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3章
3-3
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「えっ、泣いてるの?」
大きな双眸から、ポロポロと雫をこぼしながらも、精一杯笑って見せようとする百合に、罪悪感を覚えずにはいられなかった。ちょっとでも、人に話せたことで心が軽くなったと思ってしまった自分が恥ずかしくなった。彼女は無くほど、幽霊の話が苦手だったのだ。
「大丈夫」と、人差し指で涙を拭うと、落ち込んでしまった気持ちを振り払うように、少し勢いをつけて私の机に両手をついた。
「そんなことより、サエ! あんたツイてるよ」
「ツイてる?」
幽霊を見たという経験は貴重ではあるが、ツイてるとはとても思えないのだが。しかし百合は、涙で濡れた瞳をキラキラと輝かせ、力強い表情で笑って見せた。泣いたり笑ったり、忙しい子だ。でも、彼女はそういうところが魅力的なのだ。
「なんなの?」
「まあ、任せてよ」
彼女の答えはあまりにも要領を得ないので、釈然としない気分だった。百合はなぜか得意げな表情で、何を聞いても「任せてって」としか言わなかった。そのままチャイムが鳴り、休み時間が終了した。
「ま、とにかく放課後ちょっとついてきてほしいところがあるの」
それだけ言って、百合はそそくさと自分の席に戻って行った。
・
大きな双眸から、ポロポロと雫をこぼしながらも、精一杯笑って見せようとする百合に、罪悪感を覚えずにはいられなかった。ちょっとでも、人に話せたことで心が軽くなったと思ってしまった自分が恥ずかしくなった。彼女は無くほど、幽霊の話が苦手だったのだ。
「大丈夫」と、人差し指で涙を拭うと、落ち込んでしまった気持ちを振り払うように、少し勢いをつけて私の机に両手をついた。
「そんなことより、サエ! あんたツイてるよ」
「ツイてる?」
幽霊を見たという経験は貴重ではあるが、ツイてるとはとても思えないのだが。しかし百合は、涙で濡れた瞳をキラキラと輝かせ、力強い表情で笑って見せた。泣いたり笑ったり、忙しい子だ。でも、彼女はそういうところが魅力的なのだ。
「なんなの?」
「まあ、任せてよ」
彼女の答えはあまりにも要領を得ないので、釈然としない気分だった。百合はなぜか得意げな表情で、何を聞いても「任せてって」としか言わなかった。そのままチャイムが鳴り、休み時間が終了した。
「ま、とにかく放課後ちょっとついてきてほしいところがあるの」
それだけ言って、百合はそそくさと自分の席に戻って行った。
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