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第24章 tempestoso
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辻ちゃんは元々雅也さんの後輩の弟で、ちょっと訳ありっていうか……。
流石に雅也さんの知り合いだけあって、凄く人柄は良いっていうか、寧ろ良過ぎなくらいで、どうやら人が困ってるのを見ると、放っておけなくなるタイプらしく、自分の許容を超えて助けちゃったりするもんだから、自分で自分の首を絞めることになり……。
結果、多額の借金を抱えた挙げ句、親兄弟からも見放される直前で、雅也さんが助け舟を出した……ってことらしい。
確かに、辻ちゃんは誰にでも優しいし、俺なんかよりもうんと愛想も良いから、客商売には打って付けの人材ではあるんだけど、あんま学習能力がないっつーか、なーんか危なっかしくて、放っておけないんだよな。
ま、俺も雅也さんや潤一さんには心配かけっぱなしだから、あんま人のこと言えないんだけど。
「あ、そう言えば、店長って今日本当は休みじゃなかったんですか?」
おにぎりに巻いた海苔をパリッと響かせながら、辻ちゃんが思い出したように言う。
「ん、ああ、そうなんだけどさ、何でか分かんねぇけど断れなくってさ」
違うな、断れなかったんじゃなくて、断っちゃいけない気がしたんだ。
理由は……、分かんないんだけど……
「いいよ、また別の日に休むし」
どうせ丸っと一日休みがあったところで、特に何もすることはないし、暇な時間があれば、それだけ翔真さんのことばっか考えちゃうだろうし、だったら仕事してた方が、よっぽど気楽でいいや。
「つか、そろそろ準備始めないと、予約時間に間に合わなくなるぞ?」
俺はモコモコベンチコートをクルッと丸めると、布団替わりに並べた座布団を、座敷の片隅に重ねて積んだ。
「あ、テーブル、食い終わったらちゃんと拭いとけよ? 海苔零してっから」
「はい!」
辻ちゃんがおにぎり片手に敬礼のポーズをする。
つか、それ俺にくれるつもりだったおにぎりじゃねぇの?
しっかり食っちゃってんじゃん。
流石に雅也さんの知り合いだけあって、凄く人柄は良いっていうか、寧ろ良過ぎなくらいで、どうやら人が困ってるのを見ると、放っておけなくなるタイプらしく、自分の許容を超えて助けちゃったりするもんだから、自分で自分の首を絞めることになり……。
結果、多額の借金を抱えた挙げ句、親兄弟からも見放される直前で、雅也さんが助け舟を出した……ってことらしい。
確かに、辻ちゃんは誰にでも優しいし、俺なんかよりもうんと愛想も良いから、客商売には打って付けの人材ではあるんだけど、あんま学習能力がないっつーか、なーんか危なっかしくて、放っておけないんだよな。
ま、俺も雅也さんや潤一さんには心配かけっぱなしだから、あんま人のこと言えないんだけど。
「あ、そう言えば、店長って今日本当は休みじゃなかったんですか?」
おにぎりに巻いた海苔をパリッと響かせながら、辻ちゃんが思い出したように言う。
「ん、ああ、そうなんだけどさ、何でか分かんねぇけど断れなくってさ」
違うな、断れなかったんじゃなくて、断っちゃいけない気がしたんだ。
理由は……、分かんないんだけど……
「いいよ、また別の日に休むし」
どうせ丸っと一日休みがあったところで、特に何もすることはないし、暇な時間があれば、それだけ翔真さんのことばっか考えちゃうだろうし、だったら仕事してた方が、よっぽど気楽でいいや。
「つか、そろそろ準備始めないと、予約時間に間に合わなくなるぞ?」
俺はモコモコベンチコートをクルッと丸めると、布団替わりに並べた座布団を、座敷の片隅に重ねて積んだ。
「あ、テーブル、食い終わったらちゃんと拭いとけよ? 海苔零してっから」
「はい!」
辻ちゃんがおにぎり片手に敬礼のポーズをする。
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しっかり食っちゃってんじゃん。
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