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序章
序章2
しおりを挟む........はい。じゃあ話戻そうね。
今はあの、どうやら猫又ですね。子猫の猫又っぽいのが肩に乗っております。猫又というのは確か、地方によって違いはあったけど、大体12年とか13年生きた長生きの猫が妖怪になると言われていたと思うのだが。こいつはどう見ても、そんなに長生きはしてないようだ。
まぁ、それは置いておこう。
「お願い、助けて!お前の足ならボクよりいっぱい遠くに行けるでしょ!」
曰く、追われているらしい。「大きくてヤバいやつ」がこいつに目をつけて、食ってやろうと襲ってきた。
そして俺は、こいつがその妖怪から逃げ回ってる最中に、道端の側溝の蓋の隙間から中に落ちてしまい、出られなくなって「たすけてー!」と叫んでるところに居合わせた。小さな子供がふざけて中に入って、出られなくなったのかと思って蓋を外したら、こいつが現れた。
俺が「どうしたんだ」と蓋ごしに問いかけ、こいつが「落ちたの!助けて!」と返した。「よし、ちょっと待ってろ」と俺が応える。しっかりと会話をしてしまってる時点で、俺が妖怪が見える奴だとバレていた。だから全力で縋られている今日このごろ。
思いがけない出来事に動揺した俺が取った行動は、無視だ。シカトだ。しかし、シカトしたところでどうしようも無いのだ。
この猫、俺が側溝の蓋を外した瞬間に素早く飛び出してきて、俺の腕にしがみついてきた。そのまま自力で肩まで登ってきたのだ。
肩に子猫を乗せたメルヘン男子高校生の出来上がりである。しかもだ、
「ボクを無視するな!うんこするぞ、いいのか!
めちゃくちゃ水っぽくてでかいヤツ出してやるからな!」
そんな事まで言われだしたら、もうシカトも無理だ。
「やめなさい!降りてしなさい!」
「あ!お前やっぱり聞こえてんじゃん!」
ちくしょう、ついにバレた。
だがアレだ、ここまで捨て身な事を言って脅してくるというのは、本気で切羽詰まっているのだろう。やはりなんとかしてやろう。可愛いし、子猫。
そして、だ。
この子猫の言う「ヤバいやつ」は今、恐らく近くに居る。気配を感じるというか、眉間が自由の女神でも刺さってんのかってくらいに痛い。とても痛い。
こんなことは生まれて初めてだが、直感とこの痛みが俺に逃げろと叫んでいる。
肩に掛けていた通学カバンを全開にすると、俺はその中に子猫を優しく詰め込んだ。毛を挟まないようにチャックを閉める。動物にも配慮できる俺。かっこいい。
そして、なんとなく怖い気配を感じる方角とは反対方向に、早足で歩き始めた。が、すぐに身体中の毛穴という毛穴から、冷や汗がどっと吹き出してきた。これはなんというか、逃げても無駄かもしれない。既に見付かっている。
おそらく先方は途轍もない速度で、それこそ人知を遥かに上回る速度でこちらに向かっている。逃げるのは不可能だろう。頭ではよく分かってはいても、身体というものはギリギリまで足掻こうとする。本能というやつだろう。
俺の足はいつの間にか全速力で走り出しており、不自然なほど人気のない住宅街を疾走していた。自宅への道を逆走し、今より幼かった時分にはよく遊びに来ていた公園にたどり着いた。
そこにはベンチと、滑り台、コンクリートの小山に大きめのパイプが通っている遊具が設置されている。
当てもなく走って逃げても無駄だろうし、自宅まで逃げるのも気が引けた。かといってこれも無駄だとは思うのだが、俺は隠れてやり過ごせないかと考えた。
もっと他に良い解決方法があるか?........あるかもしれないな。だが今の俺はパニック状態だ。思い付かん。
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