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七章
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しおりを挟むエリザが差し出すティーカップを受け取り、口元に運ぼうとして、やめた。どうしてもエリザのことが悪人だとは思えないのだが、初対面の人間に警戒心を持たないということに抵抗を覚えた。もっと人を疑って生きていかなくてはならない。じゃないと、無駄に傷付いてしまう。
「毒は無いわよ。―――で、何があったの?」
向かい側でお茶をすすり、エリザは穏やかな笑顔を浮かべて尋ねた。私はどこまで離していいのかを考えながら、今までの一部始終を説明した。とある目的があって旅をしていること、今日はあの村に泊まるつもりだったこと、不審な女に襲われて逃げてきたこと……。
エリザは熱心に私の話を聞き、クロスが結界を張り終えて戻ってくる頃には大体のことを離し終えていた。
「おかえりなさい。お茶、飲む?」
「はい。砂糖いっぱい入れてください」
なんの断りもなしに私の隣の椅子に座ると、なんの遠慮もなしにそう言った。せめて砂糖は自分で入れろよ。
「坊やは魔法使いって聞いたわよ。魔力と同じくらいの体力を消費する魔法もあるらしいものね」
「えっ」エリザに言われ、素っ頓狂な声を上げたクロスは、険しい顔で私を睨みつけてきた。「この国の出身じゃないんだって。平気だった」と答えたものの、彼は半信半疑といった様子で受け取ったお茶を穴の空くほど見つめた。ティーカップの上で右手をかざして、しばらくじっとしていた。そして「毒は無いね」と、安心した様につぶやいた。
「私の名前はエリザよ。クロスくん、よろしくね」
「……っす」
先程までの(図々しさはそのままだったが)礼儀正しい口調とは大違いの、無愛想な口調だった。ここまでわかりやすいと、いっそ可愛らしい。エリザも同じ様に感じているのか、ウフフと楽しそうに彼の姿を見ていた。まるで自分の子供を見る母親のようだ。
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