だったんだな」
ほんの遊び 俺にとって面白い余興
その時はまだ大笑いできた
ハルがそんなに怒ると思ってなかったから
次の日
おはようと声をかけたら明らかにハルは俺を無視した
「おい」
ちょっと乱暴に腕をとったらハルは心の中で大泣きしてて俺を見るのが辛そうで心の声を聞くのをやめた
何で?泣いてるの?本当は聞きたかった
距離を縮められずに夏休みになって頼れるのはマルだけだった
「女友達の家に友達を連れて行ったら次の日から避けられた 何でかかわらない」
「そりゃお前のことに失望したんじゃないか?」
「失望?」
「がっかりしたんだよ その子はお前の事好きなのに男友達紹介したんだろ?」
「違う ハルは俺の事そんな風に思ってなかったし守屋を揶揄うつもりでハルにあわせた」
「そりゃお前もハルのこと好きで 守屋?とあわせても何もおこらないって思ってたって事だろ?」
「何もおこらない?いや何かおこったら面白いなって思って連れて行った」
「お前失礼な奴だな
この間はごめんって謝って許されなければ諦めなさい」
諦められないハルの事
好き以上の感情なんだよ 俺にとってのハルの存在がどんなに大事かマルにはわかってない
友達ならずっと側にいられると思って友達になったのにこんな事になるなら恋人になって思いっきり手を握ってハル風を心に吹かせたかった
夏休みが開けてハルを見つけておはようと声をかける
少し驚いた風だったけどおはようと返されてホッとする
「守屋のこと」
と言いかけたら女友達がハルを引っ張ってそそくさと場所移動されてごめんまで言えない
ハルの心が知りたい 手を握ればわかるのに
次の日こそその次の日こそと思っていたらハルに彼氏ができて手を握るチャンスはなくなった
もうハル風を感じることはできないのか
卒業式の日 泣きじゃくるハルを見て最後だと手を出した
元気でな
うん
握ってくれた手
吹き荒れるハルの嵐 忘れないよ 
ハルの心の中の声
俺の心の檻が全て吹き飛ばされるようにハルの風を一生分全身浴びた
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