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望月ハル

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中学生の頃男友達がいた
男女の間に友情は存在するのか?
永遠のテーマ
中学2年の時隣の席になった真田君
下の名前は和也 真田という名字から戦国武将幸村→ゆっきーと呼んでいた
好きな歌手や好きなテレビ番組色々共通点があって話が弾んで席替えがあった後でも何かと絡んで 付き合ってる?と噂もされた
お互いに意識する年頃でラブがなかったか?と言われれば嘘になるかも知れない
でも友達関係が心地よく恋人になる勇気がなかった
中学3年になっても同じクラスで友達関係はより深くなって行く
ゆっきーに彼女ができたりすぐ別れたり恋愛相談されたり片思いの相談したり付かず離れずそんな関係
ゆっきーに彼女がいない時は放課後2人で帰ったり公園で2人でアイス食べたりとにかく笑い合った
そんな2人は特別だった
彼女になりたいとは思わなかった
彼女よりも上の女友達だと思ってた
そんな毎日
学校以外であまり会う事がないのに珍しく休みの日に家にゆっきーが男友達を連れてやってきた
全く知らないわけじゃなかったけど話もした事がない同級生だった 
俺のこと知ってる?同じクラスにはなった事ないよな?守屋佑
彼が眩しいぐらいの笑顔で自己紹介する
その後の言葉に面食らう
「キスさせて」
そう言って両手を伸ばして肩を掴んだ
は?なんて事言うんだろ?思わず笑ったが
「無理です」
近づいてくる守屋の腕を振り解き抵抗する
ゆっきーもどう反応していいのかわからない様子で私と守屋の顔を交互に見た
どういうつもり?
守屋ではなくゆっきーに憎憎しい視線をむけてなお一層近づいてこようとする守屋のおでこを押し戻す
キスなんてさせるわけないでしょ
何考えてんの?
守屋の行動ではなく守屋を連れてきたゆっきーに腹を立てている
「もう帰って」
当分顔を見たくない
ゆっきーが申し訳なさそうに守屋の体を押し込めて開け放ったドアから出ていく
どういうつもりで守屋を連れて来たのか?
私と守屋をくっつけようとしたの?
はっきりと友達だって線引きしたかったの?
そんなモヤモヤな気持ちのまま月曜日ゆっきーと顔を合わせる
いつものようなおはようもない
「あれ?喧嘩?」
友達が揶揄うように笑ったけど2人は笑わない
夏休み前のことだった
2月期になってそんなに好きでもない男の子と付き合ったり別れたり男女グループでカラオケ行こうなんて大声で話したり見せつけるような態度をゆっきーにしてた
それぞれが高校受験に向けて離れていく
無視するのも変だからおはようぐらいの会話はあったけど歩みよれない程にシコリが残ってた
たまに2人で行ってた公園でゆっきーを待ってみたりまた隣の席になれないかなって願掛けしたり 本当はゆっきーと話したかった
ゆっきーともう笑い合えない事が悲しくて卒業式では涙が止まらなかった
別高校になってそれなりに楽しくてゆっきーの存在を忘れかけてた高1の冬
バイト先に新人が入ってくる
背が高くちょっとツンとした感じの苦手なタイプ 初美
バイト仲間ははっちゃんと呼んでいたけど私は名前を呼ばずにいた
なるべく同じシフトに入らないように同じになっても彼女がホールなら私は洗い場で顔を合わせずにすむようにしていた
何故?と言われてたらわからない
今ならわかる 自分とは違う
ゆっきーが好きなタイプだって自然と思っていたからだ
雪がちらつく寒い日にバイト終わりに外に出ると鼻を真っ赤にしたゆっきーがいた
「ゆっきー?」
ガードレールにもたれかかり携帯から視線を私に移す
背がのびたかな?男の子が男の人に変わっていく途中 そんな感じ
「なんで?」
「久しぶり」
短い会話に懐かしさが込み上げて本当ならハグでもしたい気がした
「お待たせ」
後から出てきた初美がゆっきーの腕を取る
「彼女?」
「うん」
微妙な間と冷たい空気
「カズと同中だってわかってカズに話したらなんか仲良かったって聞いてちょっと警戒しちゃった」
一瞬カズって誰?って思ったけどきっとゆっきーの名前なんだ
「全く気にする事なんかないよ うちらほんとにただの友達だから」
「ほら 言ったっしょ 俺らそういう感じじゃないんだって」
「男女の関係に友情なんて信じられないんだよね」
甘えるようにゆっきーに絡みにつく初美を見てただでさえ寒いのに背筋が凍る
「それに俺の方が惚れてるんだから」
「おいおい惚気やめろよ」
中学のノリでいつもの調子でゆっきーに突っ込み 懐かしいこの感じ
ゆっきーも同じように感じてくれてたら嬉しい
「やめてよね2人でアイコンタクトするの」
「先行くわ」
何故か胸の奥がジンジンして振り返りも出来ずに自転車を漕いだ
その日からたまにゆっきーから連絡が来た
全般初美のこと
初美をどれだけ好きか 
初美がどれだけ可愛いか
どうでもいいよそんな事
やっぱり女友達っていいよな
最後は必ずそんなふうに締めくくられて私の気持ちは無視された
この気持ちは愛の嫉妬なのか?
私ほんとはゆっきーのこと好きだったの?
わからない
彼氏がいた事ももちろんある
その子のこと好きで付き合ってた
でもゆっきーに対する好きの気持ちとは違う
結局彼氏と男友達は同じのようで全く違う
今でも思い出す
男女の友情は成り立つのか?
私にとっては永遠のテーマ

「おはよう」
目が覚めて隣にいる男
ぼんやりとだけどこのまま結婚するんだろうなと思う
付き合ってそろそろ1年半 出会って2年
28歳同士
年齢的に結婚を前提の付き合いのはずだ
はっきり言って熱烈に好きという気持ちはない 
ただいつも隣にいて欲しい人ではある
お互いの両親にも紹介済み
プロポーズはされてないけど彼にもそろそろという認識はあるはず
自分から言ってもいい
でも焦っているとは思われたくない
こんな時男友達がいたらと思う
決して付き合わない好きにならない男友達

「今日夜空いてる?」
「うん大丈夫だけど?」
「実は紹介したい人がいるんだ」
「誰?」
「サプライズで」
「わかった」
彼の友達に会うのは好きじゃない
ちょっとウンザリ

絶対彼の好みの店じゃない
店内が煌びやかでしっとりした大人の店
いつもは庶民的な店しか行かないくせによっぽどの人に今から会うのか
この店に入った時から気が重い
約束の8時より少し遅れて彼がきた
意表をついて連れてきたのはバリキャリの綺麗なお姉さんだった
顔に出すなと表情を引き締めたけどきっと怖い顔してたと思う
「紹介します 小松かおり」
「初めまして」
ニコッと笑うとエクボができた 
「初めまして」
軽く頭を下げてどういう事?って視線を彼に送る
「松下リクの姉貴の友達で高校の時からの付き合いで俺にとって姉みたいな人なんだ」
松下ってあのいけすかないチャラチャラした松下?何故か私を目の敵見たいに嫌ってる松下?その姉の友達?で姉的な存在?
「良くI年半もお姉さん隠してたね
きっと私のことあれやこれやと相談したんでしょう」
「色々聞いたよ」
余裕
かきあげる髪の毛
ふわっとシャネルの香りがした
彼の初恋はきっとこの女なのかな?
彼の和らいだ顔
かおりの視線
男女の友情なんて信じられない
血のつながらない姉の存在なんて信じられない
今なら初美の気持ちがよくわかる
「とって食べたりしないから緊張しなくていいよ こうちゃんから色々聞いてるけど素直にいい人に出会えて良かったって思ってるのよ
結婚式で初めましてだとあの女誰って感じになるの嫌だったからノコノコ会いに来てごめんね」
「ちょっとかおり!まだプロポーズしてないのに!結婚とか言わないでよ!」
この感じ知ってる
「ごめんごめん でもハルちゃんも結婚考えてるよね?」
「まぁ」
「早く決めなさいよ!」
「わかってるってもう台無しだよ」
笑う彼を見ながらずっとゆっきーのこと考えてる
ゆっきーどうしてるんだろう
ゆっきー結婚したのかな
今ぽっかり開いた穴を埋めてくれるのは男友達しかいない気がする
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