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第14章

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 「何でそんな事が言えるんですか? あなたは知らないから……。翔真さんはいつだってあなたの名前を呼んでた。いつだって翔真さんの心の中には、大田先輩、あなたがいたんです。俺の入り込める隙間なんて、これっぽっちもなかった……」

 どんなに俺が傍にいたって、どんなに俺が強く抱きしめたって、翔真さんが求めていたのは俺じゃなかった。それがどんなに俺にとって辛いことだったか、あなたは知らないから……。だからそんなことが言えるんだ。

 「あのさ、誤解してるかもしれないけど、俺と翔真はとっくに終わってるんだよ? 翔真もそれは分かってた筈なんだ。でも、病気のせいで、そのこと自体を記憶から消してしまったんじゃないかな?」
 「そんな……。でも、潤一は翔真さんはまだあなたの事を……」
 「それはないと思うよ?」

 続く俺の言葉を遮って、大田先輩が言葉を繋いだ。

 「君がどこまで聞いてるかは知らないけど、翔真の親父さんが絡んでたのは事実。だけど、最終的に別れを切り出したのは、俺じゃなくてアイツ……翔真の方なんだよ?」
 「どういう……こと?」

驚いて振り向いた視線の先に、大田先輩の変わらない笑顔があった。翔真さんが愛してやまなかった、大田先輩の笑顔が……

 「丁度君と暮らし始めて暫く経った頃だったかな。翔真から電話がかかって来たんだ。それも公衆電話からね。 その時に言われた。好きな奴が出来たって。それってさ、君のことなんじゃないのかな?」


 嘘だ。翔真さんはあの時もう発症していて、電話なんて出来る状態じゃなかった。

 それなのにどうして……
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